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【蒸気タービンの原理と構造】 蒸気タービンは左の図のように,回転軸(タービン軸)の周囲に,連なって取り付けられている羽根に,蒸気を作用させて回転させる装置です。 |
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左の図では簡略化して,蒸気を吹き出すノズルが 4つだけ描いてありますが,実際にはノズルも次々と連なって取り付けられた構造をしています。 |
また羽根の列が,上の図では1段だけですが,蒸気の持つエネルギーを効率よく吸収するために,羽根の列が何段も備えられているのが一般的です。 その場合,回転羽根に作用して出てきた蒸気が,右の図のように固定羽根で方向を変えられて,また次の列の羽根に作用するようになっています。
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タービン羽根の並び |
タービンの羽根の構成 |
【直結タービンの宿命】 (タイタニックのタービンは直結タービンです)
タービンは装置としての その性質から,高速回転しているときに効率が良くなります。(普通は毎分数千回転という回転数で運転されます。)
一方,スクリューは低速回転のほうが効率が良く,毎分数十回転 〜 百数十回転で運転されます。
⇒ | つまりタービンの最適回転数とスクリューの最適回転数には,100倍近い開きがあるわけです。 |
しかし,タービンが船の動力として使われ始めた20世紀初めには,タービンの回転数を減速させる装置が無く,タービンとスクリューは直接つないで使われました。[直結タービン]
この場合,当然ながらタービンの回転数とスクリューの回転数は同じになります。
そこで両方の中間を採って,スクリューにとっては高速気味の毎分200回転あたりで運転されたのですが(タイタニックの場合は170回転),タービンにとっては低速過ぎ,一方スクリューにとっては高速過ぎて,どちらにとっても効率の良くない状態で運転されていたわけです。
【ギヤード・タービン】
そこで 1910年代に,回転数を落とすための歯車装置が開発され,これを備えたタービンをギヤード・タービンと言います。 ギヤード・タービンが実用化されて初めて,タービンもスクリューも,最適回転数で効率良く運転できるようになりました。
そうなるとタービンは,大出力が出せるというだけでなく,効率の点でもレシプロ蒸気機関より優れたエンジンとなりました。 第1次大戦後の1920年以降に新造された客船ではギヤード・タービンが主となり,この時点で直結タービンやタイタニック級のエンジン方式は,時代遅れとなりました。
(そのタービンも,最近ではさらに燃費の良いディーゼルエンジンに取って代わられつつあり,船のエンジンとしては数が減ってきています。) |
タービンはその構造から,一方向にしか回転力を生み出すことができません。 そのため船を後進させる時にスクリューを反転させるためには,別に後進用タービンを備える必要があります。 しかしこの後進用タービンは,前進中は無用に反対方向に回っていることになり,空気摩擦によるロスを生じます。 そのため,できることなら後進用タービンを備えずに済めば,それに越したことはないのです。 そのためにタイタニック号では,後進をレシプロ蒸気機関だけに任せ,タービンには後進タービンを取り付けていなかったのです。 レシプロ蒸気機関は逆回転ができますし,後進には前進と同じだけの出力は必要なかったので。