自動車の解体処理費用

新車購入時徴収が軸に

産構審作業部会

(日本経済新聞2001年6月16日14版5面)

 

【本文】

 2004年度にも始まる自動車リサイクル制度の焦点になっている解体処理費用の徴収方法について、消費者が新車購入時点に支払う方式が有力になってきた。

15日開いた産業構造審議会(経産相の諮問機関)の作業部会で、自動車メーカーが前払い方式に柔軟姿勢を示したため。

産構審は7月にも結論を出す。

 自動車リサイクルは消費者が負担する費用で、自動車メーカーに処理後に出る破砕くずなどを引き取ることを義務付ける制度。

費用は1台1万円以上の見通し。

 

【ツッコミ】

 自動車リサイクルについて産構審が意見聴取した記事は以前に取り上げました。

該当部分はこちらをクリックしてください

 

 当時のアンケートでは自動車メーカーや消費者は「廃車時負担」が多数派で、中古車ディーラーや整備業者が「新車購入時負担」を支持していました。

いずれにしても「新車購入時負担」は少数意見に過ぎませんでした。

 

 それが2ヶ月たった現在になると自動車メーカーも「新車購入時負担」を支持する姿勢に傾きつつあります。

この路線変更の最大の要因は「家電リサイクル法」施行後の不法投棄激増という現状があるためだ、というのは容易に想像できます。

 

 家電リサイクルの場合は廃棄時負担です。

つまり引き取り所に持ち込めばお金を取られるわけですから、当然不法投棄してバレなければ懐は痛みません。

これが不法投棄を助長する要因となっています。

無意味な手術やムダな投薬をするヤブ医者ほど診療報酬が稼げるという現在の医療保険制度同様にバカなシステムです。

もしもメーカー側がかたくなに「廃車時負担」を主張した場合、当然「中古車の不法投棄」が予想されます。

そうなると「自動車メーカーが反対したから不法投棄が増えた」という連想になり、企業イメージにとってマイナスとなります。

特に外国人投資家から見た場合、「日本の自動車メーカーは環境対策に熱心ではない」と判断すると、それだけで株の「売り材料」となりますから株価が下落します。

 また、自動車というものは家電以上にメーカーごとの外観の特徴があります。

「道端に捨てられてるのは○○の車ばかりだな」ということになると、ユーザーに対してマイナスイメージを植え付けるだけでなく、ヘタをすると行政サイドからメーカーに「なんとかせい!」と自費回収を迫られる恐れもあります。

このようなことからもメーカーが方針転換したのは当然の流れでしょう。

 

 自動車リサイクルでは家電の「轍」を踏まないような施策が求められています。

したがって、「新車購入時負担」が現実的でしょう。

では「中古車ばかり買い替えるユーザーはリサイクル料金を負担しなくてイイのか」という問題も発生しますが、これはまた別の問題として考えるべきでしょう。

まずは「捕捉性の担保」と「受益者負担」の見地から、この「新車購入時負担」が現実的だと思われます。

 

伝統40年、富くじ「違法」

広島東署、圓隆寺を捜索

「祭り、終わりに」と反発

(日本経済新聞2001年6月16日14版39面)

 

【本文】

 広島市中区三川町の圓隆寺(中谷本耀住職)が今月初めの夏祭り「とうかさん」期間中、富くじを発売していたとして、広島東署は15日、富くじ発売容疑で同寺の事務所などを家宅捜索した。

 とうかさんは圓隆寺の境内や参道を会場にした広島市の三大祭りの1つ。

同寺は40年近くにわたりくじを発売、売上の一部は例年、祭りの運営費用に充てていた。

同寺によると、今年の売り上げは約2000万円だった。

 中谷住職は「青天のへきれきだ。犯罪になるとは知らなかった。くじがなくなったら祭りは今年で終わりにする」と反発している。

 調べや関係者によると、圓隆寺は祭り開催期間中の1日から3日間、境内で25万円相当のハワイのペア旅行券など高額商品から250円のふりかけまでが当たる1個500円のボール型の富くじを発売した疑い。

 県警によると、今年は約22万人が訪れた。

 

【ツッコミ】

 法律家ならぬ和尚さんがご存知ないのも無理からぬことですが、富くじ発売に関する罰則は刑法187条に規定されています。

この条文によると、

  発売者  2年以下の懲役または150万円以下の罰金

  取次者  1年以下の懲役または100万円以下の罰金

  購入者  20万円以下の罰金または科料

けっこうシビアな罰則です。

「射幸心をあおるとはなにごとか!」という儒教精神の産物とも言えます。

 

 じゃあ、宝くじやナンバーズはどうなのか?というと、こういったもの(正式には「当せん金付証票」といいます)は「当せん金付証票法」という超マイナーな法律によって規定される、地方自治体の収入源として認められたもので、刑法で規定する「富くじ」の適用除外となっています。

つまり「宝くじ」とは、都道府県や政令指定都市、あるいは戦災等による復興資金調達のために総務大臣が認めた市が発売元となり、特定の金融機関(現在はみずほフィナンシャルグループの第一勧業銀行)が販売委託を受けて発売されたものだけを指し、それ以外のものはすべて「富くじ」として処罰の対象となります。

したがって、「とうかさん」の富くじも当然処罰されることとなります。

前述の刑法では上記のような罰則でしたが、「当せん金付証票法」第18条の罰則では、10年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。

 

 でも、なんで今さら取締りに動いたんでしょうか。

この「とうかさん」の富くじ自体も40年続いていて、これまで何のおとがめもなかったのに。

 

 そもそも宝くじは、寺社の勧進(伽藍や神殿の建築資金調達を目的とした寄付の募集)の一形態として始まった「富くじ」が前身です。

この富くじ、とうかさんの40年はおろか、370年の歴史があると言われています。

これに対して宝くじそのものが始まったのは昭和21年、前述の「当せん金付証票法」は昭和23年の施行です。

 別に「古い方が強い」というわけではありませんが、40年も摘発せず、今年になって摘発に動いたというのは、何らかの思惑が働いたとしか思えません。

もしかして、この財政難のご時世ですから「とうかさんの富くじを禁止すれば、その分同時期のグリーンジャンボ宝くじの売り上げが上がるんじゃないか」なんて単純に考えて取り締まったんじゃないでしょうか。

そうだとすれば、救いようのないバカな行政行為です。

たとえこの富くじが全額宝くじに移行したからといって、その売り上げ増加額はたかだか2000万円。

しかも自治体の収入となるのは売り上げから当せん支払金や販売手数料を差し引いた残りの収益金ですから、2000万円まるまる懐に入ってくるわけではありません。

しかも「グリーンジャンボは「全国自治宝くじ」ですから、47都道府県と政令指定都市を合わせた50以上の自治体で売り上げに比例して収益金を按分します。

ということは、富くじの禁止によって広島県の財政が潤う程度というのはホントに微々たるものです。

 

 これに対して和尚さんは「富くじができないならとうかさんはやめだ!」と言っています。

「とうかさん効果」による客足は22万人。

祭りに乗じた客単価を2000円と見積もると、参道や周辺地区への経済効果は4億4000万円です。

住民税や法人事業税、消費税など地方税分を5%と見積もると、広島県や広島市の税収は合計で2200万円。

富くじを取り締まるよりも大きな財政貢献となります。

こういうのを昔から「角を矯めて牛を殺す」といいます。

 

 大目に見てやれよ、広島県!