1999年9月30日午前10時35分
 東海村JCO臨界事故 -レベル4


─世間がすぐに忘れた重大核事故の記録─
   【死者2名 被曝者666名】


【一つの事故から徹底的に教訓を学び継承し続けないと大事故は避けられない】

■JCO臨界事故総合評価会議報告書   2002年9月発行
http://cnic.jp/jco/jcac/reports/2002/pdf.html
同事故の深刻な教訓を詳細に解明。同時に、原子力安全委員会とそれが組織した「事故調査委員会」の実態を指摘している。

問題は何か:小出裕章(京大原子炉実験所 助教)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/JCOindex.html

京都大学原子炉実験所 原子力安全研究グループ

■東海村事業所付近の線量計測記録
http://www.jca.apc.org/gensuikin/graph/tokai3.gif
東海村JCO事故 線量メモ
http://www.gensuikin.org/graph/tokai3.gif

■空間線量の推移


■原子力資料情報室制作の貴重なデータ↓
【推定中性子線量と事故地点からの距離】




■原子力資料情報室(CNIC)
http://cnic.jp/  ウイキペディア解説

■京都大学原子炉実験所 原子力安全研究グループ
JCO臨界事故 ページ
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/jco/JCO.html

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当サイト原発震災ページ 2011年3月18日アップ原稿より
「…(前略)…
なにも学ばない体質
 1999年9月30日午前10時35分に発生したJCO事故の際にも、周辺住民への対処はブレ続けた。屋内への退避(自宅待機)か自宅外への遠隔地への避難かの判断が長時間にわたってあいまいで、多くの中性子被曝を生み出している。当初長時間にわたりだされていた政府の「屋内待機」指示は疑問であった。
 当資料館からは、建屋の爆発痕(※)らしき写真から(建屋らしき写真だけはいち早くネット上に公開されていた)
(※ただ、実際には爆発は確認されていない)放射性物質外部飛散の可能性を含んでみても、どちらかというと中性子線照射源とみられる施設から一刻も早く距離をとる緊急退避の広報が必要ではないかとメディア各局にも通報した。いくつかのメディアからは、取材陣も現場から締め出しをうけており、事実関係の確認ができず、政府の指示を流すしかない状況との苦しい説明が返ってきた。当方は退避が緊急に必要との見解を残して電話を終えた。
 その後、「周辺からの退避が必要ではないのか」との内容は、TBSの「ニュース23」で最初に故・筑紫氏からの警告として発信されたように記憶している。それは、事故発生時刻の午前10時半ころから実に12時間以上たってから公に提起された最初の疑念だった。
 驚くべきことに、施設からの中性子線照射であるか、線源である何らかの放射性物質の飛散か、その両方なのかといった、基本的な情報提供すら行われなかったのである。時間だけが経過し、多くの住民が、当初出されていた屋内退避の指示のもと、家の中で中性子線の直撃をうけ続けた。事故現場付近をたまたま観光などで通過した人々も同様である。
 素人でも、少し核物理の知識を学んだことのある人たちなら、初期の「青い光をみた」という作業員からの証言が重要なキーワード(チェレンコフ光かどうかの厳密な判断は別として)であり、それが臨界の可能性を示すものであることは容易に想定できたと思う。そして、同時に発生している強力な中性子線の照射(被曝)を避けるため、周辺地域数キロ範囲程度の住民緊急退避が優先度の高い選択肢となるべきであると考えたはずである。
 ちなみに、中性子線は、他の放射線と異なり、困った追加作用を引き起こす。低速中性子線はナトリウム原子に衝突すると、それを放射性同位体に変化させる。人体には、塩分として多数のナトリウムが含まれている。低速中性子線は人体を通過するとき、染色体を破壊するとともに、人体中のナトリウム原子をNaの放射性同位体・原子量24のNa(半減期14.96時間)に変える作用を持つ。この作用は、同様に、マンガンやコバルト、金などで発生し、通常の土壌成分や家の中に置かれている貴金属を放射線源に変化させ、そこから人体に有害なレベルで放射線を照射する場合がある。それは現実にJCO事故で検出された事実である。

