sorry,Japanese only

平成10年7月3日

第 3 号

岡山県自閉症児を育てる会


目次

少し真面目な話なのですが
Cooking(カレーを作ろう)
公共機関を使った一泊旅行
第1回 勉強会のご案内
事務局移転のお知らせ
IEP調査研究報告会に参加して

 梅雨空が続きますが、あの雲の上にはもう夏の太陽が子ども達を真っ黒に焼いてやろうと、手ぐすねをひいているようです。
暑さに負けないよう、雨にも湿気にも、世間の無理解にも負けないように、もうひと頑張り...でも、疲れ過ぎないように、ちっちゃな声で“ ガンバ・ガンバ ”自分だけに聞こえるくらいの声で頑張りましょう。

 育てる会では行事が目白押し。水あそび、クッキング、一泊旅行の他に、勉強会、座談会ももっとやってほしいとの希望もあり、世話人は早々と息切れ状態です。お手伝いしてくださる方、大募集中です。事務局までご一報下さい。

 さて、少し真面目な話なのですが、先日の座談会に参加された方は御存知のように、今、自閉症児を持つ親にとって見過ごしできない様な本が県内で販売されています。

自閉症児は母親から十分言葉をかけてもらわず育ったために、言語の要である左脳の働きがうまく機能しないのです。
自閉症児は学習障害児です。0歳から1歳のときに、ほとんど手をかけず、言葉を学ばせず、放っておいたために、急速に学習に対する意欲を失ってしまい、学ばなくなって学習障害を起こしているのです。」(七田 眞:著 PHP研究所:刊

 こんな「自閉症は親の育て方のせいだ」と言わんばかりの本が、現在の岡山で、しかも生協の共同購入で販売されている、という指摘が以前からあり、座談会の席でも問題提起されました。出席者の間では、自閉症児を持つ親として何らかの行動を起こすべきである、との意見でまとまりました。

 岡山市民生協に対しては、自閉症協会の岡山県支部長さんより、対応しようとの御返事をいただいております。
次回の支部理事会で考えようと言っていただけているので、それを期待して待ってみようという状態です。

 育てる会としては、それ以外にも著者の七田眞氏や発行元のPHPに対してもどのように対応するか、皆で考えていきたいと思います。


 Cooking(カレーを作ろう)

うっとうしい梅雨のまっただ中、皆様いかがお過ごしでしょうか。
4月には緊張した面持ちで、入学、進級した子供たちも日増しにたくましさを増し、あっという間に1学期を終えようとしています。
そして長い長い夏休み・・・・育てる会としても、夏休みには子供たちにいろんな体験をさせてあげたいと考えています。

 ずは、親子で楽しく Cooking(カレーライスを作ろう)を企画しました。たくさんの方の参加をお待ちしています。

日 時:平成10年8月1日(土) 10:00 〜 13:00
場 所:「ゆめトピア 長船」邑久郡長船町土師277-4   Tel.(086926)8001
持ち物:エプロン・三角巾・お米 1人1合・お茶(生水は飲まない様にしましょう)
    ・子供用の包丁、またはピーラー(ある人のみで結構です)・ふきん
参加費:一人につき500円

その他: ○衛生面には十分注意して下さい。(あらかじめツメを切る。手洗いなど・・)

      ○グループ分けをします。
        料理に入る前に各グループで分担等の話し合いをして下さい。

      ○子供さんから目を離さないで下さい。(調理室には危険なものがたくさんあります)

食事を作るという活動には、子ども達にとって大事なあらゆる学習課題が含まれています。
まず、身体的には、手先の器用さ、供応動作、目測、弁別力、形態知覚などの陶冶ができます。
知的には、家庭で使用する道具の名前や使用法が分かったり、料理に使う材料の名前を覚えることができたりなど生活が広がります。
また判断力、見通しなど、かなり頭を働かせなければできない場が多くあり、賢い生活の仕方を身につけることができます。
精神的には、注意力や集中力を養うことができます。
さらに偏食が改善されたり、多動が少なくなったり、落ち着きが出てきたり、親とのコミュニケーションが取れ出したり、情緒が安定してきたりなど、効果をあげればきりがありません。
   上岡一世著『こうすれば伸びる 自閉症児の指導法』より

 この本は「社会的自立という目標は絶対に放棄しない」という観点から、身辺自立から、教科指導、生活の自立のための指導まで、具体的な指導法が丁寧に書かれてあって、事務局イチオシの一冊です。
 実際の指導の、具体的ノウハウにお困りの方にはぜひどうぞ。(明治図書:本体 1,220円 税別)

と、いうわけで、今回の例会はクッキングにチャレンジです。
あくまで、子ども達全員がカレー作りに参加するのが目的ですので、一人ひとりに、お母さんが個別的目標を決めて取り組ませてあげてください。
 参加される方は、お母さんから見て子どものやれそうな事、やらしてみたい事などの別紙のアンケートに記入して下さい。
それぞれ子どもさんの出来ることを組み合わせてグループを作り、みんなで楽しくカレーライスを作って食べたいと思っています。


