レシプロ蒸気機関の構造・原理
シティ・オブ・ニューヨーク号のレシプロ蒸気機関
この写真のレシプロ蒸気機関は,詳しく言うと3クランク3段膨張機関という形式です。 (タイタニックのレシプロ蒸気機関は4クランク3段膨張機関です。) ボイラーから送られてきた蒸気はまず高圧シリンダーに入り,蒸気の圧力でシリンダー内のピストンを上下に動かします。この上下の動きは連接棒とクランクによって,クランク軸の回転運動に変えられます。このクランク軸がスクリューにつながっていて,スクリューを回転させます。 一方,高圧シリンダーで仕事をして出てきた蒸気は,いくらか圧力は低くなっていますが,まだ仕事をする力をもっています。そこで順に中圧シリンダー,低圧シリンダーへと送られて,同様の働きをします。
蒸気は圧力が低くなるにつれて体積が大きくなります。そのため,シリンダーの直径は次第に大きくなっています。
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各シリンダーの横にくっついている装置は,シリンダーへの蒸気の供給・排出を制御する弁装置で,ピストンの上側と下側へ交互に蒸気を送り込みます。 |
タイタニックのエンジンの場合
タイタニックのレシプロ蒸気機関もほぼ同じですが,ただ低圧シリンダーが2つに分けられています。 高圧シリンダー (1筒) 直径 137cm 行程 191cm
中圧シリンダー (1筒) 直径 213cm 行程 191cm
低圧シリンダー (2筒) 直径 246cm 行程 191cm
ボイラー蒸気圧 1480 kPa (15.1 kg/cm2)
(行程は,ピストンが上下に動く距離です。)
つまり,タイタニックのレシプロ蒸気機関は4つのシリンダーで構成されていて,4クランク3段膨張機関という形式です。このエンジンが右舷スクリュー用と左舷スクリュー用に,2セット装備されているわけです。(出力はそれぞれ最大18,500 馬力(13,800 kW))
映画で機関室の機械が動いているシーンは,このレシプロ蒸気機関の連接棒からクランクにかけての部分を見ています。ピストンはシリンダーの中で動いているため外から見えず,連接棒とクランクの部分が,一番動きがよく見えます。