 使用済み核燃料に関しても、それがいかに脆弱なシステムに依存するかは、すでに経験済みである。
 最近でも、前述の柏崎刈羽原発(BWR)では、2007年7月に発生した「新潟県中越沖地震」で、使用済み核燃料保管プールから放射性物質を含む水が地震動によってあふれ、建物外へ漏洩した。同プールからの水漏れ事故は同原発の全号機で発生したところの重大事故である。また同事故では、点検中の原子炉建屋でも亀裂による放射能漏れ事故が発生している。点検中で停止中でも巨大地震の場合は危機的状況になりうるのである。同プールは簡単に冷却水がなくなりうる施設である。

 どうも、一部の向きは、これら事故のこともすっかりお忘れになっていたようだ。負の歴史を風化させ教訓を真剣に学ばないことに関して、わが国は天才的である、というと少し言いすぎだろうか?」…(後略)…


森永ヒ素ミルク中毒事件資料館 核事故問題 特設ページ
2011年3月18日から4月28日までの1ヶ月間にアップしたコメント&資料集。/資料は3月13日から4月7日までのものに限定。
http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/morinaga-hiso-kakujiko01.htm

森永ヒ素ミルク中毒事件資料館 粉ミルクセシウム汚染問題ページ
http://ww3.tiki.ne.jp/~jcn-o/morinaga-hiso-osen-milk.htm

事故当時の隠蔽と被曝対策の怠慢は小出裕章氏論文↓に詳しい。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/jco/kid9912.html

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JCO事故当時のネット公開情報を当時のまま記録する。
(1999年の事故直後の情報につき、原子力資料情報室の分析以外〜後半の書き込み〜では、若干不正確な情報が混在しておりますが、あくまで、過去の記録としてご覧ください。当時は、事故が隠蔽されていたこともさることながら、ネット技術が今ほど広範に普及しているとはいえない情況であったので、市民からの公開情報は極めて少なかった)

報告[8](1999年10月5日20:30)

検出された放射能に関する報道
各社の報道から、事故現場の周辺で検出された放射性物質に関する情報を拾ってみました。気体放射能が多いのですが、他の核種も放出されている可能性があります。
掲載日付
紙誌
核種

10.1
東京夕刊
セシウム138(キセノン138)量は不明

10.2
毎日夕刊
バリウム139、ストロンチウム91(クリプトン91)量は不明。微量のセシウム137も

10.2
朝日夕刊
西側300mでナトリウム24を64Bq/kg、事故現場の西側3kmで1.7Bq/kg。微量のセシウム137も

10.3
毎日
西側3kmでナトリウム24を1.7Bq/kg(上と同じ値)。微量のセシウム137(7箇所)

10.4
共同
ストロンチウム91を大気中から検出、0.021Bq/m3、事故現場の南東約900メートル、舟石川

10.4
TBS(NEWS23)
ヨウ素131を54.7Bq/kg、ヨウ素133も、ヨモギから(京都大学原子炉実験所の今中哲二氏・小出裕章氏)

10.5
朝日
ヨウ素131を54.7Bq/kg、ヨウ素133も、ヨモギから、事故現場の約100m、2日午前採取(今中氏・小出氏)。キセノン139、クリプトン91を入院患者の吐瀉物から(放医研)

原子力資料情報室作成
市民による測定結果
by 小竹広子 <hiroko@jca.apc.org> at 10月4日(月)14時37分
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10月2日と3日の朝、反原子力茨城共同行動の方は放射線測定器「はかるくん」などで東海村のJCO周辺を測定しました。
その結果は3日の集会でも報告されました(内容はふたつ下の記事)。
10月2日測定値を記録した生のシートを掲載します。単位はミリシーベルト・パーアワーです。
10月3日の測定シートは、リンクで行けます。
http://www.jca.apc.org/gensuikin/graph/tokai3.gif
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東海村の空間放射線量
by 小竹広子 <hiroko@jca.apc.org> at 10月4日(月)12時53分
Number:1004124945 Host: Agent:Mozilla/3.01 [ja] (Win95; I) Length:187 bytes
核燃料サイクル開発機構のホームページでは、環境放射線量のモニタリング情報を公開しています。
東海村のここ7日間の空間ガンマ線量率のグラフを見ると、事故後線量が跳ね上がったのが確認できます。
http://www.jnc.go.jp/
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10月24日、東海現地行動
by 小竹広子 <hiroko@jca.apc.org> at 10月4日(月)03時02分
Number:1004030246 Host: Agent:Mozilla/3.01 [ja] (Win95; I) Length:555 bytes

