北大西洋航路客船 クイーン・メリー | キュナード・ホワイト・スター |
・ライン (英国) |
就航 1936年 80,774 総トン 全長 310.3 m 全幅 36.1 m エンジン ギヤード・タービン 4セット 158,000 馬力 推進器 スクリュー4軸 速力 29 ノット 乗客定員 2139人 1等 776 ツーリスト 784 3等 579 |
キュナード社は大西洋航路の急行船を,モーレタニア号以来建造していなかった。そのモーレタニア号は1920年代の終わり頃には,新たな競争の中で寄る年波を見せ始めていた。会社では,手持ちの3隻の高速船モーレタニア号,アキタニア号,べレンガリア号のうちの1隻を新しい船に取り替えるという案を検討した。しかし意向はすぐに,2隻の船だけで2週間周期の運航を行なう計画へと転向した。その運航のためには,5日で横断できることが必要であった。機関は平均速力28.5ノットを,信頼性をもって確保できなければならなかったし,1シーズン11ヵ月間を大きな修理なく運転できる性能を必要とした。商業面の考慮から,およそ80,000総トンの大型船に決定され,キュナード社では1929年に第一人者のエンジニアを数多く招いて,最適な推進機関形式を推薦してもらうための委員会を作った。
検討されたのは,1段減速ギヤード・タービン,タービン電気,それにディーゼル電気の各推進方式である。ギヤード・タービンとタービン電気については,それぞれスコッチ・ボイラーと水管ボイラーの両方で検討された。委員会は,信頼性・運転の容易さ・重量・初期投資コスト・運転コスト・効率,さらには騒音と振動の少なさから,全員一致で水管ボイラーを備えた1段減速ギヤード・タービンに決定を下した。 建造途上で工事が中断され,そのあとキュナード社がホワイト・スター社と合併するという条件で政府が援助することになった,クイーン・メリー号建造時の話はよく知られていることなので,ここで繰り返す必要はないであろう。しかし工事が遅れたことにより,この船のほうがノルマンディー号より後から登場することになった。本来ならフランスの巨船ノルマンディーより先に運航を開始していたはずなのである。 クイーン・メリー号が大西洋の新記録を樹立した時の働きぶりについては,よく知られているところである。1938年8月には,西航 30.99ノットと東航 31.69ノットの平均速力が達成された。
(「豪華客船スピード競争の物語」 クイーン・メリー号の部分より抜粋)
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