sorry,Japanese only

『 続・自閉症克服の記録
       
社会参加 序章

山岸 裕:著 インデックス出版 定価:2200円 + 税
ISBN4−901092−37−5 C0036 ¥2200E


はっきり言って何を目的にして出版されたのか、理解に苦しんだ本です。
確かに、自閉症者として、この社会で生きていくことは困難を伴うことは間違いないでしょうし、山岸さんの味わったその挫折感もわかります。

ただ、ここに記されているのは、そのほとんどが個人的な非難と悪口の列挙で、読んでいて残念ながらとても共感する気持ちにはなれませんでした。
これを読んだ一般の方にとって、「自閉症への理解の助けになる」というよりは「自閉症者は自分勝手でとてもつきあう気にはなれない、怖い」 と思われかねないような印象を持たれるのではないでしょうか。
自閉症児の親である私ですら、最後まで読み続けていくのはかなり苦痛を伴うものでした。

筆者の前著の「自閉症克服の記録」の監修にも関わってこられ、本書でも「山岸 裕さんへの手紙」の一節を寄せられている日本自閉症協会会長の石井哲夫氏に、ホントのところ、どういう意図で本書を推薦したのか聞いてみたい思いがしてしまいました。

まして、本書で重要な位置をしめる、森口奈緒美さんとのメールのやりとりに関しても、書いてもいないメールの語句を勝手に捏造している・・と、森口さん本人から自閉症協会の掲示板で抗議されるにいたっては、ハァ〜もう何をか言わんや・・です。

本人が仕事に対する意欲をなくし、無断欠勤を繰り返したあと退職届けを出すにいたり、それを説得にきたジョブコーチを通して出した条件・・・

それはさておき、自分を散々振り回した会社に復讐する為、今度は自分が会社を振り回そうと思った。向こうが無理難題を言うなら、こちらも無理難題を言おうと条件をつけた。
それをジョプ(文脈からして、おそらくジョブコーチのこと)に渡して会社が受け入れれば復帰、受け入れなければ退職という事にした。
その条件を羅列すると、

(1)休み無しに仕事をする指示を出した事をF(上司)が詫びる。おわびに私の靴をなめる事。
(2)POP広告作業場の人員を増やす事。
(3)私がPOP広告作業場で使うパソコンを、今使っている旧式パソコンから、マウスが使えるパソコンにする事。
(4)客用自動販売機を使用する事を認める事。
(5)お客から私に「○○はどこですか」と質問されたら「うるさい!こちらは仕事を抱えていて、お前等の相手をしている暇はない」と暴言吐いて、客からクレーム来てもかばう事。

これらの条件を会社側は拒否して、後者の判断をとった。
会社は従業員を大事にする姿勢がない。そんな会社にいられるかという心境だった。

再度、問いたいです。何を目的として本書は発刊されたのでしょう。
世間に高機能自閉症者への反発を増やすためなのでしょうか?

「今回、山岸さんはたくさんの悪口と不平を書いた。それは、山岸さんが一つの壁をこえるためにはどうしても必要なことなのだと思う。それは、それでいい。」 (石井 哲夫)

確かに、個人的な文章として書き綴って、ストレス解消したいのなら、「それは、それでいい」でしょう。
でも、書店に並んで、一般の方が手に取る本としてはいかがなものでしょう。

その意味で、山岸氏というよりは、石井氏や出版社(インデックス出版)など山岸氏のまわりの、この本の出版に関わってきた非自閉症文化圏(つまり私たちと同じ、自閉症児・者に関わっている方の社会)の諸氏に問いたいです。

「何を目的として本書は発刊されたのでしょう。」

自閉症と非自閉症、お互いの文化を尊重して、自閉症児・者たちが生きていきやすい環境を作っていこうと活動している者にとって、この本はむしろマイナスの影響、お互いの文化の間に溝を作る方向にあるように思います。
申し訳ないですが、メールの改竄も発覚したことですし、できれば重版は行わないでいただきたいと、私には思えた一冊でした。


なお、森口さんから訂正のあった指摘箇所は、以下の通りです。
もし、この本を持たれている方は、森口さんの名誉のために訂正をお願いします。

(日本自閉症協会HP掲示板への、森口さんの投稿より)


『続・自閉症克服の記録・社会参加序章』(インデックス出版)に掲載されている、私「森口奈緒美さんのメール」とされている引用には幾つかミスがあります。

p.182の11,12行目
「前回『破れがさでもいいじゃないか、私も同感です』と言うメールに反応がなかったのは、あなたが共感したから、返信を送る必要性がなかったのでしょう。」

p.185の6行目
「ほんと非自閉症圏の人との付き合い方はわかりません。疲れます。」

同9行目
「相手の意図を察するのが苦手だから読めません。困ります。」

同12,13行目
「たった一ついえるのは自閉症者の悩みは、自閉症者に言った方がわかりやすいということです。非自閉症の人にはわからないということです。」

はいずれも、私森口の書いた文章ではありません。
(編集の段階で相手方のメールの内容が誤って混入したものかと思われます。)