東海村で日本最初の原子力発電が始まった日を祈念して、10月26日は反原子力の日とされています。今年は24日に、反原子力のパレードと申し入れ行動が行われます。はじめての方も、ぜひご参加ください。また、集会準備などお手伝いをしていただける方も、募集中だそうです。

●10月24日(日)午後12:30集合、1:00出発
●東海村日本原子力発電前集合
●内容は、パレードと、関連各施設への申し入れです。
●反原子力茨城共同行動主催
●賛同費 個人一口1000円、団体一口3000円、郵便振替00340-8-9668「かんそいも通信」
●連絡先:根本 029-253-1433 & 黒羽 0298-64-4551
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水戸で緊急抗議集会
by 小竹広子 <hiroko@jca.apc.org> at 10月4日(月)02時55分
Number:1004025534 Host: Agent:Mozilla/3.01 [ja] (Win95; I) Length:3338 bytes
3日午後2時から、水戸市内で今回の事故に対する緊急抗議集会が開かれました。(反原子力茨城共同行動主催)
急であったにもかかわらず近隣その他から約150名の参加者があり、立ち見の出る盛況?でした。内容を一部ご紹介します。

水戸市民講座の方の報告:
 東海村の放射能の平常値は0.05msv/hとされている。自分たちは今まで月に1度、東海村の多数のスポットで放射能測定をしてきたが、0.02〜0.06msv/hしか出たことがない。ところが、2日の朝「はかるくん」で0.305、0.24、0.259、0.276という数字が出た。「はかるくん」は正確な測定はできないが、差異は歴然としている。より正確なR-DANは、ある程度の放射能を検知すると警報が鳴るが、事業所近くでは警報が鳴りっぱなしになった。ガイガーカウンターも通常より10倍くらい高い値を示した。
 今朝(3日)は半分に減っていたがそれでも通常の2、3倍。減ったのは、ホウ酸を現場に積み上げて防護措置をとったからだろう。

京都大学の荻野さん:
 もんじゅから始まって4回も事故が起きているが、いずれも「想定不適当事故」とされている。「想定していなかった」ということで、誰も責任をとらなくていい。全く許せない。アメリカで起きた事故を分析した結果得られた「事故の原則」というのがある。「事故は必ず起こる。それも最大級の事故が起こる。思わぬ時に思わぬ原因で起こる。」最も重大な事故を想定して、対処をすべきだ。
 具体的なデータが全く公表されないので、報道を見ていてもどかしくて歯ぎしりする思いだった。情報操作や隠蔽が行われているのだろう。ヨウ素については全く報道がないが、子どもの喉に機器をあてて被曝を調べている様子から、放射性ヨウ素が放出されているのではないか。
 行政は、動燃事故後、モニタリングをしっかりやるので原子力防災は大丈夫だというマニュアルを作ったが、これは見せかけだけだった。全く事故が起きると思っていなかったので、機能しなかった。

茨城大学 こうのさん
・データが公表されず、放出量がわからない。敷地内がどうなっているのかも様子が分からないという状況で、不安だった。
・農産物の安全宣言が出されたが、サンプルの農産物は30日の15時半に採取したもの。これでは再臨界していることがわかる前のもので、臨界が継続した後の状況は反映していない。
・県のサンプリング資料を見たが、採取の日時と検査限界が書かれていない。それで、安全、マル、とだけ書いてある。
・茨城の農業を発展させるには、原発をやめるしかない。
・空間とか人体ははかっているが、土壌をはかっていない。
・日本は核兵器を作ろうとしているのではという疑惑がある。常陽は残った1つの高速増殖炉。IAEAが見に来ると言ったが、日本は拒否した。どこかの国ににている。そういう疑惑も片隅に置きつつ、事故原因の究明が必要。

集会は、その他たくさんの発言を受け、政府・科技庁や各自治体、すべての原子力施設関係機関に以下の点を求める緊急アピールを採択しました。

1.政府、自治体は、事故の環境への影響を徹底的に調査するとともに、心理的ケアに充分配慮した周辺住民の健康調査及び相談を継続的に実施すること。

2.すべての関係機関は、事故の影響や原因に関して把握しているすべての情報の公開を行うこと。特に科技庁、JCOは未だ公開されていない環境中の核種分析の詳細を具体的データによって明らかにすること。

