大阪の重症被害者女性、森永乳業を提訴。

ブログ「市民」にも掲載中。ここにストックしていきます。
2022年07月13日
被害者が森永乳業を提訴 [2022.5.25]
http://morinaga-hiso.blog.jp/archives/1080135191.html

2024年03月26日【再掲】
大阪の重症被害者女性が森永乳業を提訴 [森永ヒ素ミルク中毒事件]

 2022年5月25日、大阪在住の森永ヒ素ミルク中毒事件の重症被害者Aさんが、加害企業である森永乳業株式会社を相手取って、5500万円の損害賠償請求訴訟を大阪地裁へ提起した。(写真は原告)
 この件に関して、森永乳業は「コメントは差し控える」としている。
 はや2年が経過しようとしているが、この間、原告と、被告・森永乳業の間で激しい闘いが繰り広げられている。今後、明らかにするが、最も特徴的なことは被害者の基本的人権をないがしろにする被告・森永の本音と体質が、露骨に出てきているということである。

 Aさんは、森永ヒ素ミルク中毒事件で背負った脳性まひなどの症状が進行し、それが悪化し続けているにも関わらず、「ひかり協会」からの救済策も不十分であり、慰謝料もなく、森永乳業には謝罪・反省の意思さえ見られないと、憤りを隠さない。その上で、被害者は単独での請求権を失っておらず、被害者が「ひかり協会」に束縛されるものでもない、としている。もっとも、これは当ブログの読者諸氏にはすでに自明のことだ。
 従来、森永乳業は、「ひかり協会」や現・被害者団体「森永ひ素ミルク中毒の被害者を守る会」(以下、「ひ素会」と略)(※1)を防波堤にして、それを通じた世論操作を行い、長年にわたって被害者の実情を社会から覆い隠してきた。
 「防波堤」役たちは、「森永におだてられて」(森永乳業内部告発者による)、長年にわたり被害者への人権侵害や言論弾圧(既報)を行いつつ、被害者家族の異論・意見を封じ込め、救済水準の抑制と、被害者の尊厳を棄損してきた。それは既に社会的に許されないレベルに達している。これまで真相がほとんど報道されず、国民の知る機会が奪われてきただけである。

  森永ヒ素ミルク中毒事件とは
   http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/morinaga-hiso-poster-00.pdf
   森永ヒ素ミルク中毒事件資料館 アーカイブ
    『砒素ミルク1(上)』   『砒素ミルク1(下)』
  「ひかり協会」の救済の後退と腐敗 
   能瀬レポート
   http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/nose-report.pdf
  「ひかり協会」の人権侵害
   http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/kyoukaisyokuin-sabetubougen-03.pdf
  「ひ素会」の言論弾圧と人権侵害
   http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/jinnkennkyuusai-s01.jpg
   http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/himajinno-supaikoui-02.jpg    
   http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/yamadasi-jinkenkyusai-mousitatejiken.jpg

 提訴に先立って、Aさんの弁護団は、記者発表を実施し、共同通信が配信、全国の地方紙で広く報じられた。さらに弁護団は、25日大阪地裁で記者会見を開催し、これも全国で広く報道された。

事件を「再燃」させ「未解決」にする加害企業・森永乳業の体質
 訴訟提起の一報は全国規模で大きな反響を得ており、訴訟への支援を表明する市民がすでに登場しているという。
 森永ヒ素ミルク中毒事件は、戦後最大の食品公害事件が、未だになんら有効な解決策を実現できていないことを示した。水俣病もカネミ油症もしかりである。
 過去の事件の一時的な「和解」が宣伝される一方、それを骨抜きにしていく加害企業の力は今なお健在である。日本の人権保障のシステムは、それほど進歩しておらず、被害を受けた人々は、その都度、莫大なエネルギーを費やして闘い続けるしか道がない。だが被害者の消えぬ痛みや苦しみが報じられる機会はほとんどない。

