7. 資料
1.間伐作業における小型タワーヤーダ利用実証試験
(1)方法
実施日 1995年8月9〜11日
事業地 加茂町宇野地内
間伐対象林 ヒノキ31年生
面積 0.16ha
平均傾斜 19度
林床は支障物なしで比較的良好
立木本数 218本 1363本/ha
立木材積 44.0m3 275.3m3/ha
平均直径 18.9cm
平均樹高 15.6m
間伐内容 間伐本数 65本
本数間伐率 30%
材積間伐率 29%
間伐木平均直径 18.6cm
間伐木平均樹高 15.4m
伐木造材方法
2名1組でチルホール、ロープ等を利用し伐倒方向を規制するとともにかかり木を防ぐようにし、チェンソーで伐倒。枝払いはチェンソーでおこない、約半分は全幹、残りは3mに造材して集材した。この作業は、一般的な技能を持つ作業班6名が行った。
集材作業
使用した機械はリョウシンタワーヤーダRME−200T、リョウシンフォワーダRM8WD−6HG(グラップルクレーン付き)。荷掛け、荷降ろし及び一部造材作業、タワーヤーダ運転の3名作業。この作業は、ほとんど未経験の林業試験場の職員がおこなった。集材スパンは56m、60mの2線であった。
(2)結果
1)伐木造材作業功程
作業時間
伐木作業 35.5本/人・日
休憩、トラブル等を含まない実作業の能率は5分15秒/本、このうちチェーンソーによる作業は平均44.3秒であった。
枝払い、玉切り 27.3本/人・日
間伐木54本のうち26本は集材後土場で玉切り。
総能率 15.4本/人・日(3.31m3/人・日)
2)集材功程
架設等の副作業時間
|
架設 移設 撤去 合計 41分 25分 12分 78分 |
3名のチーム作業で各1回実施
集材時間および能率
区分 |
総本数 |
回数 |
材積 m3 |
作業時間 分 |
能率 m3/人・日 |
全幹 |
24 |
19 |
5.04 |
93 |
6.50 |
短幹 |
85 |
19 |
5.19 |
87 |
7.16 |
全幹集材と短幹集材で能率に差がでるのではないかと考え区分して調査を行ったが、このようにほぼ同じ結果となった。間伐の場合、残存木へ傷を付けない作業ということを考えると、林内で玉切りをした短幹材の方が集材時の立木への損傷が少ないが、作業の安全性を考えると全幹材の方がメリットがある。これらは、現場の状況に応じて判断する必要があるが、このような現場では能率的には差がないと考えてよいであろう。また今回は、土場整理等に小型フォワーダ(グラップルローダ付き)を使用したがこの作業時間は2時間程度であった
3)経費の試算
以上の結果をもとに、この間伐作業にかかった経費を試算した。
項目 |
数量 |
単価(円) |
金額(円) |
労務費 |
|||
選木および作業準備 |
0.5人 |
12,000 |
6,000 |
伐木造材 |
4.7人 |
12,000 |
56,400 |
集材、土場整理 |
1.8 人 |
12,000 |
21,600 |
架設撤去 |
0.7人 |
12,000 |
8,400 |
小計 |
7.4人 |
92,400 | |
機械損料 |
|||
タワーヤーダ |
1日 |
12,000 |
12,000 |
フォワーダ |
1日 |
6,000 |
6,000 |
小計 |
18,000 | ||
燃料、油脂費 |
|||
軽油 |
14.4A |
70 |
1,000 |
油脂 |
1式 |
1,000 | |
小計 |
2,000 | ||
合計 |
112,400 | ||
1m3当たりの経費 |
10,557 |
試算条件
機械損料
購入価格×0.9÷(6年×150日) で算出
燃料
運転1時間当たり1.8Aで算出
タワーヤーダ 1.8A×6h=10.8A
フォワーダ 1.8A×2h= 3.6A
小機材費はタワーヤーダの償却費に含む
伐木造材賃金は機械、燃料等込み単価とし、各種保険料等は考慮しない。
1日あたりの実作業時間6時間とする
