旧関東軍ソ満国境要塞群について
寄稿 : 軍装備研究家 辻田文雄氏
ハイラル要塞
中国東北部の内モンゴルにハイラルと言う町があります。ノモンハン事件を起こした23師団の駐屯していた町で、南に200キロ程にノモンハンがあります。ここに第八国境守備隊の要塞がありました。ここを18名の調査団で調査しようと決心したのは、たいした理由ではなく、14個の国境守備隊で、配備された大砲の数が多く、さぞ遺跡が多いだろう位の認識でした。
資料調査をしてビックリしました。主要塞である第二地区は地下五階建て、一番下はトラックが走れるほどであったと聞きます。今公開されているのは西側の一部です。これだけでも巨大地下要塞として本に書かれていますが。中国側の話ですと第二地区の第八特火点(トーチカ群)は鉄道が倉庫として使っているから、近づいてはいけないそうです。多分、軍が使用しているのでしょう。1200ボルトの送電線6本が地表の電柱から地下に入っていましたから、下にはかなりの空間があるのでしょう。
周囲はホロンバイルの大平原が広がります。ここは長靴をはかないと歩けません。遠くから見ると一面の大草原ですが、羊と牛の糞が大量に落ちています。草原に寝転ぶなんて、そんな恐ろしいことは出来ません。私達は通称「地雷」と呼んでいました。
大興安嶺に大要塞があるといわれた方がいましたが、ナチスドイツのアルプス要塞と同様でしょう。ハイラルに独立混成80旅団を残して、第119師団が大興安嶺では野戦陣地を構築して防衛しましたから、残念ながら幻でしょう。
731部隊の野外実験場も発見しました。幅500メートル長さ2キロメートルの空中投下実験場です。私達が第一発見者でしょう。
※他の国境要塞に関する研究成果は、学術報告集『虎頭要塞』に収められています。