『 療育技法マニュアル 第2集
発 達 障 害 編 』
財団法人 神奈川県児童医療福祉財団
第1集「障害をもつ子どもたちへのアプローチ」に続く、第2集「発達障害編」です。
第1集は、脳性マヒなども含む障害一般を対象にしていましたが、第2集ではそのうちの発達障害に焦点をあてて、その療育マニュアルを深めています。
第1集に引き続いて、更に詳しく解説されている療法もあります。行動療法をベースにしたポーテージプログラムや、ダウン症児への早期プログラムの赤ちゃん体操法などです。一方で、第1集より、3年の日数が経過し新たな療育技法も加わっています。遊戯療法の紹介がなくなり、替わって登場したのがTEACCHプログラムや、のちの太田ステージとなる認知・表象機能の発達をめざす療育です。
中でも、TEACCHプログラムについては、その後もその有効性が療育の中で実証され、現在は大きく広がってきています。本書が出版されたのは、奇しくも息子 Teppeyが誕生した 1988年(昭和63年)でした。
その意味で、私たちは恵まれていたと時代に感謝しています。
こうすれば、たとえ自閉症という障害を持っていたとしても、安定して暮らしていけるという指針が見つかりはじめた頃だったからです。
先輩の方々には、この道を切り開いていただいたことには感謝の念は大きく、またそれゆえ申し訳ないのですが「間に合った・・」というのが正直な思いです。本書を手にとった時に感じた思いです。ここに、これから歩むべき道が書かれている・・そんな安堵を感じたのを覚えています。まさに「マニュアル」として、ありがたい一冊でした。
(2003.12)
目次
発達障害児・者一般の援助に役立つ技法
ポーテージ乳幼児教育プログラム ・・・ 山口 薫・清水 直治・土橋 とも子
1 ポーテージプログラムの開発の経緯
(1) 歴史的背景
(2) ポーテージプログラムの開発
(3) ポーテージプログラム日本版の作成2 ポーテージプログラムの特色と指導技法
(1) 強化
(2) シェーピング
(3) ポロンプトとフェーディング
(4) 消去
(5) タイムアウト
(6) レスポンスコスト
(7) 罰
(8) 般化3 「ポーテージ乳幼児教育プログラム」の構成
(1) チェックリスト
(2) カリキュラムカード
(3) 使用手引書
(4) 発達経過表4 指導の実際
(1) アセスメント
(2) 指導目標の設定5 指導計画の作成
(1) 課題分析
(2) 学習の前提条件
(3) 活動チャート
(4) 指導
(5) 評価
穏やかな治療・教育法 ・・・ フランク J.メノラスチーノ、ジョン J.マッギー 抄訳:大井 英子
「穏やかな治療・教育法」の紹介にあたって (抄訳者)
1 穏やかな治療・教育法の概要
(1) あたたかい穏やかな姿勢
(2) 好ましい行動に対する強化
(3) 好ましくない行動の無視
(4) 新しい行動づけ
(5) 間違いのない学習(成功の経験)とプラスの強化2 対象者の問題に対する理解の基本と治療者の姿勢
(1) 行動障害を伴う重度精神遅滞者 ― その行動特性に対する理解 ―
(2) 発達促進的な穏やかな態度・姿勢 ― 治療者(および家族、介助者など)の態度 ―
(3) 教育促進的抑制3 穏やかな治療・教育法の手順
(1) 間違いのない学習
(2) 新たな方向づけ
(3) 環境的な調整
(4) 援助を減らす (フェイディング fading )
(5) 個別化と訓練 / フィードバックの方法4 プログラム上の問題 ― スタッフの側に期待される事柄
(1) 一貫性ある計画とスケジュール
(2) 個別化
(3) 学習者とスタッフについての柔軟性
(4) スタッフへのフィードバック
(5) スタッフ間のよい関係5 プログラムを実施する場 ― 日常生活の場のなかに組み込まれたプログラム ―
6 向精神薬の使用について ― 行動療法と向精神薬のバランスのとれた併用を ―
ダウン症児を中心とする発達障害児の超早期療育のために
ダウン症児のための赤ちゃん体操 ・・・ 高口 保明
― 家庭ですすめる早期療育・育児法 ―1 ダウン症の赤ちゃんたちとのおつきあい
2 ダウン症児の療育についての私たちの考え方
3 生活充実法の3つの実践
(1) 赤ちゃん体操の実践
(2) あそびを充実させる実践
(3) 育児を充実させる実践4 家庭でするダウン症児の早期療育の実践
(1) ダウン症児の発達段階別につくった体操、あそび、育児のプログラム
(2) 実践プログラム表の使い方
(3) 実践時の注意5 さあ、赤ちゃん体操を始めましょう
(1) 体操を始める前にしておくこと
(2) 体操実践時の留意事項
(3) 絶対にしてはいけないこと
自閉症児・者のために
TEACCHプログラム ― 自閉症の治療教育 ― ・・・ 佐々木 正美
はじめに
1 親は共同治療者
2 診断と評価
(1) CARS (小児自閉症評定尺度)
(2) PEP (心理教育プロフィール)3 個別の治療教育プログラム
4 集団(クラスルーム)の教育プログラム
5 教師の訓練
6 言語やコミュニケーションの指導
7 家族の困難な問題と援助
おわりに
自閉症幼児の療育指導 ― 発達段階別指針と教材 ― ・・・仙田 周作
1 はじめに
(1) 自閉症児の転帰
(2) WISCからみた知能2 自閉症の障害の本質
(1) 自閉症についての神話
(2) 自閉症研究の歴史
(3) 自閉症の診断
(4) 自閉症の障害の構造
(5) 表象機能とは
(6) 障害の実態3 自閉症の療育
(1) 自閉症の治療目標
(2) 発達について
(3) 表象機能の発達
(4) ピアジェの発達理論
(5) 表象機能の中味
(6) 表象機能の評価
(7) 表象機能の発達段階
(8) 発達段階をおさえる意味4 自閉症の治療教育の実際
(1) 治療教育の次元
(2) 表象機能の発達段階ごとの療育指針と教材
1) ステージT<表象機能が認められない段階> へのとりくみ、教材
2) ステージ II <表象機能に芽生えが認められる段階> へのとりくみ、教材
3) ステージ III-1 <表象機能がはっきり認められる段階> へのとりくみ、教材
療育技法マニュアル1・2集の内容総合一覧