なお、同書籍のp.180からp.185の「森口奈緒美さんとメールで対話」という章は全般に亘って相当編集されており、そういう意味ではその章全体がミスとも言えるものです。

お手元に上記の本をお持ちの方は、ぜひとも修正を宜しくお願い申し上げます。


今回の、当方のメールを無許可で掲載した件は、法律違反(著作権法第18条第1項で述べるところの公表権、著作権法第20条第1項で述べるところの同一性保持権、著作権法第19条第1項で述べるところの氏名表示権、および複製権、プライバシー件、他の侵害)で、告訴もできますが、自閉症の世間への理解のため、今回に限ってメール無許可掲載の件は許そうと思っています。

ただ、気持ちの上では許せても、社会的には許せないこと(もしくは、許してはならないこと、正さなくてはならないこと)はあると思います。

誤植や誤表記の類については、ミスプリントが一度世に出てしまった以上は、これからもこちらの掲示板や他などで定期的に公に告知させていただくことがあることはどうかご了解いただけるなら幸いです。


 

(2004. 5)


  目次

ガソリンスタンドの仕事をした時

ある事件がきっかけでクビ
仕事の紹介を断る

学園で強まる社会参加のうねり

社会参加のうねり
文集作り
C氏の社会参加に向けてのアドヴァイス
利用者の中小スーパー就職
戦後50年目の決断

上司Fとの出会い、就職して仕事に燃えた頃

大企業に就職
私の仕事
前向きに仕事していたあの頃
ウインドウズを消す事件
人との出会い

P子とのストーカー恋愛の思い出

好意をカン違い
P子との関わりの思い出
本を渡す
ストーカー恋愛の始まり
身だしなみをととのえる
このままではこちらにも覚悟がある
見舞い事件
P子の本当の姿

創価学会に走った私

学会に信仰するきっかけ
活動の内容と周りの反応
人事異動で理解のある人が転勤するという事について考える
学会の仲間は暖かった
自転車で骨折
妄想が休職までいたらせる
K・Q氏は見抜いていた

グループホームに移行した頃

休職して周りへの気遣いはなかった
復帰してグループホーム移行
〈 カリスマ 〉の経営失策の尻拭い
〈 カリスマ 〉来店に振り回される

苦役としての仕事観の変貌

山岸さんはあれも出来ない、これも出来ない
暴言・失言オンパレード
出来ない事を補う姿勢が企業側に無い
朝令暮改
風邪を引いたときの冷たさ
モラルダウンが欠勤を招く
優勝セールでボヤく正社員たち
重くのしかかる生活費の請求
仕事はシラケてやるものさ
森口奈緒美さんのメッセージ
1999年7月の恐怖の大王
ジョブの無策無能ぶり
仕事道に生きる人は頭の回転も速い

ギャラリーカフェとの出会い

ギャラリーカフェとの出会い
局部も萎えて根性も、気力も枯れた
怠け者と働き者の対立
ストレスをはき出しても共感しない職員達
規制撤廃が仕事のモラルダウンを招く
障害者に合う理想の職場とは?
経営者のモラルの乱れが悪循環を生む
ギャラリーカフェのRママと、大手スーパーのFの対応の違い
従業員らしさから逃れる方法
癒しのサービス
続・森口奈緒美さんのメッセージ
後ろ向きな姿勢での仕事
仕事辞める気持ち芽生える
嬉泉の対応
会社上層部のゴタゴタ
信頼がないと受け入れない事もある
仕事をほうり投げて退職届けを出す

退職に至る経緯

父の死
本音を会社にブチまける
復帰のはずが一転退職
私にとって大手スーパーの仕事とは?振り返って思う事
Fと久し振りに会う
雇用対策(私見)
官僚天下りの不公平

石井先生の見方

現実と相手の求める物のギャップ
怒る側の心理
怒って注意するという事
では、どうすればいいか
長所を褒めるという事が自発性を引き出す
ジョブへの提言

グループホームの生活

総論〈 グループホーム」にいたるまでの歩み 〉
A君の事
D君の事
M子さんの事
私のグループホームの生活

ドナ・ウィリアムスのようにはなれない??

外圧に弱い国日本とドナ・ウィリアムスのメッセージ
自分たちが書く事で訴えていくメディアの大事さ
マイノリティとして多数派の人と関わること

自閉症の老後について

なざその事を問う?
社会福祉基礎構造改革が自閉症者に与える波紋
日本型弱肉強食福祉がもたらす老後のイメージ
老いた自閉症者のイメージ
森口奈緒美さんのケースで思う事

付記

森口奈緒美さんとメールで対話
山岸さんへの手紙 ◆ 石井哲夫より
● 私の社会参加の歴史

後書き


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