sorry,Japanese only

   『 自閉症者の就労支援 』

             梅永 雄二:著
             エンパワメント研究所:発行  筒井書房:発売  定価: 1,200円 + 税
             
ISBN-4-88720-244-X  C3036  ¥1200E


「これらの調査から、青年期に達した自閉症者の約5人に1人は職業的自立を果たしていることにまりますが、逆に5人のうち4人は一般就労以外の道をたどっていることになります。」(第2章:第1節 「青年期自閉症者の就労率」より)
そうですね、それが今の日本の現状でしょうね。
そしてそれを認識した上で、ここからの出発です。

自閉症児を取り巻く就労環境はなかなかなものです。それでも「めざせ、一般就労!」です。
今の日本の社会では、一般就労と小規模作業所などの福祉的就労との間には、賃金等で大きな隔たりがあります。お金だけの問題ではないものの、社会の中での自立を考えた時、やはり目標とするのは一般就労だといえるのではないでしょうか。
我が家でも、できれば将来は、親元から独立してグループホームなり、援助付きアパートなりに住んで、就労して、地域で楽しみを持って暮らしていってほしいと願っています。

そのための手助けとなる本です。題名は正確には「親、教師、施設職員のための 自閉症児者の就労支援」です。題名からもわかるように、以前紹介した「社会的自立のための指導プラグラム」などの本が、本人の身に付けさせたいスキルの獲得をめざす、どちらからというとボトムアップをめざしているのに対し、この本は本人や環境にどう働きかければ、就労に結びつけることができののか、という視点から、「親、教師、施設職員・・」に課せられた、トップダウン(目的指向)の道をめざしています。そしてそのために利用できる諸制度についても詳しく紹介されています。
子ども達のために利用できるものはホントになんでも利用していきたいですね。その意味でとても助けとなる本です。

第2部では、知的障害を重複している者から、高機能な自閉症者まで幅広く就労の事例を集めて、どういう援助があればうまく就労に結びつけることができるのか、ヒントといっしょに希望もイッパイいただける本になっています。

(2002.02)


   目次

   はじめに

   第1部 自閉症者の就労の現状と職業的自立のために

第1章 青年期自閉症者の特徴

第1節 自閉症とは
第2節 身体的側面
第3節 知的側面
第4節 社会的側面
      1.対人能力
      2.性的な問題
      3.さまざまな問題行動

第2章 青年期自閉症者の就労状況

第1節 青年期自閉症者の就労率
第2節 就労先の職種

第3章 労働行政における自閉症者の就労援助 ― 各種援護制度

第1節 雇用率制度
第2節 助成金制度
第3節 職場適応訓練制度
第4節 障害者緊急雇用安定プロジェクト

第4章 自閉症者の就労上の課題

第1節 仕事中に指摘される問題点
      1.作業能力
      2.対人行動
      3.環境要因
第2節 事業所調査の結果

第5章 さまざまな就労支援

第1節 わが国の就労支援機関
      1.地域障害者職業センター
      2.障害者雇用支援センター
      3.福祉工場
      4.障害者職業能力開発校
      5.その他の就労支援機関
第2節 援助付き雇用(Supported Employment)
      1.援助付き雇用とは
      2.援助付き雇用における職業評価
      3.援助付き雇用における職業指導
      4.その他のジョブコーチの仕事
      5.わが国の援助付き雇用

第6章 自閉症者の職業的自立のために

第1節 自閉症者の社会適応力を高める
      1.トップダウン(目的指向)を意識した家庭、学校での教育
      2.学力よりも社会的スキル(社会生活能力)の習得
      3.余暇を含めたライフスタイルの確立
      4.地域に根づいた指導
      5.家族の支援
第2節 環境からのアプローチ
      1.早期からの職業教育の充実
      2.養護学校卒業後の専攻科の設置
      3.保護者、医師、福祉施設職員、職業カウンセラー等の有機的なネットワークの形成
      4.職業領域の各題 ― コンピューターの指導など
      5.行政指導 ― 一般企業への自閉症者の理解を求めて
      6.ジョブコーチ等 職業指導の専門家の養成
      7.環境の構造化
      8.新しい就労支援形態の促進

   第2部 自閉症者の就労事例

第7章 知的障害を重複している自閉症者

第1節 重度の知的障害を重複している自閉症者
      1.言葉によるコミュニケーションは困難で、黙ってもち場を離れるセイヤ君
第2節 軽度の知的障害を重複している自閉症者
      1.視線が合わず、対人関係をうまくとれないトモちゃん
      2.こだわぢが強く大声で独語を発するタカシさん
      3.ヒゲを伸ばしたままで、ときおりチグハグな対応をするカズノリさん
      4.独語があり、誰彼かまわず声をかけてしまうヒロアキさん
      5.仕事に飽きると周囲を見渡すマリさん

第8章 高機能自閉症者

第1節 高機能自閉症とは
第2節 事例
      1.知的には高いが、こだわりがあり対人関係にトラブルを生じやすいコーヘイさん(仮名)
      2.雨の日にも花に水をあげて枯らせてしまうテツさん
      3.音などの環境刺激に敏感で、時間にこだわりがあるヒサノブさん(仮名)
第3節 高機能自閉症者の就労上び課題と対応

   終わりに 

   読書案内

   巻末資料


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