医師政治連盟に関する、個人見解

 以前も書きましたように、医師政治連盟への加盟が一応任意となり、会費の徴収方法は個別の払い込みとなりました。しかし、未だに問題と考えられる点がいくつかありますので、以下に列記します。

1.岡山県医師連盟は、A会員数によって割り当てられた「寄付金」約2600万円を日医連に上納することとなっており、実際の連盟会員数に関わらず日医連そのものがその集金力を減じないような仕組みになっています。これは、医政連そのものが、個人の自由意志による民主主義的な組織ではなく、自民党1党支持の上意下達の組織であることを如実に物語っています。集金できた会費を、上納するというのが、一般的組織のあり方ではないでしょうか?何故、日医の言われるままに医師会員人数分の多額の寄付金を収めなければならないのか?医政連は、納得のゆく説明をすべきです。

2.医政連の政治力について、色々といわれますが、それが一定の影響力をもつのは、中医協周辺の部分や税制調査会などといった一部にすぎないことが、会報の記事からも明らかです。
 政府・厚生省・自民党の推進する、低医療費政策そのものに対しては「財政状況がきびしい」という政府の言い分を鵜呑みにして、全く反論することが出来ていません。つまり、行使の範囲の限定された政治力であって、社会保障制度の充実といった根本的な政策転換については、全くといっていいほど無力・無定見です。自民党は、票と金を言われるままに出している日医連に、お情け程度の範囲で配慮した譲歩をしているだけではないでしょうか?金や票が無いところの意見は聞かないという自民党の姿勢も問題ですが、それに媚びているとも言える医師連盟の姿は、情けなくすらあります。
 公共事業に50兆円、社会保障には僅かに20兆円といった、国家予算の配分を批判したり、軍事費(防衛費)に5兆円もいるのか?といった問題に触れることなくして、現在の財政危機、長びく経済不況、中年男性の自殺により男性の平均寿命が低下してきた国民生活の不安や健康・福祉の問題などの改善提案は出来ないのではないでしょうか?
 医師会がロビー活動を行って、診療報酬の改善を求めたり、医療税制で意見をするのは、医師会がそもそも医師(特に開業医)の利益集団であることから、ある意味で当然です。それの方法が問題でしょう。
 医師連盟という自民党1党支持の組織に無理やり統合し、医師という専門集団としてのフリーハンドを奪われていることこそ、医師(開業医)にとっての最大の不幸だと思います。

 今回、会則の改正もあり個人加盟の組織と明示されましたので、私は会の規定に拠り、個人の意思で岡山県医師連盟を脱会いたします。

(文責:丸屋 2000. 6. 13)

  参考までに、岡山県医政連ニュースの記事を添付します。私が、特に疑義を感じた部分は、赤色表示にさせて頂きました。

岡山県医師連盟に対するご協力のお願い

 岡山県医連ニュース 第21号 平成12年5月10日発行 より全文を引用

岡山県医師連盟に対するご協力のお願い 岡山県医師連盟委員長 小 谷 秀 成

 平素は、岡山県医師連盟(県医連)の活動に対しましてご理解とご支援を賜り感謝 致しています。
 さて、この度の県医連執行委員会において新規約による新役員人事が決まり、私が 岡山県医師連盟委員長に就任することになりました。時局柄、大変重責を担うことに なりましたが、ご指導、ご顔建の程よろしくお願い申し上げます。
 ご承知のように、中央の政治情勢は風雲急を告げる状況に立ち至りまして、県医連 としても緊急に行動を起こさなければならなくなりました。
 近況を申し上げますと、先月26日に日医で開かれた日本医師連盟(日医運)執行委 員会・小選挙区担当責任者合同会議では、来月下旬にも予定されています衆院選に備 えることで協議致しましたし、また、5月6日には県医運常任委員会を開き、県医連 規約の改正、連盟会費徴収方法、衆院選対策などについて鋭意検討を行ったところで あります。
 そこで、両会議において決められた内容・方針などを以下の通りご報告致しますと ともに、現在、県医連の置かれています諸般の情勢をご賢察いただき、是非とも、全 会員のご協力をいただきますよう切にお願い申し上げます。