公共機関(電車・バス)などを使っての小旅行

   街へ出よう  みんなで歩こう

 私たちは今まで、どこに行くのも自家用車を使ってばかりだったように思います。
確かに、多動で、いつパニックを起こすかわからない子を連れての外出に際しては、車の閉ざされた空間で、しかも家族でしっかり囲んでの移動は、安全ですし、なにより心おだやかでした。いきなり走りだして行方不明になるおそれもないし、奇声を発してまわりから白い眼で見られることもありません。
 安心の家庭の居間からの延長です。

 またバスを使っての旅行でも、ともすれば貸切バスによる集団旅行を望んでいたように思います。障害児同士の貸切りなら、一般のお客さんに迷惑をかけることもないし、いくら騒いでも“お互い様”と、付き添う親同士も気楽に過ごせました。

 でも、それでいいのでしょうか。このままで本当にいいのでしょうか。
子どもたちは街の中で暮らしています。そしてこれからも、みんなの中で暮らしていきます。

 そのためには、子どもたちが街に慣れ、街も子どもたちに慣れ、そこに居るのが自然なように、あたりまえの風景になるように・・・・。
今、この子たちを街に連れて出でなければ、このさきも、子どもたちと街が離れたままになってしまう・・・そんな思いから、公共機関、公営の宿を使っての小旅行を企画しました。

 まずは自家用車から降りて、駅に向かいましょう。自分でお金を入れてキップを買います。
知らない人の間で揺られながら、ガタンゴトンと列車は海を目指します。駅に着いたら、今度は路線バス。整理券を取って、空いた席に座ります。岬の停留所で降車ボタンを押したら、今日の宿、鷲羽山ユースホステルに到着です。

 こんな風に、すんなり行くとは思っていません。
なにしろ新しい環境が苦手な自閉症児たちです。パニックを起こす子もいるでしょうし、ボランティアさんがいなかったらお母さん方、トイレにも入れません。(残念ながら、まだ外でおとなしく待っていてくれる子たちではありません。)
 でも、そんな新たな問題を引き起こし、新しいハプニングを経験し・・・それになんとか対処していくことで、子ども達にも、そして周りの街にも、新しい地平が開けてくるように思います。
 もうひとガンバリ、頑張りましょう。

 翌日は、四国の金刀比羅様の階段に親子でチャレンジです。いまこそ『療育的山のぼり』で実践してきた成果の見せ所です。
「立ち止まらせない」「先走りさせない」・・・べからず集を守って山に登ってきた子ども達です。みんな上まで登りきれるでしょう。(お母さん方の体力は少し心配ですが・・。)
ヤッタネ!! とみんなでエールを交わして、岡山に帰って来ましょう。


先日の創刊号でお知らせした、夏休みの一泊旅行のアウトラインが以上のように決まりましたので、参加者の募集を始めたいと思います。
日 時:平成10年8月22日(土)・23日(日)
宿泊地:鷲羽山ユースホステル(現地集合)
      みなさん、公共機関を使って、自力で集まりましょう。
      できればキップも本人に買わせましょう。
費 用: 大人 3,000円  子供 2,000円
      ボランティアの必要な方は、申込時に申し出て下さい。
初日は遊覧船をチャーターして、瀬戸大橋見物です。人ごみの中、頑張って集まった子ども達、ここではゆっくりくつろぎましょう。
夜には子どもを寝かせた後(うまく寝てくれれば)、ゆっくり悩みや将来の事など話ができれば、と願っています。
・・・すべては子ども達次第ですが・・・。
翌日は、金刀毘羅様まで足を伸ばし、療育的石段のぼり(?)に挑戦です。
 実は、今回の企画、少しでも参加者の負担が軽くなればと、キリン福祉財団(キリンビール)に補助金の申請をしていました。
このたび、“
自閉症児にとっての先駆的試み ”と認められ、補助金がいただける事になりました。お母さん方には、少々きつい日程かもしれませんが、そこは元気なお父さん達や若さのボランティアの方におまかせするとして・・・・。
 申し込みは、7月中に事務局まで。YHの定員(58名)が決まっていますので、応募者多数の場合は抽選になるかも知れません。お早めに。

第1回 勉強会のご案内

 先日の、座談会のアンケートでは、こんな集まりが隔月〜一学期に一度くらい持てたら、という意見が多かったのですが、それと同時に、イベント的な行事ばかりではなく、月1回くらい、自閉症のことや、将来のことを勉強して行きたい、という話もでました。

 そこで、さっそく準備のあまりいらない「勉強会」の方からスタートすることにしました。場所も自前の事務局で(これを機に、事務局を移転したいと思います。詳細は次項で)、たとえ少人数でも良いですから、集まれる人だけ集まって始めようと思います。