4)作業対象材積の多少あるいは機械運搬費とコストの関係
以上のように直接的な経費は10、557円/m3となった。これ以外に必要な機械の運搬費を考える必要がある
自走、10Km程度の場合(森林組合の管内を想定)片道1時間、2台合計4時間で、8、000円の賃金が必要となり、これを加算すると、11、399円/m3となる。
しかし、これが25km程度(数市町村をカバーすると想定)で業者に依頼すると2台往復で60、000円の運搬費が必要となりこれを加算すると16,422円/m3となり自走の1.44倍となってしまう。
今回の実証試験の経費の積算は時間観測の結果を利用したが、作業功程自体は連続したものではなく調査のための待ち時間や準備作業を除いて功程を再構成し、連続作業をしたと仮定したものである。そのため、同一の現場を同じような作業をした場合、作業間の連係等で待ち時間等ができる可能性があるが、それは考慮していない。
実際に間伐などの作業を実施する場合、作業功程調査の結果を用いて単純に経費を積算しても、このような小面積で材積の少ない場合には正確ではない。
つまり、伐木造材や集材などは最低でも半日単位で作業を実施しないと用具の準備や段取りが非常にやりにくく、また、作業が半日で終わるといっても作業員をすぐに他の現場へ振り向けるわけにはゆかず、無駄な作業をさせてしまうからである。このようなことから、小さい現場は無駄が多くなる。
そこでなるべく現実の経費に近い試算をするため、上記のような無駄を考慮して事業量別の経費を調査によって得られたデータをもとに次のような条件の元で試算した。
伐木造材作業と集材作業時間に半日以下の端数がでた場合は半日に切り上げ、その他も同様の考えで端数を切り上げる。
選木および準備 0.015人/m3+0.4人
伐木造材 0.46人/m3
集材、土場整理 0.16人/m3
架設撤去 0.50人/m3
移設 10m3当たり1回、0.25人
機械償却費 20m3につき1日とする
タワーヤーダ 12,000円/日
フォワーダ 6、000円/日
燃料、油脂 200円/m3
機械運搬費 2台、自走8,000円、運搬業者60,000円
この結果を図−13に示す。
これによると、5m3から20〜30m3までの範囲では単価の変動が大きく、材積に比例しないことがある。これはある現場が2日で終了することができず少しの作業が3日目にくい込んでしまい経費が余分にかかったような例に対応している。
また、機械運搬費の占める割合もこのあたりでは大きく、運送業者に依頼したのではとても採算が合わないといえる。ところがそれ以上の事業量になるとスケールメリットがあきらかに現れ、単価はほぼ一定となる。しかしこのような作業仕組みではこの例が示すように事業量をいくら増やしてもこれ以上の大幅な能率のアップは望めない。
これを改善するには、全木集材したものをプロセッサで処理する方法がもっとも適しているではないかと考えられる。これについては、調査データを蓄積して検討を加えたい。
また、この試算は実際の経費のみであり会社や森林組合などの事業体が実施する場合の管理的な経費を計上していないが、通常小規模な事業ではこれが20〜30%必要と考えるが手元に根拠となる資料がないので試算できなかった。
5)残存木への影響
残存木の損傷(伐区内の全立木本数218本)
損傷のため伐採の必要のあるもの 2本
損傷のため商品価値の低下したもの 3本
損傷はあるが材質には影響がないもの 1本
不慣れな作業者が行った作業としては予想以上に良好な結果であった。また、全幹と短幹でも特に差がなかった。
一般の集材作業では、損傷を防ぐために当て木を取り付ける作業を行うことが多いが、間伐の場合は立木をそのまま当て木として使用し最後に伐採する方法も採られている。これは、現地の状況と材価などを勘案してもっとも低コストな方法を採る必要がある。しかし、通常の間伐の場合は当て木の必要な本数も多く、また材価が安いことを考えるとなるべく手間のかかる当て木作業をしないほうが有利であろう。その場合、間伐木の選木、伐採に当たって集材線を予想し残す木を想定して作業をする必要がある。
