北大西洋航路客船 ブリタニア |
大西洋航路に就航した外輪船,なかでもイギリスの主要船に注目すると,そのすべてに共通する一つの特徴があった。それは,サイド・レバー機関を搭載していたことである。サイド・レバー機関の構造に特別なところがあったわけではない。外輪を駆動するにあたって,その要求に合致していただけのことである。他の機関形態も提案され,外洋船の外輪を回すべく実際に取り付けられもしたが,有効性あるいは単純さの点でサイド・レバー型に匹敵するものは無かった。1838年のグレート・ウェスタン号から1862年のスコウシア号まで,ほとんど変更点がないままサイド・レバー機関が使われ続けたのである。
この絵は当時の月刊誌に掲載された機関室のイラストであるが,機関士と火夫がこびとのように描かれていることや,検査用の足場が描かれていないなど幾分放埓に描かれてはいるものの,サイド・レバー機関の当時の印象をまずまずよく伝えている。 ( サイド・レバー機関はワットのビーム機関を基礎にして,全体の高さを低く抑えるためにシリンダーの上方のビームの代わりに,横両側にサイド・レバーを配したものである。そしてこのサイド・レバーが連接棒を介して外輪軸のクランクを回すのであった。) 英国海軍本部がついにその頑固な,郵便船は「外輪船に限定する」という方針を捨て,郵便契約を広く競争に開放することにしたとき,キュナード社にはもっと経済性のよい推進形態を追求するしか選択の余地は無かった。そして外輪とサイド・レバー機関は,その最盛期が過去のものとなり,スクリュー推進の時代が開花することになる。 グレート・ウェスタン号の成功は,大西洋航路にさらに次々と蒸気船を生み出した。しかしウェスタン号で採用された外輪推進方式自体は,袋小路のものだった。そしてスクリュー推進こそが,将来の発展へつながる本当の道を提示することができたのである。 |
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