1.いま、何故、医政活動が必要か

 医政活動の重要性については今更申すまでもありません。まさに、「医政なくし て医療なし」の感があります。
 とくに、今日のように財政状況が厳しいなかで、われわれが国民の医療・福祉の施 策について如何に妥当・適切な主張を行っても、行政、関係機関に必ずしも十分な認 識が得られないまま、最終的には、多くの場合、政治的にことが決まっていくのが今 日の状況ではないかと思っています。
 また、現在の政治が私どもの医業経営に非常に大きな影響を与えていますが、その 一つは医業税制の問題であり、他の一つは医療保険(診療報酬)の問題であります。 これらに関して私どものまっとうな主張を通していくためには、医政活動をこれまで 以上に活発にし、政権政党である自民党を中心とした与党を支えていかなければなり ません。
 実際、考えてみますと、医療保険についての平成10年 8月の当時の森幹事長・池田 政調会長との協約、この 3月の医療法改正問題についての亀井政調会長との協約、ま た、昨年、大変騒がれ撤回された薬剤の参照価格制度や老人の薬剤一部負担の撤回問 題など日医と自民党との間で約束された諸制度の変更が、直ちに国民とわれわれに跳 ね返ってきております。この4月の診療報酬引き上げ問題でも僅か 0.2%でありまし たが、支払い側の激しい抵抗を退け、結局、政治決着により実施されたという経緯が あります。日医のロビー活動を含めて、その努力が評価されているところですが、こ うした動き無くしてはもっと惨めな結果になっていたであろうことは火を見るより明 らかであります。そのために日医連を強力にバックアップしていく必要があるわけで す。

2.是非、県医運へ入会していただきたい

 前述の通りわれわれは、日医或いは日医運の傘のもとに医業を続ける上でのいろい ろな恩恵を受けていますが、そのことをわれわれ医師一人一人が十分認識しなければ なりません。そうした視点に立つと、できるだけ多くの方が入会し一致結束して県医 連を支え日医連を強化することが何よりも必要になります。県医連は多くの入会者が あって初めて大きな力を発揮することができるわけです。
 入会の是非については、ことの性質上一応任意でありますが、実際にはこれまで同 様、略全員の入会を望んでいます。
 この度、県医連は規約も改正し、支部組織を強化することを図りましたし、あとの ご説明でも出ていますように、政治資金規制法の関係で新たな会費納入方法を決めました。改めて是非、ご入会くださり、いろいろとご意見を賜りたいと念願しています。翻って考えてみますと、入会することで医政活動への認識が更に深まるものと考 えます。

3.何故、今回、岡山県医師連盟規約を改正したか

 例えば、衆院選について見ますと、県下5つの小選挙区がありますが、前回の選挙 で会員がそれぞれの選挙区において支持者層を広げる努力を十分行うことができまし たかどうか、多少、運動のやり方に迷いがありました。そこで、郡市地区医師会が県 医連の支部組織をつくり、郡市医師会長が支部長になっていただき、小選挙区のなか での連携を密にして、入会者の獲得や医政活動を活発にする必要があるのではないか と考えました。併せて、会費納入について、県医連本部が直接に徴収するよりも支部 長さんのお力を借りまして支部という会員の身近なところで、その取り扱いをしてい ただく方が会の運営上より効率的ではないかと考え、そのような規約変更を行いまし た。なお、全体として日医連の規約に準じています。

