sorry,Japanese only

『 風の翼の子どもたち 』
竹内 光春:著 同成社 定価:1748円+税 (1994年5月)
ISBN4-88621-114-3 C0037 P1800E

本書に登場するのは、主に脳性まひや難病による肢体不自由の子どもたちです。中には、微細脳障害と診断された子や、知的障害や自閉的傾向を持つ子どもたちもいますが、それも重複障害として障害です。
ですから、自閉症児の子育てについての本を探しておられる方には、少し違ってみえるかもしれませんが、大きな目で障害を見たとき・・・と、言うよりも、ひとつの子どもたちの関わりということで読んだとき、温かいものを感じていただけると思います。
昔から、障害児に関わる方々の中には、そのバックボーンとしてキリスト教の慈愛の心を持たれている方が多いですね。
本書に登場する「たけのこ先生」(筆者の竹内先生を「タケノコテンテイ」と呼んでいた徳ちゃんの命名だそうです)もそのお一人だと思います。
本文中には、宗教的な話はでてきませんが、文中に亡くなられた子どもたちを「帰天」と表現したり、なにより無私の暖かなまなざしの中にその精神を感じました。題名の「風の翼」も旧約聖書の詩篇104編からとられたそうです。
神が春の嵐のように、風の翼に乗ってやって来るわけですが、私は、この「風の翼」を人びとの心にある翼としてイメージしました。
心にある翼なら、知的障害でも、からだが不自由で寝ている状態であっても、自由に精神の世界を飛び回り、小さくとも、みずみずしい若芽の芽立ちができます。また、厳しい中にもそうした心から、人びとの援助によって、その人なりの自己表現という自立がもたらされることでしょう。
そこで、どうしても、私がふれあった「風の翼の子どもたち」のことをお聞かせしたくなりました。
第1章では、いわき市で教師のかたわら肢体不自由児施設にボランティアとして泊り込んで、そこで接する子どもの様子が描かれています。
第2章では郡山市の養護学校に転勤しての生徒の姿、第3章では東京の国立教育大学附属養護学校に赴任して最重度な子どもたちともふれあいます。養護学校義務化を控えた頃の話です。
本文では、最終節で、筆者がそれから取り組むことになる「トット&ポッポリズム運動」につながる受動的リズムに触れ、はじめて笑顔をみせた桃子ちゃんの象徴的なシーンで終わっています。
その後、筆者はオリジナルな歌と旋律と動きのある音楽&運動療法にボランティアとして関わっていくことになるのですが、それは別の物語となるのでしょうね。
今は、本書に登場する子どもたちの笑顔で終わりましょう。
(2002.5)

目次

第1章 丘の四季
  草色のチョーク
  手紙
  けんか
  コンビ
  野の花
第2章 風の野にて
  グミの木
  あけび
  一年生
第3章 いのちの海
  海ドボン
  さすらい
  微笑み

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