スコッチボイラー

 

 

概要


初期のスコッチボイラー
(タイタニックのボイラーより30年くらい前のものと推定されますが,
細部の改良は別として,全体の基本的構造はほぼ同じと思われます。)

 

スコッチボイラーは1870年代から1920年代にかけて,客船のボイラーの中心的存在として使われたボイラーです。

外形は円筒形をしています。これは高圧に耐えられるように,との意図からです。

この円筒の下から4分の3くらいのところまでボイラー水が入り,その中に炉筒(石炭を燃やすところ)や,伝熱管(高温の燃焼ガスから水へ熱を伝える多数の管)が設置されています。

上の図は,スコッチボイラーのうち両面形と呼ばれる形式で,タイタニックの主ボイラーはこの両面形です。円筒の左面と右面の両方に焚き口があり,この種類のボイラーの中では大容量向きです。(タイタニックの主ボイラーは直径 4.8 m,長さ 6.4 m です。)

 

この他に,片側の面だけに焚き口がある片面形もあり,タイタニックの29基のボイラーのうち一番後ろにある5基の補助ボイラーはこの片面形です。

 

 

 

【煙や水の動き】

 


スコッチボイラーの仕組み

 

 

焚き口から投げ入れられた石炭は炉筒の中で燃え,高温の燃焼ガスを作り出します。

この燃焼ガスは煙管の中を通っていく間に,周囲の温水へ熱を伝え,蒸気を発生させます。
(燃焼ガスから温水への伝熱面積が少しでも大きくなるよう,この煙管は多数取り付けられています。)

 

発生した蒸気はボイラーから出て,過熱器の中で周囲の燃焼ガスによってさらに加熱されて温度が上がり,凝縮しにくい過熱蒸気となってエンジンへ送られます。

一方,炉筒の中で石炭を燃やすためには空気を送り続けなければなりませんが,この空気は燃焼ガスと熱交換されて,予め温度を高くして炉筒へ送り込まれます。

 

 

 

【ボイラーの略史】

  1.初期のボイラー

1838年に,蒸気船が初めて北大西洋航路に登場した頃は,四角ばったボイラーが一般的でした。しかしそれでは,高圧に持ちこたえることができません。(初めのうちは蒸気の圧力も低かったので,それでも使えたのですが。)


  
2.スコッチボイラー

そのため次第に円筒形のボイラーへと進化して,スコッチボイラーと呼ばれるようになりました。
   (この形態のボイラーを最初に作り始めたのが,スコットランドの造船所だったのでこの名称がつきました。)

しかしこのスコッチボイラーは直径が5メートルほどもあり,その全体に蒸気の圧力が掛かるために強度の点からやはり圧力の制限を大きく受け,蒸気圧は15 kg/cm2 (約15気圧;1470 kPa) を少し越えたあたりで頭打ちとなりました。

またボイラー水の流動が比較的緩慢なために伝熱の流束(工学用語ですみません)が小さいうえ,伝熱管(煙管)を余り多く設置できない構造のため,ボイラーの能力が小さいという弱点がありました。
[ そのためタイタニックには29基ものボイラーが装備され,ボイラー室が広く必要でしたが,1969年のクイーン・エリザベス2では,わずか3基のボイラーでタイタニックより大きなボイラー能力を持っていました。]


  3.水管ボイラー

こうした欠点を克服するものとして,1920年代末以降の客船では,水管ボイラーという種類のボイラーが登場してきます。

 


水管ボイラーの一例 (ブレーメン号(1929年)のボイラー)
青い部分(3つのドラムとそれらを結ぶ水管群)だけが高圧と
なります。

 

これは
1) 圧力の掛かる部分,つまりボイラー水や蒸気の入っている部分をできるだけ小さくして高圧に耐えられるようにし,
2) 伝熱管をその外側に配置して,外側から加熱する
    ようにしたものです。

こうすることで
1) 蒸気圧を高く出来るとともに,
2) ボイラー水の流動が激しくなって,燃焼ガスからボイラー水への熱の伝わりが良くなり,
3) 伝熱管(水管)の数も多くできる
    ので,
ボイラーの蒸気発生能力を大きくできました。

 

 


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