3.事故原因の究明は、JCOや科技庁主導ではなく、周辺自治体関係者や、市民グループが推薦する技術者・研究者などを含めた第三者機関を設置して行うこと。

4.国、及び地方自治体は今回の事故を契機に、広範な地域の住民避難を想定した原子力防災計画の見直しを行うこと。

5.政府は日本の原子力政策の再検討を国民的議論にかけ、まずは通常の原発よりも安全の余裕度が低い核燃サイクル政策の中止、見直しを行うこと。

6.特に、プルサーマル計画と核燃料サイクル開発機構―東海再処理施設の運転再開を即座に凍結すること。

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東海村事故最新情報

報告[4][10月3日17:00]
NHK「日曜討論」の内容について(高木仁三郎)
1999年10月3日午前9:00〜午前10:00放映

出席:有馬朗人、桜井淳、佐藤一男、鈴木篤之、内藤奎爾、西尾漠(50音順)

(1)核分裂の数はもっと多い!
 ウランの臨界が起こるとウラン235が核分裂しますが、今回の臨界事故における核分裂の数について内藤氏は、10の18乗くらいであり、たいした量の放射性物質ができていないと発言しました。しかしこれは、過去の事例のうち、臨界事故が瞬間的にしか持続しなかったケースにもとづいています。今回は、継続的ないし断続的に、長時間(9月30日午前10時半頃から10月1日午前5時前後まで)続きました。原子力資料情報室の推定では、10の21乗〜1022乗の核分裂が起こっています。歴史的にも、このように長く続いた例はあまり知られていません。そして、それに見合った放射能(報告[2]では10の16乗〜10の17乗ベクレル)ができています。このことを裏付ける証拠として、現在でも、施設内部のガンマ線量は高く、アルミの仮の遮蔽によって、外部の線量を抑えざるをえない状況なのです。

(2)形状設計による臨界管理のない施設が存在する!
 やや細かいことですが、桜井氏の発言では、現在ある新しい工場ではすべて、臨界管理が形状管理に基づいて行なわれているという印象を受けました。しかしそれは事実ではありません。たとえば、新鋭とされる六ヶ所ウラン濃縮施設でも、一部のユニットは、形状による臨界設計は施されておらず、人間の操作による管理に頼っている部分が存在します。その理由は、全てに形状による管理を施せば、ひとつひとつの機器が大きくなって、処理量・スピードが減り、コスト高になるからであり、そのことを安全審査でも認めているのです。

(3)人為ミス論について
 有馬氏、佐藤氏、内藤氏とも、ニュアンスの差はありますが、企業側の人為ミス・管理不十分に主要な責任をおしつけ、担当者の責任を問うています。しかし最も問われるべきなのは、最高責任者である有馬氏(科学技術庁長官)、佐藤氏(原子力安全委員会委員長)らの責任なのです。すなわち、

[1]「技術的に見て想定されるいかなる場合でも臨界を防止する対策が講じられていること」(「核燃料施設安全審査基本指針」)に従った構造になっていなかった工場と操作が許可されていたこと

[2]「万一の臨界事故時に対する適切な対策が講じられていること」(同「指針」)に即する構造になっていなかったこと(たとえば、核分裂を停止させるホウ酸水注入などのシステムもなく、また臨界事故を想定した中性子計測系もなく、さらに臨界事故を想定した事故解析もなかったこと)

これらが大問題で、その責任は彼らにあるのです。

(4)何が被曝を招いたか
 上記の欠陥のため、結果として、中性子による過度の被曝を作り出したこと("決死隊"も含めて)について、彼らは責任を何ら感じておらず、「過剰すぎるほどの措置を取った」などと言っています。バケツを用いた作業について「信じられないミス」と言って作業員をなじっていますが、一方で「決死隊」を突入させたのも、信じられない蛮行であり、ロボットの使用なども可能だったはずです。

(5)なぜ事故が続発しているか
 有馬氏、佐藤氏、鈴木氏の発言の趣旨は、もんじゅ事故(1995年12月)、東海再処理工場アスファルト固化処理施設事故(1997年3月)の時の発言と同じです。何回繰り返せば気が済むのでしょうか。信じられないミスによる特殊な事故で、他ではもう起こらないといいつつ、それでもまた今回のような事故が起こったという事実の重みをとらえていません。原子力委員会委員、原子力安全委員会委員は責任をとって総辞職すべきです。

