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第二次大戦後の空母と巡洋艦
・ ・ ・ 固定翼機を運用し、英国軍艦旗を掲げて任務に就いていた最後の空母はアーク・ロイヤル Ark Royal (1978年退役)であった。※その後V/STOL機(垂直/短距離離着陸機)シーハリアーの運用によって、インヴィンシブル級軽空母3隻(インヴィンシブル(1980年~2005年)、イラストリアス(1982年~2014年)、アーク・ロイヤル(1985年~2011年))で空母機能を維持してきた。そして2017年にF-35B超音速ステルスSTOVL機(短距離離陸/垂直着陸機)を運用する空母として、クイーン・エリザベス
Queen Elizabeth (基準排水量 45,000トン、満載排水量 67,700トン)が就役した。さらに2年後には、2番艦プリンス・オブ・ウェールズ Prince of Wales が就役した(※終)。
一方、フランス海軍は2隻の32,800 トン空母、クレマンソー Clemenceau とフォッシュ Foch を運用していた(※この2隻は2000年までに退役したが、2001年に満載排水量 43,000 トンの原子力空母シャルル・ド・ゴール Charles de Gaulle が就役した)。オーストラリア、アルゼンチン、ブラジル、インドの各海軍は、元英国海軍の軽空母を1隻ずつ保有して、主に対潜水艦用に使用していた。※オーストラリアはその後、2014年、2015年にヘリコプター空母兼強襲揚陸艦キャンベラ級(27,800
トン)2隻を就役させた。ブラジルは2000年にフランスから空母フォッシュを購入し、サン・パウロ São Paulo として運用していたが、2017年に退役した。後継としてイギリスのヘリコプター揚陸艦オーシャン Ocean を2018年に購入し、アトランティコ Atlântico として就役させている。インドはその後、元英国空母ハーミズ Hermes を購入して、1987年にヴィラート Viraat として就役させ、空母2隻体制とした。またそれら旧式空母の退役に備えて元ソ連のキエフ級4番艦バクー Baku を購入し、大改装を施して2014年にヴィクラマーディティヤ Vikramāditya (45,500 トン)として就役させた。さらに2021年現在、初の国産空母ヴィクラント Vikrant (41,000 トン)を建造中である。イタリアは2009年に空母カヴール Cavour (27,100 トン)を就役させ、ハリアーII STOVL機を運用しているが、F-35B の運用を予定している。
※そして日本は、ヘリコプター護衛艦いずも級(いずも、かが(各 26,000 トン))を、F-35B の運用に向けて改装中である。
※は訳者注です。
タイコンデロガ級イージス巡洋艦アンツィオ Anzio CG-68 (ニューヨーク港にて訳者撮影)。
(「世界の海軍史 近代海軍の発達と海戦」より抜粋)
この本の原書の初版が出版されたのは1983年です。しかし2002年、2004年にも別の出版社から何度も出版されており、それだけこの本の価値が認められている証だと思われます。
この翻訳書は大きく分けて4つの部分から構成されています。第1部の導入部と第1部の海戦・指揮官、第2部の導入部と第2部の海戦・指揮官の4つです。このうち、原書の年月が問題となるのは、第2部の導入部です。
第2部導入部における、ここ40年近くの進歩の記述がないことは、大きなハンディだと思います。それでも全く不十分ながら、上記のように訳者注の形で出来る限りのフォローをしています。(海戦については、訳者あとがきにも述べているように、フォークランド紛争以後大きな海戦は起こっておらず、湾岸戦争、イラク戦争他で海軍が果たした役割は主に地上を攻撃するミサイルの発射台としての役割と認識しています。大きな海戦は第二次大戦でほぼ終わっており、40年前にはその検証はほぼ完成していたはずです。)
それよりもこの本の原書の本当の価値は、随所に織り込まれた的確な歴史観の記述と、世界全体を扱った広範さにあると思われます。それによって近代海軍の全体像を掴んでいただければ幸いです。世界の海軍の全体像を知らなければ、日本の海軍が世界の中でどういう意味を持つのかわからないと思うのです。この原書ほど近代海軍を包括的に充実して扱った本に出会えていません。この本の、その広範な内容と歴史観を、読者の皆様が内容を観て、是非確かめていただきたいと思うところです。
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