 さらには森永ヒ素ミルク中毒事件に関しては、森永が未だに大手広告スポンサーとして跳梁している現実があり、「広告収入」にぶら下がって報道を控え、森永が企図する「森永さんあっての救済」というような、事実にも反する本末転倒のキャンペーンに手を貸してきたメディアもかなりある。
  1955年の事件発生から14年間被害が抹殺された非人道的な犯罪の背景に、日本の全てのメディアが「書かない自由」をふんだんに行使して「沈黙」した事実があることは繰り返し指摘せざるを得ない。
 被害が67年間変わらず継続し、重症化しているにも関わらず、その声を封殺する手の込んだシステムの実態が暴露されてこなかったため、被害者の訴えを、逆に「利己的なもの」だと攻撃する一部の空気も醸成されてきた。これらが全体として被害者の発言権を封じ込め、人間としての尊厳を貶めてきたのである。

 だが、実際には心ある国民が多数である。今回の提訴は、救済が長期間にわたり大幅に後退し続けてきた実態を突きつけた。同事件に精通する岡山のルポライター・能瀬英太郎氏が、2000年以降に、数々の被害者家族の訴えに直面して以来、20年の長きにわたり告発し、発表し続けてきた事実そのものでもある。
 幸い、今回の訴訟提起は、多数のメディアによって全国津々浦々で報道された。あげられた声に耳を貸し、勇気を持って連帯して取り組む人々がどの程度登場するか? 日本社会の真価が問われている。

(※1)現被害者団体は、被害者を守っているとは言えないので、故岡崎哲夫がかつて使った呼称を引き継ぎ、「ひ素会」と略称する。同会は、通常の日本語表記「ヒ素」を敢えて「ひ素」と言い換える。標記を通じて踏絵を要求するような特異な党派性を有している。

KyodoNews
ヒ素ミルク事件、森永を提訴 新たな症状、大阪の女性5千万円請求
https://www.youtube.com/watch?v=e3M8CDxa6CY

【速報】ヒ素ミルクで新たな症状 森永乳業に賠償求め提訴
https://www.youtube.com/watch?v=U2RwhaQxp-Y

47NEWS
地方紙と共同通信のよんななニュース
ヒ素ミルク事件、森永を提訴 新たな症状、大阪の女性5千万円請求
https://www.47news.jp/7829513.html

47NEWS
「あの時、ヒ素入りミルクを飲まなかったらどんな人生が...」 夢も幸せも奪われた私は、こうして67年越しの提訴に踏み切った
https://news.yahoo.co.jp/articles/5e267469f1070a1d3418b723f74a4984e8dbabc1

読売テレビニュース
67年前の森永ヒ素ミルク事件 脳性まひで歩行困難となった女性(68)が5500万円の賠償求め提訴
https://www.youtube.com/watch?v=J6LtRzSXeFE

MBS NEWS
「寝ても起きても痛い痛いの毎日…」森永ヒ素ミルク事件の被害者が森永乳業を提訴(2022年5月25日)
https://www.youtube.com/watch?v=tNndK30GHnY

テレビ大阪ニュース
【森永ヒ素ミルク事件】67年続く苦しみの損害賠償を 戦後最大の食中毒
https://youtu.be/SAFjUHlzshQ

提訴直前に、森永乳業の製品リコール発生

 なおこの訴訟発表記事の数日前に、森永乳業は、自社製品ヨーグルトの大腸菌汚染で、関東周辺での製品リコール事件を発生させている。

大腸菌が混入か…森永乳業が「トリプルヨーグルト」自主回収 
東京都や群馬県、埼玉県など1都8県の1870個
https://nordot.app/899994723309666304
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2022年07月22日
森永が国との合意を“ちゃぶ台返し”で、本性露呈 1955年に先祖返り
http://morinaga-hiso.blog.jp/archives/1080321920.html

2022年07月22日

森永が国との合意を“ちゃぶ台返し”で、本性露呈 1955年に先祖返り
被害者イジメの企業体質露わに
 さる7月19日(火曜)、大阪の被害者が森永乳業を提訴した訴訟の第一回公判が開かれた。
 そこでの被告・森永乳業の答弁について、下記のようなコメントが寄せられた。まことに明解な分析であるので、以下、掲載する。

第一回口頭弁論の報道ソースは以下の通り
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共同通信
2020年7月19日