 もちろん、講師をお願いする余裕もないので、最初は書籍や資料を題材にして親同士が意見を出し合い、勉強して行くことになると思います。

 第1回の勉強会の資料は『ライフサイクルの視点から〜自閉症の子をもつ家族の課題を考える〜』(志賀利一 氏)の小冊子を使いたいと思います。(氏のインターネットのHPからプリントアウトさせていただきました)

 この冊子は自閉症児の年齢を5段階に分け、それぞれの段階で特徴的な出来事、生じる課題及びその対処法を解説しています。

「このテキストを読めば、今あなたが抱えている課題に対する対処法が分かるだけでなく、今後抱えるであろう課題の予測もつきます。ライフサイクルの視点を得ることで、将来の見通しをポジティブにとらえましょう。」(概要紹介より)

では、冊子の中で「5〜10歳」の家族の課題から二つほど紹介します。

『自閉症の子にとっての不満のない理想的な教育(療育)環境は、どこにもありません。有名な米国ノースカロライナ州でも、親のほとんどが不満を持っているのです。子どもの今の家庭とその地域が、子どもにとって最良の育つ場であると、認めましょう。』
(そう、今、ここから始めましょう)
『専門家は一時期利用する資源なのです。今の先生には、ほとんど託せるところがないからといって、子どもの一生すべてが恵まれないわけではありません。また、今は未熟ですが、その先生は将来大切な資源に成長するかもしれません。子どもが一度に身につけられることに限りがあるのと同じように、専門家も1年で身につけられることには限りがあります。「先生の成長を見守る」位の余裕があればベストです。』
(先生、いっしょに勉強していきましょう)

勉強会の日程について

日 時:平成10年7月10日(金) 10:00 〜 14:00
場 所:育てる会 事務局
持ち物:弁当・お茶
申込先:事務局まで
参加費:100円
資料代:実費(第1回 冊子9ページ 100円;コピー代)

事務局移転のお知らせ

 上記でご案内した、勉強会などを開催するため、事務局を従来の世話人鳥羽美千子宅から、近所の家に移すことにしました。
一軒家ですが「山陽こども劇場」の事務局と折半して、お互い事務局として使用することになります。

書籍や資料なども用意しておきますので、自由にお使いください。

岡山県自閉症児を育てる会事務局
〒709-0826  赤磐郡山陽町和田806
Tel. Fax. (08695) 5 - 3162、E-mail teppey@mx3.tiki.ne.jpです。
             

IEP調査研究報告会に参加して

鳥羽 俊郎 
先日、「個別教育計画(IEP)の基本と実際」というテーマで、セミナー(主催:旭川荘バンビの家)が開催されましたが、出席できなかった方のために、今後のヒントになりそうな話を2〜3紹介させていただきます。
 まず、1点。生活情報とニーズの具体的把握。私たち親は子どもの事を一番分かっていると思っています。でも考えてみると、漠然と、なんとなく分かっているつもり、だけの事が多いようです。
 生活地図(どこへ、誰と、どうやって、どのくらいの頻度ででかけているか)や、一日の生活スケジュール、指示別(実物、絵や写真、動作、文字、言葉など)理解のレベルなどを、改めて表にまとめてみると、本人の今の状態や問題点がみえてきます。
 次に生活面、学習面、行動面ごとに、親としての希望を具体的に列挙し、それに優先順位をつけた表を作成してみると、今すぐやらなければならない事がみえてきます。
 学校でも、先生がそれを参考にして我が子のためにIEPを組んでいただければすばらしいのですが、それを待っている間も子どもの成長は待ってはくれません。その表の中から、家庭でも指導できそうなものを自分で選んで、我が家のIEPを早速始めましょう。(実際の表の作り方などの詳しい資料は事務局においてあります。)
 次に実際の指導にあたってのヒント。できていない理由を知識、技術、社会性の三つに分けて考えてみる事。
知識と技術、これは課題をスモールステップに分解して、一つずつ地道に教えていくことによって解決を図ることになるのですが、問題は社会性。
 要するに、「やれるのにやらない」、という場合です。
 ここでのキーワードはコミュニケーション、そう自閉症児が一番苦手な分野です。ここはTEACCHの技法などの助けを借り、絵カードやスケジュール表、強化子などを駆使して、なんとかクリアーしましょう。
 個別教育計画、その目的は一人ひとりの子どもにとって、生活の幅を広げ、本人と家族が地域の中でより幸せに暮らしていく為のものだそうです。
 6月27日のセミナーに集まられた方の、8割以上が学校の先生方だった様です。岡山でも、同じ思いの先生方が増えてきたようで、嬉しいかぎりです。 協力して、子ども達のために、より充実したIEP作成に取り組んでいただけたらと願っております。

これまで「育てる会会報」はHPに全文をUPしていましたが、容量等の事情により、一部抜粋にさせていただいています。

今後は、会報は会員の方への郵送でお届いたしますので、ご希望の方は賛助会員に申し込みをお願いします。
詳細は「
育てる会 HP」に記載しています。

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