2.集材功程調査例
場 所 |
伐採種別 |
時間当たりの集材量 m3 |
資 料 名 |
岡山県西粟倉村 |
皆伐 |
3.0 |
岡山県林試調査 |
岡山県加茂町 |
間伐 |
3.3(短幹)、3.1(全幹) |
岡山県林試調査 |
岡山県勝山町 |
間伐 |
4.0(全木) |
岡山県林試調査 |
岡山県加茂町 |
列状間伐 |
2.8(全木) |
岡山県林試調査 |
宮城県登米町 |
皆伐、 |
6.6 |
宮城県林試業務報告24号 |
宮城県登米町 |
皆伐 |
5.8、9.5、6.3、4.4 |
宮城県林試業務報告25号 |
宮城県登米町 |
間伐 |
4.1、7.2、4.2 |
宮城県林試業務報告26号 |
宮城県登米町ほか |
間伐 |
10.4(列状)、5.3、6.8(列状) |
宮城県林試大プロ資料 |
岩手県岩泉町 |
間伐 |
3.5 |
岩手県林試大プロ資料 |
*詳しい内容は各資料を参照のこと
3.参考文献
(1)阿部鴻文ほか(1993)モービルタワーヤーダの稼働時間について、日林東北支誌45:187〜188
(2)阿部鴻文ほか(1992)タワーヤーダ集材作業の功程と効率的な作業の検討、日林東北支誌44:99〜100
(3)阿部鴻文ほか(1991)木材搬出のコストダウンに関する研究、宮城県林試業務報告第24号:79〜82
(4)阿部鴻文ほか(1992)林内路網の配置と機械化による低コスト木材生産技術の確立、宮城県林試業務報告第25号:48〜49
(5)阿部鴻文ほか(1993)地域に適合した林業機械作業システム研究、宮城県林試業務報告第26号:36〜37
(6)福間優二ほか(1994)地域に適合した林業機械システム作業研究.タワーヤーダとグラップルソーの組み合わせによる集材作業、島根県林業技術センター研究報告第45号:1〜8
(7)後藤純一ほか(1991)モービルヤーダによる軽架線集材の自動化に関する研究、平成2年度科学研究費補助金研究成果報告書
(8)中島嘉彦(1995)小型タワーヤーダの先柱としての立木の特性、日本林学会関西支部論文集第4号
(9)中山学(1994)地域に適合した林業機械システム作業研究.愛知県における林業機械作業システム研究、機械化林業488:13〜19
(10)林業機械化協会(1992)平成3年度新作業システム導入マニュアル
(11)林業機械化協会(1993)平成4年度新作業システム導入マニュアル、タワーヤーダとプロセッサを組み合わせた作業マニュアル
(12)林業機械化協会(1994)平成5年度新作業システム導入マニュアル
(13)林業機械化協会(1995)平成6年度新作業システム導入マニュアル、タワーヤーダのガイラインの張り方についての基本的考察
(14)林業機械化協会(1994)作業現地で考案したタワーヤーダ用キャレッジ機械化林業487:64〜69
(15)林業機械化協会編(1993)林業機械シリーズNo.83.伐出作業を革新するプロセッサ
(16)林業機械化協会編(1993)林業機械シリーズNo.85.林業機械に使われるメカトロニクス
(17)林業機械化推進研究会編(1993)機械化のデザイン、全国林業改良普及協会
(18)林業機械化推進研究会編(1992)機械化のビジョン、全国林業改良普及協会
(19)林業教育研究会編(1976)実践林業大学]XV、伐出作業、農林出版
(20)林野庁(1992)新規普及機械に関する災害予防のための調査報告書
(21)林材業労災防止協会編(1992)平成4年度版林業架線主任者教本、p140〜143:林材業労災防止協会
(22)上田実ほか(1983)わかりやすい林業研究解説シリーズ、簡易架線の設計計算と安全管理、林業科学技術振興所
(23)上田実ほか(1973)わかりやすい林業研究解説シリーズ、集材機主索の設計数値表、林業科学技術振興所
(24)梅田、辻、井上編著(1982)標準工程表と立木評価、日本林業調査会