sorry,Japanese only

『 いっしょにがんばろう 』
      
自閉症である弟の記録

谷田 百合:著 文芸社 定価:1100円 + 税
ISBN4-8355-0528-X C0095 ¥1100E


本書は、筆者の谷田百合さんが、茨城大学教育学部での卒業論文として書かれたものです。
そのため、前半は自閉症の一般論について、各種文献の中から抽出したものになっていますので、このあたりは元の書籍を読まれている方は斜め読みしていいと思います。
また弟の成長の記録も、卒業論文として文字数が限られているせいか、エピソード的なものだけになっています。まあ、卒論ではなくても、親の見る目と、きょうだいの目は違っているわけで、記憶の中では印象に残っているシーンが浮かんでくるのが当然なのでしょう。

後半が、メインテーマである買い物学習に移るわけです。学校で行っている買い物練習と違い、将来の地域での自立した生活をめざして、近所の商店で実際のお金を使って欲しいものを買い、買ったお菓子を食べられるという、はっきりした目標・楽しみのある学習です。
もちろん、どこの家庭でも取り組んでいることなのですが、卒論のテーマとして取り上げただけに、一日ごとの細かい記録と、それに対する考察が述べられています。
わずか、17日ほどの試みなだけに、「できるようになったこと」より、まだ「できなかったこと」の方が多いのですが、これからの家庭での取り組みの基礎評価はとれたのではないでしょうか。

今回のような短期間で、弟に何かを身につけさせるのは難しいと私は初めからわかっていた。しかし「お買い物をひとりでさせたい」という私たち家族の願いを実現する突破口になったことは間違いない。
障害者を持つ家族はどこでもそうであると思うが、何かをその子にひとりでさせたいと思っても、周りの迷惑を考え勇気が持てないことがある。しかし今回の指導で、適切な声かけや手助けをすれば、弟は買い物ができると知った家族は、どこのお店でも弟にお菓子の支払いをさせようとする勇気や自信が持てた。
このことは今回の指導の大きな成果だと思われる。

お買い物学習は本人よりも、家族にとって効果があったようですね。

ただ、市販の本として読むには、若干物足りなさを感じてしまったのも私の正直な感想です。元が論文なだけに、つとめて客観的な表現をとっており、姉としての視点があまり伝わってこなかったという印象を抱きました。
記録についても、これは“ボランティアさんの書かれた記録”と言われてても、違和感を感じなかったかったもしれません。
一つには卒論のためか、あるいは弟さんのプライバシー保護のためか、「弟」という普通名詞が最後まで使われ、「谷田さんの弟」というだけで、本人の姿がイメージできなかったせいもあるかもしれません。

元は卒論であっても、次に版を重ねる際には、そのあたりを考慮していただいて、姉としての思いの部分をふくらませて加筆いただければ・・・と願っています。

(2004.5)


  目次

はじめに

1章 自閉症とは何か

1 自閉症の症状と行動の特徴

(1) 極度の自閉的孤立
(2) 同一性保持の要求
(3) 言語の障害
(4) その他

2 自閉症の基本的な障害

(1) 知覚反応面の異常
(2) 運動面の異常
(3) その他

3 自閉症の定義と原因

(1) 自閉症の定義
(2) 自閉症の出現率と原因

2章 自閉症である弟の記録

1 弟の誕生と乳幼児期

(1) 満一歳頃まで
(2) 一歳から三歳頃まで

2 幼児期から学齢期へ

(1) 小学校入学まで
(2) 小学校入学から卒業まで

3章 自閉症児の自立

1 自閉症児の自立

(1) 自立とは
(2) 自閉症児の自立

2 弟の自立

4章 買い物についての生活習慣と自立

(1) 弟の状態像
     買い物をとりあげた理由(現状をふまえて)
     買い物に関する弟の現状
     指導の目標
(2) 指導の記録
(3) 買い物の指導全体から見た考察

5章 買い物学習から見える弟の世界

(1) できるようになったこと
     お金を数えること
(2) できなかったこと
     お金の大小価値の理解
     お金を出さない おつりを受け取らない
     あいさつ

あとがき

参考文献


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