 1955年に発生し、「戦後最大の食品中毒」とされる森永ヒ素ミルク事件で、脳性まひになった大阪市の女性(68)が森永乳業(東京)に計5500万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が19日、大阪地裁(池上尚子裁判長)であり、森永乳業側は請求棄却を求めた。

 口頭弁論で原告の女性は意見陳述。「苦しみを、死ぬまで抱え続けなければならない」と訴えた。

 森永乳業側は、事件を起こしたことに関し「謝罪の気持ちがある」とし、社会的な責任を負っていると主張。一方で女性が脳性まひになったことが、自社の粉ミルクを飲んだことに起因するかどうかについては争う構えを示した。
ヒ素ミルク訴訟、森永が争う構え 救済不十分で賠償請求(共同通信) - Yahoo!ニュース

共同記事はロイター電でも伝えられた。
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 この共同通信の配信記事で、もっとも重要な部分は、「森永乳業側は、事件を起こしたことに関し『謝罪の気持ちがある』とし、社会的な責任を負っていると主張。一方で女性が脳性まひになったことが、自社の粉ミルクを飲んだことに起因するかどうかについては争う構えを示した。」の部分。

中島貴子氏の新刊書紹介記事に寄せられた、市民(ハンドルネーム:厚顔無恥さん)からのコメントは以下の通り。的確な内容なので全文掲載する。
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1. 厚顔無恥  2022年07月21日 23:47
 報道によると、先日提訴された、森永ヒ素ミルク事件の損害賠償請求訴訟の第1回口頭弁論にて、被害者の脳性麻痺マヒの原因が粉ミルクの飲用にあるのかどうかを争うとの事である。

 これは大問題である。
 合理的に考えてみよう。

 今回提訴した被害者は、すでに飲用認定された、れっきとした被害者である。その被害者に対して、全面的に非を認め恒久救済するというのが、三者会談確認書の趣旨である。個別具体的な症状などは考慮せず、あくまで飲用認定が被害者の条件である。今回はそれを覆して非を認めず因果関係を争うとしたわけだ。これは救済事業そのものが残念ながら根本から振り出しに戻ってしまったという事である。

 飲用認定以外の個別の事情を争う事は、現在の救済事業を受けている被害者にとっても他人事ではない。いつでも救済対象から外される可能性が明言されたわけである。因果関係がないから、救済しませんという理屈が成り立つのである。

 曲がりなりにも、これまで主張していた長年の救済事業による実績なり、その実績により公益法人として認定された協会の救済事業なりという事を自ら葬り去ってしまったわけだ。裁判でこんな争点を持ち出すなんて、企業存続にとっても重大インシデントであることがわからないのだろうか。
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 その通りである。

 余談だが、「森永乳業側は、事件を起こしたことに関し“謝罪の気持ちがある”とし、社会的な責任を負っていると主張。」
 この部分に騙されてはいけない。
 実は、この程度のことは、1955年の事件発生当時から森永が口にしていたことだ。森永は、発生直後から、「反省」や「謝罪」をいけしゃあしゃあと口にしながら、被害者の親たちの闘いを激しく弾圧し、事件を20年あまりにわたり封殺したのである。 これは事件史を知るものにとっては、ごく常識的な知見である。要するに、森永は、“うちのミルクを飲んで調子が悪くなったんなら、とりあえず謝っときます。だが因果関係は絶対認めない”と言っていた。この論理が、今回復活した。

 つまり、森永は、いまだに事件への反省心がゼロであり、いま現在も被害者を、じゃま者程度にしか考えていないこと、そのために認定被害者の「後遺症」に疑問を呈して争うなどと言い、1955年当時の「後遺症否定」の論理を持ち出してきた。これを森永自身が語ってしまった。まさに森永が長年密かに抱いてきたが表向き隠してきた内心・本音である。その「パンドラの箱」を自らあけたわけだ。

支配に甘んじない被害者への加害企業からの直接的「イジメ宣言」
 更に、第一回公判での森永の態度は、見方を変えると、森永にとっての防波堤になり下がった現「ひかり協会」の支配下で我慢しない被害者に対しては、容赦のない徹底的な弾圧を加えるという森永からの「イジメ宣言」といった構図を呈している。だが、それは同時に、自らの子飼いの存在を否定する言説になってしまったことに、どうも気が付いていないようだ。いや、そんな歴史的文脈やら人道上の問題には、はなから関心がないのだろう。

