【原子力基本法 改「正」】

 
武装としての核技術保持を、
   脱原発世論高揚のこの時期に、
       敢えて匂わす目的は何か?

 
─「3原則守れ、安全利用遵守」への誘導目的か?
       心理戦の仕掛けに注意しながら考える─



「20日に成立した原子力規制委員会設置法の付則に原子力基本法の改正が盛り込まれ「我が国の安全保障に資する」との目的が追加された。このため「原子力の平和利用の原則に反する」との懸念の声が出ている。藤村修官房長官は21日の記者会見で「平和利用の原則、非核三原則の堅持は揺るがず、軍事転用の考えは一切ない」と説明した。」
毎日新聞 2012年06月21日 

■岩波「科学」9月号ゲラ刷りが出版前に緊急公開 2012.7.30


http://www.iwanami.co.jp/kagaku/Kagaku_201209_UncorrectedProof.pdf

 従来明言を避けてきた目的を、なぜ、今この時期に、急に、そして極めて曖昧な、『議論を誘発させるような形で』表面化させてきたか?
 いろいろな捉え方があるだろうが、いま、沸騰しつつある脱原発の世論を、従来の大政翼賛旗であるところの『3原則守れ、安全利用を』という議論へ、「再収束」させ、原発推進へ軌道修正させようとする狙いがあるのではないか、と警戒する声もある。
 プルトニウム過剰生産の目的が何であるのかは、原子力問題を長年考えてきた市民には、ある種自明のことであった。それを敢えて、刺激するかのような動きは「単純な政屋」の発想とは異なる匂いを感じる。脱原発の世論を、『原発の安全利用堅持』へ分散(或いは誘導)させる狙いをもって仕掛けられてきたテーマ・罠ではないか? と指摘する向きもある。
 確かに、高度な心理戦を仕掛けられている可能性が高い。そのような警戒感をもって、この問題を考えていく必要があると思うがニッポンの言論人はどの程度のセンスをもっているだろうか?

この時期に、野党・自民党が、以下のような
挑発的な発言を「敢えてする」ところが非常に怪しい

自公案作成の中心となった塩崎恭久衆院議員は
「核の技術を持っているという安全保障上の意味はある」と指摘。
「日本を守るため、原子力の技術を安全保障からも理解しないといけない。(反対は)見たくないものを見ない人たちの議論だ」
 「原発は核兵器製造技術の基礎を支える装置だから必要なんだ」っていうある意味「正直」な、ストレート・メッセージだ。だが、塩崎氏がこれを、「国家主義的意識の高揚を通じた原発の正当化」を「素直に期待して語った」んだと、真に受ける人が、この国にどの程度いるだろうか?

------------------(報道)-----------------------
「原子力の憲法」こっそり変更

 二十日に成立した原子力規制委員会設置法の付則で、「原子力の憲法」ともいわれる原子力基本法の基本方針が変更された。基本方針の変更は三十四年ぶり。法案は衆院を通過するまで国会のホームページに掲載されておらず、国民の目に触れない形で、ほとんど議論もなく重大な変更が行われていた。 

 設置法案は、民主党と自民、公明両党の修正協議を経て今月十五日、衆院環境委員長名で提出された。

 基本法の変更は、末尾にある付則の一二条に盛り込まれた。原子力の研究や利用を「平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に」とした基本法二条に一項を追加。原子力利用の「安全確保」は「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として」行うとした。

 追加された「安全保障に資する」の部分は閣議決定された政府の法案にはなかったが、修正協議で自民党が入れるように主張。民主党が受け入れた。各党関係者によると、異論はなかったという。

 修正協議前に衆院に提出された自公案にも同様の表現があり、先月末の本会議で公明の江田康幸議員は「原子炉等規制法には、輸送時の核物質の防護に関する規定がある。核燃料の技術は軍事転用が可能で、(国際原子力機関IAEAの)保障措置(査察)に関する規定もある。これらはわが国の安全保障にかかわるものなので、究極の目的として(基本法に)明記した」と答弁。あくまでも核防護の観点から追加したと説明している。

 一方、自公案作成の中心となった塩崎恭久衆院議員は「核の技術を持っているという安全保障上の意味はある」と指摘。「日本を守るため、原子力の技術を安全保障からも理解しないといけない。(反対は)見たくないものを見ない人たちの議論だ」と話した。

 日本初のノーベル賞受賞者となった湯川秀樹らが創設した知識人の集まり「世界平和アピール七人委員会」は十九日、「実質的な軍事利用に道を開く可能性を否定できない」「国益を損ない、禍根を残す」とする緊急アピールを発表した。

◆手続きやり直しを

 原子力規制委員会設置法の付則で原子力基本法が変更されたことは、二つの点で大きな問題がある。

 一つは手続きの問題だ。平和主義や「公開・民主・自主」の三原則を定めた基本法二条は、原子力開発の指針となる重要な条項だ。もし正面から改めることになれば、二〇〇六年に教育基本法が改定された時のように、国民の間で議論が起きることは間違いない。

