牛島税理士訴訟弁護団声明

 本日、最高裁は、団体献金を禁止し、組織における構成員の政治的自由を尊重する判決を言い渡した。

 南九州税理士会は、昭和53年6月、税理士政治連盟に対する政治献金とする資金を 会員税理士から強制徴収する決議を行った。昭和54年、これを拒否した牛島会員の 選挙権等を剥奪する処分を行い、今日に至るまで17年間もその処分を続けた。 右資金は、税理士政治連盟を通じて特定政党や特定政治家に対する政治献金に使用された。 右政治献金は、大型間接税徴収の受皿づくりを目的とした昭和55年改正税理士法改正 運動を職域拡大という業界エゴから推進するために行われた。これと時期を同じくして昭和54年の総選挙の際に行われた日本税理士政治連盟の政治献金は、東京地検によって 贈賄罪と認定され、強い社会的非難を受けた。

 以上が本件事案である。

 「政治を金で買う」「ワイロ性の濃い政治献金」「国民の福祉に背を向けた業界エゴ」 「大蔵当局と業界との癒着」「資金力にまさる団体が個人の政治的選択を狭める団体献金」 「献金資金を捻出するための構成員への献金資金拠出強制」「金権腐敗体質」 「組織ぐるみ選挙」。納税者の人権を擁護する専門家集団であるべき南九州税理士会執行 部が行っていた人権侵害、非民主的実態の数々である。内部の人権さえ保障できない 税理士会に納税者の人権擁護などできるはずもないのである。

 本判決は、これら南九州税理士会執行部の腐敗した実態に対する痛烈な批判であり、 今後のあるべき方向を指し示す画期的な判断である。南九州税理士会は、本判決を真摯に 受け止め、早急にこのような醜悪な過去を謝罪・反省・清算し、民主的で会員の 人権保障に十分配慮した運営を目指すべきである。

 本判決は、ひとり南九州税理士会のみに向けられたものではない。

 日税政政治献金事件を引き起こし、毎年巨額の団体献金を行ってきた日本税理士会連合会 ・日本税理士政治連盟が同罪あることは言うまでもない。
 さらに、南九会、日税運を指導、監督すべき大蔵・国税当局の責任である。 大型間接税導入のお先棒を担がせ、日税連をここまで腐敗・堕落させた責任は重い。
 司法書士会、行政書士会、社会保険労務士会なども同様な実態があり、これら 専門職団体も深刻な反省と改革が求められている。
 のみならず、その他の業界団体、ひいては企業も同様な実態があり、日本における 民主主義をゆがめ、構成員の人権を侵害している。

 この判決を契機に、これら団体・企業は、このような実態を早急に改めるべきである。 また、これまで団体の不当な圧力によって虐げられてきた人々やこの人々とともに たたかってきた心ある人々にこの判決を送る。この判決を武器に、非民主的な・ 人権侵害的な団体の改革にともに立ち上がろう。

 右声明する。


1996年3月19日
上告人 牛 島 昭 三
牛島税理士訴訟弁護団

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