 さて、他の被害者はこの状態をどう考えているのだろうか。現「森永ひ素ミルク中毒の被害者を守る会」(以下:砒素会)はかつて岡山のライター・能瀬英太郎氏の提起した裁判(砒素会の有罪判決が確定)で、「重症者に手厚くすると軽症の被害者から理解が得られない」などと裁判所への公文書に書き連ねた。果たして、こんな「軽症被害者」がどの程度存在するのだろうか。事件資料館に「展示をやめろ」とか「認定希望者に余計な知恵を与えるな」などと押しかけて恫喝する者たち以外に存在するなら、ぜひ正々堂々と名乗り出てもらいたいものだ。日本の産業公害史のなかでも、「被害者が被害者・遺族を叩く異様なケース」として歴史に刻まれていく。

森永ヒ素ミルク中毒事件は日本国民全体の歴史的テーマ
 また日本国民は森永をどう裁いていくのか、今後、それが改めて問われてくる。このような企業の放言を未だに許している現況こそ、日本社会の病理を象徴しているからだ。
 森永ヒ素ミルク中毒事件はその全史において、当事者に倍する全国の市民の支援があって、「一時的な勝利」が得られた。事件史を知悉するのは市民の側である。
 それだからかどうか、この市民と被害者を分断することに「砒素会」の幹部はやっきのようである。森永の願望・利害と完全に一致している。
 ならば国民は、歴史的事実をもって、独自かつ自由に言論を展開するだけである。戦後初の食品公害で企業と国と御用学者と沈黙するメディアの合作が生み出した悪のDNAが、現在、あらゆる場面に浸透しきっているからである。
 まずは国民の皆さんには、この事件の教訓を、吸収していただきたい。先に紹介した中島貴子氏の著作、能瀬英太郎氏の著作は秀逸である。多くの市民から、「驚きとともに、感銘を受けた」「安易なハッピーエンドの設定をせず、ファクトを最優先する筆者たちの姿勢は他のドキュメンタリーでもなかなか及ばないほどの迫力」との感想が寄せられている。
 もちろん資料館サイトにも情報は山のように公開されている。そして、国民諸氏には、「加害企業に感謝しながら幸せに暮らしている被害者」なる嘘っぱちのストーリーに誘導する「報道」記事や有名元弁護士の多数の「書籍」、事実誤認が横行するウィキペディアを含めて、大いに疑っていただきたい。人道的かつ常識的見地からみても異常が横行している。そして、「加害企業の防波堤のクビキ」を自らはねのけ、人間としての当然の思いと権利を主張した勇気あるAさんの大阪訴訟を、あらゆる手段を通じて全面的に支援していただきたい。

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新刊 森永ヒ素ミルク事件の画期的通史
新刊書『ひかりと影と 森永ヒ素ミルク中毒事件と被害者運動』 (第5回)
タグ :#森永ヒ素ミルク中毒事件#森永乳業相手に5500円の損害賠償請求訴訟#大阪#2022年#中島貴子著『科学技術のリスク評価#森永ヒ素粉乳中毒事件を中心に』#能瀬英太郎『ひかりと影と#森永ヒ素ミルク中毒事件と被害者運動』

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↓現在の問題点にまで踏み込んだ能瀬英太郎氏のレポート



↓能瀬レポート 英語版  (Nose Report)The Morinaga Milk Arsenic Poisoning Incident  50 Years On   by Eitaro NOSE



表向き「公正中立」を偽装して登場した「第三者委員会」が、被害者を無視して
勝手に作った不正な「診断基準」。その文中に使われた「原病」という表現に
ついての解説つき。↓
能瀬レポート日英対訳版 
まだ解決を見ない日本の戦後初の産業公害 
PDF:136KB 
(著作権Free: 英語教育の教材等ご自由にコピーしてお使い下さい。)

(日本における第三者委員会方式は森永事件以降、常用され、水俣病でも被害の隠蔽に活用されるようになる
という要注意なもの。)

↓救済システムでの問題発生を学術的視点からすでに予期している秀逸な論文。





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