発表会を見て

鳥羽 美千子
♪ うちっていいな うちっていいな
  ほんのり匂いが甘くって
  そろって ごはんもおいしくて
  だから だから だから
  うちって 大好きさー  ♪
子どもたちの大きな声が今も耳に残っています。
発表会が終わって二日。
今も忘れられない子ども達の明るい楽しそうな声でした
この歌をいっしょに歌いながら我が子にとって 「うちっていいな」 と言いきれる我が家だろうか? 子どもに問いかけられるような気がしました。
振り返ってみて、この一年、我が家には大事件がおきました。
末っ子の哲平が、お医者さんから “自閉症” だと診断されたのです。
2歳までは順調に育ってきて、何の心配もしていなかったのですが、2歳過ぎて急に何もしゃべらなくなり、目も合わなくなりました。
「自閉症ですね」
大学病院でお医者さんから診断を下された日のことを、私は忘れることができません。
先生の前では気丈に我慢できた涙も、帰る途中、旭川の土手沿いの道では止めることができませんでした。
その日から、我が家の生活は、哲平の障害を良くするには、どうすればよいか? という事一点にしぼられていたような気がします。
皆の目がその事に集中して、優樹の事は二の次、三の次だったと思います。
まだまだ小さい優樹はもっともっとかまってほしかったことでしょう。
私自身ですら、自らの気持ちの不安定さをどうすることもできず、ストレスを主人や子どもに思わずぶつけてしまったこともありました。服の脱ぎ着や食事のこと、排尿排便もすべて一人ではできません。時には夜泣きががあったりと、ゆっくり休める時もありません。
そんな風でしたからから、優樹にはしっかりかまってやる気持ちの余裕もなかったように思います。
心の中では、ごめんね、ごめんね、と思いつつ、
「ゆうちゃんは大きいんだからね」とか
「がんばってね、できるでしょう」と言ってしまう私でした。
発表会の日、皆にまじって真剣に頑張っている優樹を見たとき、胸の底からジーンとくるものがありました。
親はこんなにもいいかげんでも、子どもはしっかり育ってくれて・・・。
ありがたいことです。先生、本当にありがとうございます。
優樹は頑張りました。
跳び箱6段を軽々跳べました。
『やっぱり パパの子だ』
なわとびのケンケン跳びでは皆の大爆笑をさそいました。
『やっぱり ママの子だ』
最後に「友達ならば」で、涙がまたこみあげてきました。選曲がにくい、にくい。
子ども達が伸び伸びと演じていて、どの子もこの子も可愛くて、子ども自身が楽しんだ発表会でした。
楽しい楽しい高月幼稚園とも、もうすぐお別れです。
♪ 幼稚園ていいな
  みんなの心がとけあって
  ぽっかり希望もふくらんで
  だから だから だから
  高月幼稚園って 大好きさー ♪
     (「ほほえみ」 高月幼稚園 PTA新聞 第35号 より 1990.3)
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