 ましてや福島原発事故の後である。

 ところが、設置法の付則という形で、より上位にある基本法があっさりと変更されてしまった。設置法案の概要や要綱のどこを読んでも、基本法の変更は記されていない。法案は衆院通過後の今月十八日の時点でも国会のホームページに掲載されなかった。これでは国民はチェックのしようがない。

 もう一つの問題は、「安全確保」は「安全保障に資する」ことを目的とするという文言を挿入したことだ。ここで言う「安全保障」は、定義について明確な説明がなく、核の軍事利用につながる懸念がぬぐえない。

 この日は改正宇宙航空研究開発機構法も成立した。「平和目的」に限定された条項が変更され、防衛利用への参加を可能にした。これでは、どさくさに紛れ、政府が核や宇宙の軍事利用を進めようとしていると疑念を持たれるのも当然だ。今回のような手法は公正さに欠け、許されるべきではない。政府は付則を早急に撤廃し、手続きをやり直すべきだ。(加古陽治、宮尾幹成)

<原子力基本法> 原子力の研究と開発、利用の基本方針を掲げた法律。中曽根康弘元首相らが中心となって法案を作成し、1955(昭和30)年12月、自民、社会両党の共同提案で成立した。科学者の国会といわれる日本学術会議が主張した「公開・民主・自主」の3原則が盛り込まれている。原子力船むつの放射線漏れ事故(74年)を受け、原子力安全委員会を創設した78年の改正で、基本方針に「安全の確保を旨として」の文言が追加された。



原子力基本法:目的に「安全保障」…規制法の付則で
毎日新聞 2012年06月21日 

 20日に成立した原子力規制委員会設置法の付則に原子力基本法の改正が盛り込まれ「我が国の安全保障に資する」との目的が追加された。このため「原子力の平和利用の原則に反する」との懸念の声が出ている。藤村修官房長官は21日の記者会見で「平和利用の原則、非核三原則の堅持は揺るがず、軍事転用の考えは一切ない」と説明した。

 ◇「平和利用」違反の懸念も

 基本法は2条の基本方針で、原子力研究や利用を「平和目的に限る」と明記。民主・自主・公開の原則を掲げている。規制委設置法は付則に基本法を改正する規定を置き、基本法2条に「我が国の安全保障に資することを目的として行う」と追加した。原子炉等規制法にも同様の改正が行われた。

 この表現は当初の政府案にはなかったが、自民、公明両党が4月に提出した対案で明記した。日本の高い核技術を潜在的な抑止力としてとらえ、安全保障政策のなかに位置づける考え方が背景にある。20日の参院環境委員会では、複数の委員から「日本が核武装する表明か」と疑問が出た。






『砒素ミルク』シリーズ無料公開
本シリーズは当時の隠れたベストセラー。全国に普及され、国民に事件の再認識を劇的に促し、救済運動にはじめて世の光を与え、その後の学界改革にも多大な影響を与えた歴史的名著である。
※PDFのダウンロードが出来ない場合は、右クリック→「対象をファイルに保存」でデスクトップなどに一端置いてください。
「砒素ミルク1」 谷川正彦・能瀬英太郎 共著 全251頁 森永告発刊 昭和46年(1971)6月10日発行『砒素ミルク 1 
─森永と共犯者たちによる被害者抹殺の16年─』
谷川正彦・能瀬英太郎 共著 全251頁
森永告発刊 昭和46年(1971)6月10日発行
『砒素ミルク1』 前編(1-131p) PDF6.61MB       
『砒素ミルク1』 後編(132-251p)PDF6.09MB

『森永ミルク事件史』 岡崎哲夫著『砒素ミルク2 守る会18年のたたかいの原点─被災者同盟の記録』岡崎哲夫著/谷川正彦・能瀬英太郎・森永告発刊 昭和48年(1973)8月10日発行『砒素ミルク 2
守る会18年のたたかいの原点─被災者同盟の記録』
岡崎哲夫著 /谷川正彦・能瀬英太郎・森永告発刊 昭和48年(1973)8月10日発行(右掲載写真本の復刻版)
『砒素ミルク2』前編(1-164p)PDF8.84MB
『砒素ミルク2』後編(165-241p)PDF3.95MB


『森永ミルク事件史』の原書の冒頭には、下記の付箋が貼られていた。…「本書は日本のヒューマニズムの限界を示すものである」…
本編PDF版の転載、配布等は自由です。むしろ歴史継承の視点から歓迎致します。

第2弾!
『森永砒素ミルク闘争二十年史』デジタル公開
森永砒素ミルク闘争二十年史 編集委員会編 1977.2.28発行『森永砒素ミルク闘争二十年史』
二十年史編集委員会(代表 岡崎哲夫)
能瀬英太郎編纂
昭和52年(1977)2月28日発行





序論 岡崎哲夫 PDF:926KB  
NEW 運動編 第一章 守る会・光を求めて20年 岡崎幸子 PDF:2.43MB
NEW 裁判編 第一章 刑事裁判 PDF:1.29MB

つ づ く
     




総目次ページへ戻る




トップページへ戻る