相続基礎セミナー

 

課税財産と非課税財産

 今回「相続税」について少し触れてみたいと思いますが、ぶっちゃけた話、数ある日本の直接税の中で最も庶民に縁遠いのがこの相続税です。

なにしろ平成27年の相続税法改正によって基礎控除額が4割削減されたとはいえ、相続税の課税対象となった被相続人は、その年に死亡した人の5%程度といわれます。

つまり、日本国民の95%は相続税とは無縁の世界に生きているということになります。

これは別に日本人がみなビンボーだからというわけではなく、相続税では所得税の比較にならないほど大きな非課税枠が認められているためです。

とはいえ、現金資産はそれほどなくても自宅の不動産評価がベラボウに高ければ、一般サラリーマンでも相続税を納付しなければならない、ということにもなりかねませんから、あくまでも基本の部分を押さえる程度に説明をしていきたいと思います。

課税対象財産

 まず、相続税計算の基礎となる財産ですが、原則として死亡者=被相続人の財産が課税対象になります。

しかし被相続人から承継したものでも非課税となるものがあり、被相続人が直接残したものではないが課税対象となるものもあります。

課税対象となる財産は主に次のようなものです。

 今度は課税対象とならない財産を挙げてみましょう。

 以上を踏まえて課税財産を算出すると次のようになります。

  本来の財産

+ みなし相続財産

+ 死亡直近3年以内の贈与財産

− 非課税財産

− 弔慰金非課税分

− 死亡退職金非課税分

− 生命保険金非課税分

− 債務

−)葬式費用      

  課税相続財産

 

基礎控除

 相続税の最大の特徴は「基礎控除が大きい」ことにあります。

どれだけ課税財産から引けるかというと、「3000万円+(600万円×法定相続人)」という巨額なものです。

前述の法定相続人3人で計算すると、実に4800万円となります。

遺産がこれ以下なら相続税はかかりません。日本人の95%が相続税と無縁なのもここに理由があります。

 

その他の細かい調整

 遺産総額がはっきりしたら、各法定相続人の法定相続分に相続税率を掛けて「とりあえずの」各自納税額を計算してそれらを合計し、相続税の総額を算出します。

その総額について実際に各人が相続した割合を掛け合わせて実質相続税額を割りだします。

 各人の相続税額に対して加算や控除を行なって最終的な納税額を決定します。

 このように相続税は、最終的に相続人が1人ずつ納付するもので、その世帯に一括して課税するとか、代表者がまとめて納付するとかいったことはありません。

 ここで主な加算・控除を挙げてみましょう。

 

実際の相続対策は生前贈与も活用して

 以上大まかに相続税を見てきましたが、実際の相続対策では「生前贈与」もうまく活用することが考えられます。

たしかに贈与税は相続税に比べて基礎控除も少なく(110万円)累進率も急カーブで、一見すると贈与税を払うのは不利のように思えます。

 しかし、毎年111万円ずつ贈与して意識的に1000円納税することで贈与の記録を確実に残せば、10年で1110万円の財産移転が可能となります。

相続財産も1110万円減るわけですから、トータルすると1万円の贈与税を払って、160万円の相続税を節約できることになります。

 また、結婚して20年以上のベテラン夫婦であれば、現在居住している住宅および土地のうち2110万円の部分を贈与して共有名義に書き換えれば、贈与税の特典として非課税で相続財産の分散が可能です。

 その他、子のマイホーム資金を援助する場合の贈与税軽減措置を活用するといった方法もあります。

 

必要な相続対策は「節税」よりも「争族」回避

 最後になりますが、冒頭で述べたとおり、一般の生活者が相続税の納付で頭を悩ますことはまずないでしょう。

 しかし、よほど孤独で無一文でもない限り、自分に万一のことがあれば何人かの相続人が存在し、なにがしかの財産を保有しているはずです。

基礎控除や非課税枠の活用で相続税は発生しなくても、誰が何を受け取るかで身内にトラブルが発生することがないとは言い切れません。

 法定相続人となる家族が2人以上いる場合には、きちんと「遺言書」を作成しておくことをオススメします。

草場の陰から骨肉の争いを見るというのはあまりいい気持ちにならないでしょうから。

 

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