4.会費はこれまでと変わらないか。

 昨年度まで、県医師会の定額年会費としてA会員については6万円(うち特別会費 =県医連会費3万円)、B会員については、1万5千円(うち特別会費=県医連会費  3千円)を納入していただいていましたが、公益法人である本会から政治団体である 県医運に寄付することは法律上禁止されたため、特別会費分は別途任意で納入してい ただくことになりました。従って、納入方法は変わりましたが、会員の納入金額につ いては、これまで通りA会員の県医連会費は3万円であり、ご負担が増えるわけでは ありません。しかし、任意制となりますと入会者が減るのではないかと危倶してお り、何としても、ご協力賜りたいと思います。日医連には、 A会員の数に負担基準額を乗じた金額を県医連より寄付しており、その額は凡そ 年2千6百万円になります。
 先日の日医運の会議では、現在の資金調達で十分かという心配の声さえ聴かれまし たが、少なくとも、会員相互の団結を示す意味においても会費納入については格段の ご配慮をお願い致します。なお、全国の各都道府県医師連盟からの日医連への寄付も 順調に行われています。

5.会費の納入方法について

 会員個人の銀行口座より支部銀行口座(新たに設けていただきます。)に6月末ま でに一括納入していただきたく宜しくお願いします(納入方法:自動引き去り.振込 み等)。

6.衆院選対策について
下記の事項について最大限のご配慮をお願いします。
(1)衆議院議員の推薦
 政党支持については、日医連執行委員会において選挙の都度、 判断することになっていますが、今回、1選挙区1名、支持政党は自民党に決めています。 従って県医連では、県下5つの小選挙区で、それぞれ以下の立候補予定者を推薦しま した。強力な支援活動をお願いします。

第1選挙区 逢沢 一郎氏
第2選挙区 熊代 昭彦氏
第3選挙区 平沼 赳夫氏
第4選挙区 橋本龍太郎氏
第5選挙区 村田 吉隆氏

(2)それぞれの小選挙区における上記候補者の後援会(総会、役員会、演説会、決 起大会)、医師による後援会(医逢会、医熊会、趣医会、医村会、医龍会)等へ の参加。
(3)それぞれの候補者の後援会員獲得に努める。
(4)小選挙区担当責任者は、選挙区の状況について管内の支部長(郡市地区医師会 長)と協議し実効ある対策を考える。
(5)女性票の拡大を実現するため、県医連・小選挙区・支部などで女性部を組織す る。女性部は会員夫人、子女、女子従業員で構成し、推薦候補者の支援活動を行 う。
(6)若い会員、勤務会員の医政に関する認識を深める(各種医政の会への参加を呼 び掛ける。
(7)県医連は選挙活動について小選挙区担当責任者と随時協議する。
(8)必要に応じて日医連からの応援をお願いする。
(9)選挙戦に入ると、手分けして人労力、時間を割き選挙事務所に詰め掛けるな ど、推薦候補者に対する積極的な支援活動を行う。
(10)われわれの専門分野としている医療・保健・福祉に関わる意見をあらゆる機会 を通して政治家や関係機関県民に伝えていく。

※県医連の方針等に対するご意見をお寄せください。



医療と政治

 平成 9年11月、日本医師会から新生医師会創立50年記念誌「戦後50年のあゆみ」が 全会員に配布された。同じころ日本医事新報社から「戦後医療の50年−医療保険制度 の舞台裏(有岡二郎著)」が発刊されている。ともに戦後の医療制度、医療保険制度 の変革を巡って、日本医師会の先輩たちが厚生省、財界、健保連、政党等と戦ってき た歴史が克明に記されており、我々が身を任せている医療関連諸制度がどんな経緯で 作られて来たのかを如実に知ることが出来る。改めてご一読されることをお薦めす る。

