3.岡山県の機械化の主役 小型タワーヤーダとプロセッサ

 「タワーヤーダ活用の手引き」では、岡山県に適した高性能林業機械として小型タワーヤーダを取り上げ作業能力、経済性、安全について紹介した。これを公表した時点では岡山県では本格的なプロセッサの導入例がなかったが、その後導入が進み調査事例を得ることが出来た。
 ア)小型タワーヤーダだけでは片手落ち
 素材生産の作業は大きく分けると、伐倒、集材、造材、運材となる。現状では伐倒作業は機械化が困難であるが、その他の作業はすべて機械化が可能である。このうち集材は従来の架線あるいはタワーヤーダ等によって機械化可能であり、特に小型タワーヤーダの利用が有効なことは「タワーヤーダ活用の手引き」で述べたとおりである。
 しかし、小型タワーヤーダの導入だけでは素材生産の作業のうち、最も労働力を多く必要とし、危険で重労働の造材作業は人力作業のままで、片手落ちといえる。
 イ)プロセッサの導入利用はなぜ遅れたか?
 タワーヤーダは従来からの多くのノウハウの蓄積を持つ架線集材の延長上にあり、性能の評価などもしやすい。これに比べて、全く新しい機械といえるプロセッサは、その機構の複雑さや扱う材の品質(造材精度や傷)の問題を解決しなければないことなどから開発そのものもタワーヤーダより遅れることとなった。
 また、高能率ではあるが大型で高価な機械であるので、タワーヤーダに比べて大量の材を扱わないと採算がとれないという特性があり、これらのことから初期の導入が遅れたと考えられる。
 ウ)なぜ最近導入台数が急激にのびたか?
 実際の導入利用が始まると、その能力の高さが認められるとともに大幅な労働強度の軽減や安全性が明らかになり、急速に導入利用が進んだ。また、女性オペレータの活躍が紹介されるなど、若い労働力の確保にもメリットがあることが認識された。「もはやプロセッサ無しでは仕事は出来ない」という事業体もあるほど高い評価を受けている。
 エ)なぜ森林組合にはプロセッサが導入されにくいのか?
 森林組合では営業的には採算性を重視したくても組合員の作業を請け負うことが多いため作業のえり好みができないし、管外へ積極的に進出することもできないという組合ゆえの問題がある。そして、小規模な素材生産業者と違い、利益を積極的に機械化のみに投資したり、将来を見通して先行投資したりすることが簡単にできない組織的制約がある。
 このことは岡山県の森林組合だけの問題ではなく、全国的にもこのような傾向があるという。これが高能率でも初期投資が大きく相当の事業量を安定的に確保しないと採算がとれないプロセッサの導入が森林組合で進まない要因の一つともいわれている。