sorry,Japanese only

『 自閉症とは 〜どうしてよいかわからない子どもの教育法〜

片倉 信夫:著 教育出版 定価:1900円 + 税
ISBN4−316−33631−2 C3037 ¥1900E


いまでは、すっかりおなじみになった、いつもの片倉節です。
もう20年以上も前に発刊された本書ですが(1981年 第1刷)、その思いは根っこのところでは今も同じ・・と、なんとなくホッとします。
だいたい 「自閉症とは」という題名をつけながら、「自閉症というのは、わけがわかったようでいて、ちっともわけのわからないもの」・・堂々とこう定義している先生なのです。
ここで述べられているのは、「そんな正体さえも定かではない自閉症児たちと、どうつきあったらよいものか」 その取り組みが主題です。つまり、「自閉症とは何ぞ」ということはひとまずおいておいて、目の前のわけのわからない自閉症児とどう接していくか、という本です。

そして、この本のもう1つのテーマは、そんなわけのわからない自閉症児のユニークさ、やりとりのおもしろさ、それを見ているうちに、愛さずにはいられなくなる自閉症児の姿・生き方なのでしょう。
「子どもの教育法」といいながら、具体的なワークシステムやマニュアルを述べているわけでもありません。
「家で何をやったらよいのでしょう?」と尋ねる親には、「山登り」を勧められています。親子での一体感や、開放感、目的も単純ですし、人目もないので親も平静に子どもと向き合えます。
片倉先生のこんな考えは精神論とか、職人芸とか、賛否両論あるようですね。
我が家では環境への働きかけはTEACCHメソッド、本人への働きかけは自己コントロール力のUP、そして自閉症児との接することの魅力・楽しさは片倉流と・・・ おかげで、これまでTeppeyも家族も安定して過せてきたように思います(^_^;)

ただ、この本の一節にある「子どもをたたく」ことについて・・これには注意が必要だと思います。
たとえば、例にある「かみつき」を止めるために「たたく」場合、

『 はじめ、子どもたちは噛むことが日本の文化ではよくないことになっているのを知りません。そこで、よくないんだと教える必要があるのです。こういう場合は、かみつきかかったところをたたかばくてはなりません。かんじゃったあとでたたいてもだめです。そのうえ、たたきそこないを徹底して減らす必要があるのです。
「例外なく、即刻、たたく」 これが原則です。』

・・・・それを、行なおうとすると、四六時中子どものそばについて、噛もうとする気配を敏感に感じ、その瞬間に適確にヒットさせなければなりませんね。
残念ながら、そんな時間と職人芸を持つ親は・・・ 私も、最初からあきらめました。
中途半端にたたいてしまうと、「たたく」という行為だけが記憶され、親も子もその行為をエスカレートさせる危険もありますね。
これについては、別の方法をお勧めしたいと思います。少々遠回りでも、「かみつき」のおこった状況や経緯、体調などを分析し、それをおこさないよう環境を整えたり、誘導したり・・・
職人技を持たない私たち、地道にやっていきましょう (^。^)

(2002.7)


  目次

序  玉井 収介

1 自閉症とは

自閉症ってどんなもの
再び、自閉症ってどんなもの
どこまでが自閉症?
この本の 「自閉症」 の定義

2 方法論とタイアップした自閉症論

 (1) 汝、わけのわからなさに当惑することなかれ

自閉症児のわけのわからなさの実証
この実験で実証されたと考えられる自閉症児のわけのわからなさ

わけのわからなさの実際 その1
   ユキちゃんのアメ
   「まいごになるゥ」
   「イトーハトヤ」
   「チチョウハ?」
わけのわからなさ対策 その1

わけのわからなさの実際 その2
   ナッちゃんのバイバイ
   二度目の “ ペン “
   「どうしてこんなことするの」
わけのわからなさ対策 その2
   汝、わけのわからなさに当惑することなかれ
   決定した対応の例

 (2) 見果てぬ夢

人間磁石
指さしは指さし
見果てぬ夢

 (3) 教育活動を成立させるために、どうしても克服しなければならない、自閉症児たちの行動

その1 子どものほうがおとなの働きかけを受容することで教育は始まる
    ― 狼少女と青鬼の戦い
その2 儀式的行動を妨げてトラブルを起こし、それをくり返すことで仲よしになる
その3 自閉症の幼児期担当教育者最大の敵、自己刺激的行動

 (4) 自閉症児と、ホンマモンの自閉症児と、自閉症ではない自閉症児

3 ひっくるめた自閉症児に対する第1段階の教育方法

 (1) ○×思考から脱出する

 (2) 抱っこを教材に使う
    たとえば
    技術上のコメント
    心の問題、人間関係の問題

 (3) 食事について
    自閉症児の偏食
    偏食矯正の技術的な側面
    対人関係に及ぼす影響
    コメント三つ

 (4) いっしょに歩くこと、特に山登りについて
    いっしょに走ること
    いっしょに山に登ることについて

 (5) 子どもをたたく ― 心理的な苦痛の役割
    たたく関係
    たたけない関係
    子どもをたたく ― 心理的な痛み
    親切なたたき方

4 幼児の自閉症児に行なった行動療法

 (1) 行動療法事始め
 (2) ロバースの模倣言語のプログラム
 (3) 行動療法というもの

あとがき


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