sorry,Japanese only

療育技法マニュアル 第13集
  
思春期の子どもと家族 ― 臨床事例から考える ―

平田 一成:監修 財団法人 神奈川県児童医療福祉財団


発達障害児、殊に自閉症児にとって、思春期は一つの難関です。
嵐のような、就学前の多動期を終え、“黄金時代”と呼ばれる学童期で一息ついたあとにやってくる、思春期です。この時期に突然崩れたり、てんかんの発作が現れたりすることも耳にします。
でも、誰もいきなり思春期になるわけではありません。

教育はその成果が出てくるまでに長い時間がかかります。
人の成長は時間の枠を超えることができません。

「自閉症児・者である前にひとりの人である」という前提をいつも確認しながら、彼らが人としての責任・役割・義務を果たせるように関わることが私たちに求められていると思います。
同時に、彼らの世界や文化をも認め、彼らを私たちの土俵に引っぱりこむことだけを目的とした働きかけではなく、彼らと私たちの世界の接点を見出す工夫も必要であると思います。
  (篁 一誠)

また、その働きかけについては、「毅然とした態度で接することが必要ですが、決して威圧的な態度ではなく、迷わずに短い言葉で肯定的で笑顔で 働きかけることが大切です。」
いつも忘れないようにしたい言葉です。

ここで少し整理すると、思春期的な課題につまずいている子どもの場合には、前思春期の課題を達成することが、そしてその前思春期の課題を達成するためには学童期の課題を達成することが重要になるということです。
学童期は潜伏期と言われ、あまり手のかからない時期と言われていましたが、思春期の臨床に携わっていると、もちろん幼児期も大切ですが学童期もとても大切な時期ではないかと思うようになりました。

いろいろな発達障害をもっている子どもたちにとっても、情緒障害の子どもたちにとっても、学童期の過ごし方が思春期のむずかしさを決めるように感じています。今後はこの手のかからない学童期へのアプローチが必要になると思います。   (青木 省三)

“黄金期”と思っていた学童期は、じつは“潜伏期”であったようですね。この時期を油断することなく、丁寧に関わっていくことが、次に待っている思春期の安定につながっているということなのでしょう。
心して日々暮らして行かなければいけませんね。

(2004.5)


  目次

はじめに

思春期を迎える発達障害児とその家族をめぐって ・・・・ 平田 一成

第1章 わが子の学齢期・思春期をふりかえって ・・・・ 大坪 節子

第2章 臨床事例

1 青年期での出会いをめぐって ・・・・・・・ 鈴木 啓嗣・青木 省三
2 Dくんと歩いてきた日々 ・・・・・・・・・ 篁 一誠
3 Eくんの成長と関わりあって ・・・・・・・ 佐藤 加津子
4 「わいせつ行為」を問題とされた事例 ・・・ 小出 太美夫
5 Jくんの入院治療 ・・・・・・・・・・・・ 林 雅次
6 てんかんをもつKくんへのアプローチ ・・・ 佐藤 隆一
7 注意欠陥多動障害を有する子どもの事例をとおして ・・・ 小林 隆児

第3章 事例から学ぶ

思春期における幼児期の意味 ・・・・・・・・・ 青木 省三

コラム:紹介したい本

『「移動文化」考 ― イスラームの世界をたずねて 』
『 自閉症:幼児期から成人期まで 』
『 愛はすべてではない 』
『 シーラという子 ― 虐待されたある少女の物語 』
『 子供の気質と心理的発達 』
『 子どもの心に出会うとき ― 心理療法の背景と技法 ― 』
『 自閉症の発達精神病理と治療 』


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