『 本は友だち 〜障害をもつ子どもと本の出会いのために〜 』
トーディス・ウーリアセーター:著 藤田 雅子・乾 侑美子:訳 偕成社
定価:1200円+税 (1989年3月)
障害をもつ子というと、私たちは
何か特別な子どものように考えがちです。
しかし、障害をもつ子どもも、
何よりもまず、あたりまえのひとりの子どもなのです。
そして、すべての子どもが本を必要としていますが、
誰にもまして必要なのは障害をもつ子どもたちなのです。
障害をもつ子の豊かな読書体験のために、
健常児と障害をもつ子の大きな架け橋となる本のために、
私たちは何をなさねばならないか ―
本書は、編集者・作家・画家・図書館員・先生など、
子どもと子どもの本にかかわるすべての人に訴える、
きわめて率直で具体的な提言です。
上に紹介されているように、本書は、障害をもつ子にとっても、本は大切なものであり、それはある意味健常児以上に必要なものである、という視点から書かれた本です。
障害には、知恵おくれ、肢体不自由、自閉症、聾、盲、弱視、脳性まひ、脳損傷など、数多くの診断がくだされています。
その全ての障害において、それぞれの障害に応じた「友だち」となるべき本が必要であるし、それを提供することが編集者・作家・画家・図書館員・先生など、その子に関わる大人たちに課せられた命題だと述べられています。
目の不自由な子には点字の本や音の出る本、カセットブックなど、弱視の子どもには大活字本、耳の不自由な子には手話や指文字をイラストした本、知恵おくれやことばの遅い子には単純で簡単な絵本などです。
自閉症の子どもの中には、話しができるようになる前に読み方をおぼえる子どもがいます。自閉症の少年や少女が、幼い頃うたってもらっただけで、わらべ歌や子もり歌を口ずさむことがあります。また、ことばだけでなく色彩やリズムそしてメロディーを楽しんでいる様子がうかがえます。
― これらのことを考えると、自閉症の子どもにとって絵本や歌の本がいかに多くの意味があるかわかります。たいていの人は、話しができない子どもを過小評価してしまいがちですが、心の中には歌や本を通して出会ったさまざまなことばがあるのです。
1981年にユネスコから出版された本ですが(日本で翻訳出版されたのは 1989年)、その時代にしては、自閉症児への対応についても一つの障害としてとりあげています。それは、著者のウーリアセーターさんがノルウェー国立特殊教育研究所の准教授であると同時に、自閉症児をもつ一人のお母さんであることによるのでしょう。
そうです、以前紹介した「マイ・サイレント・サン」の著者で、ダグトールくんのお母さんです。
よく、ダグトール君は静かに歌を口ずさんでいます。毎月第二週末に帰宅する(30歳まではグループホームからは毎週末帰宅していたのですが、33歳になった今は自立のために回数を減らされているそうです)彼のベッドの横には本が数冊積まれています。お宅に伺った時に会ったダグトール君はどこにいる時よりリラックスしていました。 (訳者:藤田 雅子)
生活の中に本がある、というのはこういうことなのでしょうね。
今、我が家の息子の部屋には本はアニメのジブリの本が数冊と、あとは本棚にはお小遣いを貯めて買ったお気に入りのDVDがぎっしり詰まっています。そういえば、子どもの頃から、絵本を見ていてもいっしょに見ようとすると、パタンと嫌がって閉じてしまっていましね。そして本よりもビデオがお気に入りになったようで、同じシーンをそれこそ擦り切れるまで見ていました。
あの頃、この本書を読んでいたら、もう少し違った子育てをしていたかもしれませんね。若干、反省です。
(2008.12)
目次
はじめに ユネスコ「本と読書の研究」編集委員会
1 障害をもつ子ども ― 一つの挑戦
2 障害をもつ子どもとは?
3 本と日々の生活
4 施設の子どもたち
5 障害をもつ子どもにふさわしい本
6 他の活動の出発点としての子どもの本
7 本に登場する障害児
まとめ
訳者あとがき ・・・・ 藤田 雅子
あとがきに代えて ・・ 乾 侑美子