sorry,japanese only

光とともに・・・ 〜自閉症児を抱えて〜 5

戸部 けいこ:作 秋田書店 定価:760円 + 税
ISBN4-253-10443-6 C0979 ¥760E


自閉症と告知を受けてから、もう10年近く・・小学校5年になった光くんです。

「私だって・・・けしてうまくいってるわけじゃないよ。1年生の時の悩みは少しずつなんとかなってきてるけど、5年生には5年生なりの悩みがあるんだよ」

 ハタから見ると、幸せに育っているように見える子育てでも・・なにしろ、我が子は自閉症児です。なまはんかなものでないことは、自閉症児を育てている親同士、言うまでもなくおわかりのことですね。

 
今回の物語の中でも、思春期のこと、きょうだいのこと、嫁姑のこと・・・確かに、健常児でも同じ種類の悩みはあるかも知れませんが、それをはるかに越えるような大きさで事態が次から次へとおこってくるのが、自閉症児の子育てですね。そして、自閉症児の子育て場合には、その障害の特性を理解した支援が欠かせないことになります。

 本書の中にでてくる、コミュニケーションを引き出すためのVOCAや時間を視覚的に表すQHW(クォーターアワーウォッチ)などもそのための支援機器の一つです。
でも、子ども達を育てていて、なにより必要に思うのは、自閉症のことを理解して支えてくれる周りの「人」の存在ではないでしょうか。
もちろん、最初からそんな理解ある人たちに恵まれている人は少ないです。「光とともに・・・」のお母さん幸子さんにしても、最初は一番身近な「夫」から始めて(第1巻の頃、今から思えば懐かしいですね)・・少しずつ少しずつ、その輪を広げてきて、やっとたどりついた小学校高学年です。

 また、その幸子さんにしても・・・

「 光があんなに楽しそうに過ごしている。花音(かのん:妹)が安心しきった目で私を見てる。早くこうしてあげればよかった。
泣いてる花音やかんしゃくおこしてる光を見るたび歯がゆくて切なくてどうしようもなかったよ。
でも方法がわからなかった。・・知ってても使わなかった。
もう少し早く・・・ 家族以外の人に助けてって言えば良かった 」

「何が何でも自分一人でって思わなくていいんだよって。涙 でちゃった。
私も助けてもらうばかりじゃなくて ほんの少しの時間でも何かお手伝いしたいわ」

幸子さんと光くんが ”NPO法人 おひさまハウス”を初めて利用した時の思いです。

この本を手にした方の周りでも、現実にそんな輪が広がっていくのを願っています。


 

 

 

 

 

 本書のあとがきの中で、自閉症児「ポンすけ」くんを育てながら司法試験に合格し、弁護士として障害者支援に携られた阿部真理子さんも書かれています。

「障害ある子供を授からなければ、おそらくその場限りにしか向かなかった目線が、子供の未来を作るため、5年という近い将来、10年というより遠い将来、そして子供たちが成長するもっと先の未来、というふうに広がっていく。

全国各地でそんなふうに活動されている方々を見るたび、どれほど「ポンすけはこれから先も大丈夫」という勇気を持つことができただろうか。」

その、阿部さん、実はこのあとがきを書かれたのは自らの癌との闘病中で、退院と再入院との間のわずかな時間でした。

ポンすけくんは、まだ光くんと同じ小学校の高学年・・母としての思いは切ないまでもあふれながらも、やがてポンすけくんを母に替わる人へと託さなければならなくなるのを・・心の中で覚悟されていたのかも知れません。

ポンすけくんやみんなへの、最後のメッセージを伝えたあとがきの載った本書の出版を見届けるように、先月1月半ば、還らぬ方となってしまわれました。
幼い我が子、しかも自閉症というハンディを持つ子を残して・・その思いを自分に置き換えたとしたら・・、涙が止まりません。

「親がいつまで子供と一緒に生きていられるかはわからない。しかしその時に私がポンすけのそばにいられるなら、ポンすけに向かって、「おかあさんは、盛岡の最高にきれいな景色の中で、あんたを産んだんだよ。あなたは幸せに生きてゆける。産んであげて本当に良かった」と言ってやりたい。

そして私の命を継ぐ者としてのポンすけに、親亡き後も、生きていることの幸せを存分に味わってほしい。

できれば、親に替わる愛する人や支援者に囲まれて・・・・・・・・・・。」

 

ご冥福をお祈りします、心より合掌です・・・・

(「東方見聞録 AUTISM Vol.2」 2004.2 より)
日本自閉症協会岡山県支部 東部地区ニュースレター


「お薦めの一冊」目次へ