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報告[3][10月3日17:00]
事故地点からの距離と中性子による空間線量率

公表されたデータのうち、2点におけるナトリウム24の土壌中濃度にもとづき、中性子線量の分布を推定した。JCO施設の敷地境界における中性子線量の実測値はこの推定値とほぼ合致している。(他の試算と同様、暫定的なものであることをおことわりします)
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報告[2][10月2日21:00]
(1)放出された放射能に関する徹底的な調査とデータ公開を!
 今回の事故によって放出された放射能についてはきわめて不十分なデータしか公開されていませんが、原子力資料情報室は、公表されているわずかなデータにもとづき、反応したウランの量および放出された放射能の量について暫定的な試算を行ないました。それによると以下のようなことが考えられます。

・大まかには、事故原因となった沈殿槽内のウランのうち、臨界反応によって1〜10グラムのウラン235が核分裂し、10の16乗〜10の17乗ベクレルの核分裂生成物が生成したと考えられます(チェルノブイリ原発事故によって放出された放射性物質の量を約10の19乗ベクレルと見積もると、この試算値はその1000分の1から数百分の1となります。ただしこの試算値はきわめて限られた情報にもとづくので、不確かさを伴うことをおことわりします)。

・生成した10の16乗〜10の17乗ベクレルの核分裂生成物(放射性物質)のうち、気体のものは全量が外部に放出され、その他のものとあわせて10の16乗〜10の17乗ベクレルのうち100分の1が放出されたとすると、放出された放射性物質の量は10の14乗〜10の15乗ベクレル、すなわち数百テラベクレル〜千テラベクレルとなります。IAEAの国際評価尺度によると、数百〜数千テラベクレルの放射性物質の外部放出を伴う事故はレベル5に分類されます。科学技術庁は今回の事故についてレベル4と発表しましたが、実際にはレベル5と考えるべきです。[この項目は10/3に追加]

・生成した放射性物質の相当量が施設外に放出され、また寿命の短い放射性物質はすでに減衰したと考えられます。しかし、なお多くの放射性物質が内部に残っていることも確かです。

・この残った放射性物質から発せられるガンマ線は現在、暫定的に、アルミニウムを積み重ねた遮蔽により遮断されていると発表されていますが、この遮蔽はきわめて暫定的な性質のもので、それで十分かどうかについては大きな疑いがあります。

・現在残っている放射性物質の一部分は放出されている可能性がありますし、今後放出される可能性も否定しきれません。


・10月2日午後6時30分、政府は施設から半径350メートル以内の範囲の汚染はなく、この範囲への避難勧告を解除するという「安全宣言」を発表しました。しかし、上記の事柄から推定される状況から考えれば、安全宣言を行なう十分な根拠があるとは考えられません。

・なお、現地周辺では住民のうち希望者に対して、被曝の調査なるものが行なわれていますが、これは単に体の表面に放射性物質による汚染がないか調べているだけにすぎず、すでにこうむった被曝(中性子線やガンマ線、体の内部に入った放射性物質による内部被曝など)の有無を検査しているものではありません。従ってこの「調査」の結果をもって、被曝がなかったというのは誤りです。

(2)被曝の実態はまだわかっていません
・今回の事故による被曝者の人数は、現時点では従業員・住民など合わせて49人といわれています。しかしこれはあらゆる種類の被曝について調査した結果ではありません。中性子による被曝について調査し、中性子被曝によって生成するナトリウム24が体内で検出された人の数を意味しているにすぎません。

・したがってガンマ線による被曝や、放射性物質の吸入による内部被曝については調査されておらず、確かなことがわかりません。実際に被曝をこうむった人の数は、はるかに多い可能性があります。徹底した調査とその結果の公表が必要です。

・臨界反応を終息させるためとして、10月1日未明に従業員が事故現場の床下に入り、冷却材を抜く作業を行ないました。それにより18人が20mSv〜103mSvもの被曝をこうむりました。法令では労働者について、50mSv/年、緊急時には1回100mSvの被曝限度を定めていますが、今回は多くの労働者が年間の限度を超え、1人については緊急時限度さえ超えています。このような作業を労働者に強いなくて済む手立てを講じるべきです。このような被曝を強いた点については事業者・科学技術庁に大きな責任があります。より詳細な被曝データの公開が必要です。

