6.プロセッサによる作業の実際

 ア)プロセッサの作業能力

 全国での調査例から1時間あたりの造材能力をとりまとめたのが図−11である。

 この図は機械の種類、オペレータの技量、現場の地形条件等も様々なものを集めたものである。変動の幅が大きく、明確な指針となるデータは得られていない。

 しかし林試の調査ではプロセッサの造材能力は条件さえ整えばほぼ一定で集材能力に比べて相当高いことが確かめられた。
 イ)標準作業功程
 これらの調査結果や、独自の調査を元に標準作業工程を考える。 材の大きさはサイクルタイムにあまり影響しないことがわかったので、プロセッサの機械的能力、オペレータの熟練度、土場などの作業条件を総合して表−5のように大まかに「良好」、「普通」、「不良」の3段階に区分しそれぞれの場合の平均的なサイクルタイムは表−6のようになる。
表−5 作業条件
作業条件 良好 普通 不良
ベースマシン 0.45m 0.45m 0.25m
作業土場 確保されている 狭いか林道上 材のとり回しに支障有り
材の移動 旋回移動程度 数mの移動 数m以上の移動
          
 
 
 表-6 作業条件別の標準サイクルタイム
 
作業条件   標準サイクルタイム  範囲
  良好        90秒       60〜120秒
  普通       150秒      120〜180秒
  不良       210秒      180〜240秒
 
 これを元に、作業対象の平均単木材積と能率の関係を示すと図−12のとおりである。
 ここに示した標準功程は能率に及ぼす様々な因子を十分考慮しておらず、現場での実用的な使用に耐えうるものではないので、あくまでも一つの目安と考えていただきたい。また、プロセッサの性能やオペレータの技術も年々向上しておりその実態に応じた調査研究を行い実用的な標準功程を作る必要がある。


ちょっと一言
「標準功程」・・・聞き慣れない言葉です。
 これは、ある作業における標準的な作業能率を表した言葉です。林業機械の分野では「功程」という用語をしばしば用いますが、これは「工程」ではなく「生産性」あるいは「能率」を表す林業機械関係の専門用語です。 広辞苑」を調べてみたのですが載っていませんでした。この手引きではどうしても必要な場合以外は「能率」あるいは「生産性」と表しました。

・材積による能率評価の問題点
 現場での観察では,「プロセッサの作業は材長が同じであれば少々太さが変わっても材の移動から送材(枝払い),鋸断にかかる作業時間は余り変わらないのではないか」と感じていました。
そこで実際に現地での測定を行ったところこの傾向が確かめられました。特に,送材力が大きく枝払い能力の高い大型の機種では,材の太さによる影響は小さくなると考えられます。このため、今後はプロセッサの能率を材積のみでなく、造材したのべの長さ「総造材長」を用いて評価する必要があります。
 このような機械の特性があるにも関わらず材積のみで能率を考えると,機械の性能がフルに発揮されても小径木の現場では本来の能力が発揮されていないように評価され、大径木の現場では本来の能力以上に評価されてしまう不都合が生じます。
 具体的な調査例では、枝葉の処理やはい積みなどの副作業を含めると1時間あたり500m程度でした。