sorry,Japanese only

『 療育技法マニュアル 第6集
  
余暇と人間関係の開発 (Leisure Connections)

G.アラン・ロア研究所:著 大井 英子・八巻 純:訳 
財団法人 神奈川県児童医療福祉財団


「障害をもつ人々が地域で豊かな生活を送るために」と副題のついた本書は、カナダで実際に支援活動を行っている人たちがつくって、使っているマニュアルです。原題はLeisure Connections「余暇サークルへのつなぎ」といった意味だと思います。
その本書の書かれた目的をあらわす一文があるので紹介します。

人はだれでもその生活の中に、自分のことを配慮してくれる人がいることで、幸せになる。
人は他者から寂しく孤立し、隔離されているとき、すなわちだれとの“きずなも断たれている”とき、悲しく感じる。
もし障害をもつ人々の人生のなかに他人が絶えず出たり入ったりする状況について、もっと永続的な親しい仲間関係を作り出すことによって克服できるなら、かれらの余暇も次第に有意義な活動で占められるようになるだろう。

もちろん、我が子たち、自閉症児にとっては、「他人が絶えず出たり入ったりする」よりは、一人で過ごすための余暇の方が好きなようにも見えます。
でもそれは彼らが、人とのコミュニケーションが苦手なためであって、決して他人が嫌いという訳ではないと思います。
それについては、解説の中で訳者の大井英子氏も触れられています。

一人で過ごす余暇の大切さも本書で触れられていますが、いろいろな経験を共有できる友人ををもっていてはじめて一人で過ごす余暇も意味のあるものになるという指摘は、非常に重要な点だと思います。
一人でいることを楽しめるのは、それを選択できるからであり、だれも付き合う人のない孤立は、選択された孤独ではないのです。

こんな、本書で、内容も実際に支援にあたろうとするときのしっかりしたマニュアルですが、残念ながら、これをそのまま日本で使うことには少々無理があるかもしれません。それは、この運営のための基盤が支援にあたろうとするグループの中での、自由なディスカッションへを行うためのマニュアルだからです。
日本には、その自由な討論のための風土はまだ育っていないような気がします。カリスマ性を持った指導者に、みんながついていく・・というのが一般的ではないでしょうか?

でもみんなが考えを出し合って、みんなが幸せに暮らせるように、本書はその向かおうとするところの助けになるマニュアルであることは間違いないと思います。
付録についても、「余暇」というものの例示も豊富で、そういえば・・と思いつかされることも多かったです。

日本でも、私たちの周りでも、本書を参考にして、取り組めるところから取り組んでいきましょう。

(トチタロ)


  目次

刊行にあたって ・・・・・ 佐々木 正美

まえがき

ステップ1 余暇について
ステップ2 夢は願望である
ステップ3 夢実現の困難性
ステップ4 友情関係はいかに大切か
ステップ5 余暇と仲間:つながりをもつということ
ステップ6 余暇における困難性の克服と友人関係
ステップ7 計画を立てること
ステップ8 現実的な選択をひきだし、行動を起こすこと
ステップ9 役割の変化と対応
ステップ10 計画のその後

付録 A 私にとっての余暇とは・・・
    B 余暇の発見
    C 障害者にとっての余暇の困難性
    D 障害者にとっての友情の困難性
    E 友人関係の重要性
    F 地域での余暇活動の機会
    G 援助の実話例

参考文献

解説 − あとがきにかえて − ・・・・・ 大井 英子


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