(3)臨界管理の不在が事故を招いた
・「核燃料施設安全審査基本指針」(1980年2月7日)によると、核燃料物質を扱う各種の施設について、「技術的に見て想定されるいかなる場合でも臨界を防止する対策が講じられていること」とされています。この指針にしたがうならば、本来すべての施設内の装置などが、いかなる作業ミスがあっても臨界を起こさないような設計、すなわち形状設計による臨界防止を施されていなければなりません(核物質の濃度や総量による臨界管理は人為ミスによって臨界を許してしまう可能性があります)。しかし今回の事故を起こした施設の沈澱槽はいかなる臨界設計も施されていませんでした。

・しかも同じ指針によれば、「万一の臨界事故時に対する適切な対策が講じられていること」が要求されています。しかし今回は臨界をとめるための有効な措置ができず、まったく事態に手の施しようがないまま野放しになりました。これは明らかに指針違反です。そのような指針違反の設計を行なった事業者およびそれを許可した科学技術庁には大きな責任があります。労働者のミスとして片づけられるような性質のものではありません。

・同じように形状管理による臨界管理を施していないユニットをもつ各種の核燃料施設は数多く存在します。今回の事故にかんがみれば、すべての施設が形状管理を施されなければなりません。またJCOをふくめすべての施設において、たとえ最悪の臨界事故が起きたとしても周辺住民に影響が及ばないよう、立地審査や安全基準の見直しの必要があります。

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報告[1](10月1日午後3:45)
事故は終わっていません
 9月30日午後に発生したこの事故については、10月1日未明の冷却材ぬきとり作業を経て、臨界反応が終息したと伝えられています。しかし事故が終わったわけではありません。
 臨界反応の状態から脱したとしても、放射性物質の放出は終わっておらず、今後もある程度続くだろうと原子力資料情報室は考えています。
 しかも、それに対して有効な対策は打たれていません。依然として、十分な警戒体制が必要だと思われます。

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東海ウラン臨界事故に関する声明
原子力資料情報室
1999年9月30日

 本日9月30日、茨城県東海村にある(株)ジェー・シー・オー東海事業所で、臨界爆発事故が発生した。この臨界事故により、従業員3名が放射線による急性障害で入院した。同施設から大量の放射能が漏洩し、茨城県の測定では通常値の16,000倍が記録された。周辺39世帯150人の住民が避難し、工場周辺200メートルは立ち入り禁止、周辺3kmの道路封鎖、周辺10kmの住民に屋内退避措置が取られた。加えて従業員11名のほか住民5人の被曝も確認され、被害は広がる一方の様相を呈している。

 このような臨界爆発事故は、日本の核施設として初めて、最悪の事態であり、このような大事故を起こした事業者、監督官庁・科学技術庁の責任は重大である。私たち原子力資料情報室は、同施設の閉鎖、原因の徹底究明、更に全核施設の安全確保体制の再点検と、臨界事故に対する安全性が不十分な施設は直ちに閉鎖することを求める。

 今回の臨界爆発事故は、高速増殖炉実験炉「常陽」のための高濃縮ウランの精製作業中に起こったと伝えられている。基準容量2.4キログラムの沈殿槽に16キロもの高濃縮ウランが充填され、臨界爆発事故が起こった。基準量の実に数倍にも上るウランが充填されたのである。このような事態が起こりうるとすれば、同施設の臨界管理に重大な欠陥があったか、現行の核施設における臨界管理体制そのものの不十分性が考えられる。また事故後12時間以上経過した現時点でも臨界爆発が終息しておらず、施設付近での放射線が依然高い値を示しており、事故発生後の対応、同施設の隔離作業などが十分に行なわれていない。施設の構造や気密性などにも、根本的な問題があると考えられる。更に同施設のような高濃縮ウランを扱う施設が一般住宅と隣接する立地条件であることや、原子力発電所などに比して格段とゆるやかな安全規制しか行なわれていない実態も重大な問題である。核物質の危険性を侮るような現行の立地審査や安全規制体制に、根本的な欠陥のあることを、今回の事故は証明しているのである。