 医療のなかの政治の存在

 われわれ医療担当者は、常に働きやすい医療制度と、満足出来る対価を主張してき た。健保連など支払側は保険財政第一主義で、医療費の負担をいかに安く抑えるかを 使命としている。厚生省は、これもまた限られた財源をやりくりしつつそこそこの質 と量の医療水準を保持しようとしている。三者それぞれの立場からの主張をぶつけ合 い、その時々の与党が調整を図るという形で進められてきたのが医療制度変革の歴史 と言えるが、とくに日医執行部の持つ政治力の強弱如何が事の決着に大きく影響して 来たことは否めない。
 日常診療における薬価も技術料も、また医療税制や、勤務医をはじめとする医療従 事者の給与に至るまで、すべてが政治に直結していると言っても過言ではあるまい。 例えばこの1年間の日医執行部の戦いの跡を振り返ってみよう。

 日医の政治活動この1年

薬剤価格制度:一昨年以来厚生省が持ち出してきた日本型参照価格制度を巡っての議 論が沸騰した。医療保険福祉審議会では決着がつかず、自民党社会部会、医療基本問 題調査会などで日医が行ったロビー活動が奏功して白紙撤回されたが、もしこの案が 通っていたら、薬価は高値で安定し、診療報酬は引き上げの財源がないままにマイナ ス改定が行われ、患者は不当な負担を強いられるというハメになっていたであろう。 当時、マスコミは日医の横暴と批判し、連合など本来労働者、患者の立場に立つべき 勢力までが支払者側に同調していたことが思い出される。
診療報酬:日医は平成12年4月の診療報酬の改定へ向けて3.6%の引き上げを要求し た。これに対して支払側は、財政悪化を理由にマイナス改定を主張し、中医協に1点 単価9円というような案まで持ち出して来た。結局中医協では決着がつかず、12月下 旬の予算編成の直前まで紛糾した結果、自民党を中心とする与党(自、自、公)の調 整による0.2%引き上げという政治決着が図られた。われわれとしては決して満足で きる結果ではないが、いまの経済情勢を考えると、政治力を バックとした日医の奮闘を是とすべきであろう。
薬剤二重負担の解消:平成9年の健保法改正で、同年9月から、医療費に対する一部 負担に重ねて薬剤費にも一部負担がかかるという不合理が生まれた。日医は施行直後 から自民党に強く働きかけ、強く反対する厚生省、支払側の抵抗を排除して、11年7 月から取り敢えず老人のみの負担を除くことに成功した。
医療税制:診療報酬に係る事業税非課税措置は、保険医療の公益性、非営利性に着目 して設けられた地方税(府県税)であるが、毎年政府の税制調査会ではこの措置の撤 廃が答申され、自民党の税制調査会で存続という結論が出されて、結局存続されると いうパターンが続いて来た。今回は地方財政の厳しい状況を反映して存続は難しいの ではないかとの観測も流れたが、診療報酬に係る四段階制税制とともに、今年度も手 をつけられることなく終わった。もし党税調が政府税調に同調して事業税が課せられ るとなると、医療機関の負担は平均で数10万円の年税額になると言われ、医療機関の 台所に大きく影響することになろう。医療関係の税制では、このほかにもいくつかの 項目で日医の要望が認められており、医政活動の効果がとくに顕著であったと言える。

 日医の政治力の源泉は会員個々の政治姿勢

 最近日医が困難な情勢にも拘わらずこのような政治力を発揮できているのは、もち ろん坪井会長以下の執行部の活躍に負うところが多いが、それ以上に、3年半前の総 選挙、それに続く補欠選挙、知事選挙、県会議員選挙等で都道府県医師連盟が発揮し た政治活動を自民党が高く評価している結果で あると言われている。
 医政の要諦が妥当な主張に加えて集票力と資金力にあることは言うを待たない。 全国15万の日医会員が一致団結して日医の執行部を バックアップすることが、いまの閉塞状態にある医療問題を打開し、明るい展望を 招来するうえにどれだけ大切なことか。 会員のなかには頭から政治への関与を否定される方もおられるようであるが、開 業会員、勤務会員の別なく、その家族も含めて、医政の持つ重要性をご理解いただ き、医政を他人事としないで、進んで行動と資金の提供にご協力くださることをお願 いする次第である。

                         (顧問 永山克巳)
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