インスタントの値上げ年内せず
ネスレ日本
(日経新聞2011年9月1日12版企業2面)
【記事抜粋】
ネスレ日本は31日、インスタントコーヒーの値上げを2011年中は見送ることを明らかにした。コーヒー豆の高騰で今春に値上げした際、秋口の再値上げを検討するとしていた。製造や物流でのコスト削減で原材料高を一定程度吸収できたことが大きい。
(以下略)
【コメント】
コーヒー豆の高騰がどの程度のものなのか、ニューヨークのコーヒー豆先物価格の推移を追ってみました。
昨年8月30日の終値が1ポンド(450グラム)1.8ドルでした。
ネスレ日本が前回値上げを実行したのは今年3月1日ですが、2月末での先物価格終値は2.72ドルと、ほぼ1ドルも高くなっていました。
ちなみに今年8月30日の終値は2.85ドルと、上昇幅はある程度緩やかにはなっている様子です。
一方、この間の為替相場の推移は?というと、昨年8月30日が1ドル85円、今年2月末が81円、そして今年8月30日の相場は76円でした。
この3つのタイミングでの価格を円換算してみると、
昨年8月:1.8ドル×85円=153円
今年2月:2.72ドル×81円=220円
今年8月=2.85ドル×76円=216円
つまり、コーヒー豆の国際価格は一貫して上がり続けているのに、日本では円高の影響が挟まって、欧米よりもコスト負担が軽減される効果が働いています。
このためネスレ日本では年内の再値上げをしなくても大丈夫と判断したようです。
これは当然小売価格の据え置きにもつながるため、消費者としては単純に歓迎すべきニュースです。
日本経済に対するマスコミの「常識」は、「日本は輸出主導のマクロ経済メカニズムなので、円高では外国から受け取るお金が目減りしてしまうのでダメ」というものです。
確かに企業活動=供給側の目線では、輸出額を3割増やすほど頑張っても、2割円高になってしまえば、結局手取り収入は1割弱の増加にとどまってしまい、とてもむなしい疲労感ばかりたまってしまいます。
しかし、企業の中にも輸入した品物を日本国内で販売している企業もあります。
現在の人口やGDP(個人消費60%、海外収支の儲け2%)からいっても、まだまだ円高は悪いことばかりではなく、小さくないメリットも提供しています。
今は昔、中曽根内閣や竹下内閣の時代は「内需拡大」を経済テーマに掲げていました。
「日本人は外国製品をたくさん買いましょう!」と言っていたわけです。
今はネットを利用して個人が気軽に外国の商品やサービスを購入し、円高メリットを活用しています。
さらに純日本の会社や商店でも、日本人が外貨で支払いすることができるという選択肢も広がっています。
「円高=日本が危ない」というキャッチーなマスコミ見出しは、あまり正面か深刻に受け止めない方がいいでしょうね。
【今日のポイント】
日本人は世界有数の順応性の高さを誇る。
円高は円高なりに、ビジネスで、賢い消費で、上手に活かすことができる!