 さらにこの臨界爆発事故は、地元住民、自治体への通報の遅れ、不十分な事故情報など、事業者・科学技術庁の緊急事態への対応の不備を明らかにした。東海村のような原子力発電所や多数の核施設が集中する地域で、事故情報が1時間後になり、避難する住民にすら正確な情報が与えられないという事態が生じているのである。むしろ一旦事故が起こっても、自ら事態を正確に把握できない事業者・科学技術庁に、核物質を扱う資格はないといえる。核燃料施設での臨界事故の可能性を全面的に否定し、住民の安全確保を怠り、間接的に今回の臨界爆発事故を許した事業者・科学技術庁の事故に対する責任は重大である。

 今回の事故は、原子力の安全神話によって、核利用の本来の危険性を隠しつづけてきた日本の原子力行政の欺瞞性を告発している。私たち原子力資料情報室は、国・科学技術庁・通産省に対して、原子力発電所などの核エネルギー利用に伴うあらゆる危険性と問題点を国民の前に提示し、その可否を改めて問うことを、強く要請する。


報告[5][10月4日23:15]
世論は明らかに変化しました
毎日新聞(1999年10月4日)に掲載された世論調査(1999年10月2〜3日実施)によると、今回の事故によって原子力開発に対する考えが変わったという人が多く、また"原子力開発を停止"ないし"他のエネルギーへの切り替え"を合わせると74%であり、「開発を続けるべき」の19%を圧倒しています。

(1)茨城県東海村の民間ウラン加工施設で、大量の放射能漏れ事故が起きました。この事故で、原子力開発に対するあなたのお考えは変わりましたか。変わりませんか。

(数字は%)
全体
男性
女性

考えは変わった
45
38
52

考えは変わらない
46
58
36

毎日新聞(1999年10月4日)による
(2)では、あなたは、今後、わが国にある原子力施設の開発・操業についてどうすればよいと思いますか。

(数字は%) 全体
男性
女性

原子力開発の重要性は変わらないので、開発計画は続けるべきだ
19
27
12

原子力開発を一時ストップし、安全策を講じるべきだ
31
29
33

原子力開発をいまのままでストップし、新たな開発はしない
5
5
5

他のエネルギーの開発を急ぎ、原子力から切り替えるべきだ
38
35
41

毎日新聞(1999年10月4日)による

原 子 力 資 料 情 報 室
Citizens' Nuclear Information Center (CNIC)

====ネット上での書き込み==============================
【メディア関係者からとみられる情報】
昨日の夕方から現地近辺に入り、先程交代して帰宅しました。某TV局の報道局に属している者です。今回の事故、かなりの報道管制が敷かれており、NHKすら大本営発表となっていますので、お気を付け下さい。漏れだした放射線量は、広島型原爆より遥かに大きい規模です。一時期は午前4時近辺にて臨界による爆発が起きる可能性もあるとの事で、記者陣は日立市待機となりました。(しかもヨード液を飲まされました) ご存知の様に民放では、ニュース・天気予報などの報道局枠に電力がスポンサーとして入り込んでおり、NHKに於いても審議委員会の理事は電力各社の社長クラスという状況にあり、現状では箝口令が引かれている情報も含め、数値を低く設定して公にして良い情報のみ報道されています。 
通常、現場にはヘリが出たりSNG中継車が出る物ですが、今回は全て待機し、現場の警戒線内に入ったり撮影をするなとのお達しが、局の上層部より出ております。
被爆作業員の数値は8m/sgとの報道も出ていますが、実数は15m/sgとの話が現場記者間の情報として流れております。
現状では、撮影出来るように体裁をある程度整えてから、やっと代表取材カメラが入る雰囲気になっております。
臨界が一応終息したとの発表にも関わらず、JRが未だに動いていない事でもお察し頂けるかと思いますが、実体は報道されている事態より数倍大きな事故でありますので、こんな職ながら敢えて言わせて頂くと、今回の場合は政府・自治体・マスコミを信じず、各自の責任に於いて防御される事をお勧め致します。ある関係者の言質によると、規模は報道の約8倍との事です。
お気を付け下さい。
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あるページで胎児や子供のことを心配する文書がありましたがそのことはマスコミではほとんど報道されていなくて、逆にそのページの管理者にその文書を削除してくれませんかというメールが届いたそうです。
その管理者は拒否しましたが、あきらかに真相を隠蔽しようとするものがいるのは事実と考えます。本当に胎児子供が危険です、胎児や子供は成人の被曝量の数十から数千倍しないと本当の被曝量が測れないのです。(感受性が強いため)あとで東海村の子供たちが白血病やガンにおかされても因果関係はないと今からつっぱねるつもりなのでしょう。
真実を言わないマスコミは罪だと思います。
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新聞の報道は読売新聞がましな報道をしてた。
でもレベル4の説明が納得行かない。英語のサイトを見ると、はっきりと「放射性物質」が漏れているレベルだと書かれている。なのにあの表はなんだろう?影響があるとかないとか。なぜ政府は、海外からの調査隊派遣をこばんだのだろう?
必要以上に疑いたくないけれど、不透明すぎる。
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原発で事故が起こると核分裂の過程で生じたヨウ素の放射性同位体が放出されることがあり、これが甲状腺に蓄積されることによって起こる体内被曝を予防するのに効果があるとされています。原発の周辺の家庭にはヨウ化カリウムのカプセルが配られたりするそうですが、事前に甲状腺に十分な量のヨウ素を蓄積させ、体内に入ったヨウ素の放射性同位体の排出を促すためと思われます。

今回の場合は6フッ化ウラン等が飛び散った可能性の方が高いと思われるのでヨウ素は気休め程度にしかならないと思います。

   
>今回の場合は6フッ化ウラン等が飛び散った可能性の方が高いと思
>われるのでヨウ素は気休め程度にしかならないと思います。

この件ですが、今回の事故では中性子線の放射が確認されており、それは放射性降下物の生成をも意味する訳ですから、ヨウ素剤投与の意義はあると思います。この場合、事故発生後から24時間以内に服用を始めないと効果が薄れるようですから、当局の一刻も早い措置を期待します。

なお、家庭でも手は打てます。さすがにイソジンでうがいをしても意味がありませんが、海草類を積極的に食べる事で、ヨウ素剤の代用になります。酢には放射能の除去作用があるという研究結果があるようなので、ワカメの酢の物でも作って食べてみては如何でしょう?






『砒素ミルク』シリーズ無料公開
本シリーズは当時の隠れたベストセラー。全国に普及され、国民に事件の再認識を劇的に促し、救済運動にはじめて世の光を与え、その後の学界改革にも多大な影響を与えた歴史的名著である。
※PDFのダウンロードが出来ない場合は、右クリック→「対象をファイルに保存」でデスクトップなどに一端置いてください。
「砒素ミルク1」 谷川正彦・能瀬英太郎 共著 全251頁 森永告発刊 昭和46年(1971)6月10日発行『砒素ミルク 1 
─森永と共犯者たちによる被害者抹殺の16年─』
谷川正彦・能瀬英太郎 共著 全251頁
森永告発刊 昭和46年(1971)6月10日発行
『砒素ミルク1』 前編(1-131p) PDF6.61MB       
『砒素ミルク1』 後編(132-251p)PDF6.09MB

『森永ミルク事件史』 岡崎哲夫著『砒素ミルク2 守る会18年のたたかいの原点─被災者同盟の記録』岡崎哲夫著/谷川正彦・能瀬英太郎・森永告発刊 昭和48年(1973)8月10日発行『砒素ミルク 2
守る会18年のたたかいの原点─被災者同盟の記録』
岡崎哲夫著 /谷川正彦・能瀬英太郎・森永告発刊 昭和48年(1973)8月10日発行(右掲載写真本の復刻版)
『砒素ミルク2』前編(1-164p)PDF8.84MB
『砒素ミルク2』後編(165-241p)PDF3.95MB


『森永ミルク事件史』の原書の冒頭には、下記の付箋が貼られていた。…「本書は日本のヒューマニズムの限界を示すものである」…
本編PDF版の転載、配布等は自由です。むしろ歴史継承の視点から歓迎致します。

第2弾!
『森永砒素ミルク闘争二十年史』デジタル公開
森永砒素ミルク闘争二十年史 編集委員会編 1977.2.28発行『森永砒素ミルク闘争二十年史』
二十年史編集委員会(代表 岡崎哲夫)
能瀬英太郎編纂
昭和52年(1977)2月28日発行





序論 岡崎哲夫 PDF:926KB  
NEW 運動編 第一章 守る会・光を求めて20年 岡崎幸子 PDF:2.43MB
NEW 裁判編 第一章 刑事裁判 PDF:1.29MB

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