sorry,Japanese only
『 「自閉」を活かす 』
石井 聖:著 学苑社 定価:2524円 + 税
ISBN4-7614-8706-2 C3037 P2600E

東京の国分寺市で「小露路(コロロ)治療教育研究所」を開いている、石井聖先生の書です。
その療育はコロロ・メソッドの名で広く全国的に知れわたっているので、ご存知の方も多いと思います。

そして、その療法は叩くこともある「タイミング法」とか、不快刺激を注入する「ワクチン効果法」など、賛否両論ある指導法です。
わが家も小学校までは、ダイナミックリズムやら、正座法などお世話になりました。
「大人は風になれ」といわれて、体育館の中を汗を流して走り回りまったのを思いだします。歩いたり走ったり、這ったり寝転んだり・・
そのあと、椅子に座った子どもたちは、ピタッーとリーダーの手許を見つめます。懐かしい思い出です。
また、認知障害との戦いの章では、マッチングをとっかかりとして国語の学習、算数の学習と、これまた独特の学習法で子どもたちを引きこんでいきます。

タイミング法やワクチン法に対して違和感のある人にとっても、一度は読んで検討していただきたい学習法だと思います。

最後に書名の「「自閉」を活かす」の「活かす」との意味、筆者のことばの一部を引用させていただきます。

第一に文字どおり「生きさせる」ということ。もちろんよりよく生きることという意味です。
20数年前、離れ家の外から施錠され、幽閉されていたHT君の姿を、はじめて目にしたときのショックは、いまだ私の脳裏から消えません。

第二に、彼らの限られた発達の可能性を最大限 “活かす”ということ。
「活かす」とは、脳の活性化のことであり、教師には「子どもを活かすも殺すも、おとな次第なんだよ」と、辛めの檄をとばしたつもりです。

第三に、彼らの存在そのものを活かすということ。
これは「この子らを世の光に」というのと同じことですが、私自身、自閉症児たちが文明社会、とりわけ言語社会の告発者のように思われてならない時があります。そして彼らこそ地球規模で生態系の崩れに乗じて出現したまさしく新人類なのであると。

彼らが新人類であるかどうかはひとまず置くとして、精一杯「活かして」やりたいと願っています。

(2003.7)


  目次

序文

第1章 新しい発見 − 正常発達像の幻影

1 幼児期の自閉症児の姿

ある幼稚園の風景
母子分離のできない芙蓉ちゃん

2 正常発達像の幻影

正常発達像とは
36ヶ月の壁

3 正常発達との違い

ケンカの是非
母と子の関係

4 ヴィジョン(将来像)をもって

三つの発達曲線
子どもの将来に責任がもてますか
将来像を予測する眼

第2章 タイミング法入門

1 タイミングは指導の生命線

叩くべきか、叩かざるべきか
ある学習風景 − はじめてたし算ができた −
瞬間接着剤

2 坐る

3 立つ

紙やすりを敷く
空にらみと異常反射の違い

4 歩く

クッキーと手を離す所作
発作などの対応
45分歩く − 杜夫君の初挑戦

第3章 ワクチン効果法

1 不機嫌連鎖(パニック)はなぜ起こるか?

ある学習風景 − 哲男君とピアノ −
ある学習風景 − 一華ちゃんと「くるよ」
不機嫌連鎖はなぜ起こるか
快と不快のコミュニケーション

2 自閉症状の変遷図式

百花繚乱期
中間期
不快刺激の注入
安定期
光子先生からの報告

3 困った行動への対応図式

要求を認めない場合 (A)
要求を認める場合 (B)
近道を模索する
机にまつわる三つの情景
常識を超えて

第4章 おとなの抑制系 − プロフェッショナルの条件

1 会議はまわる − バッコするダメ教師達 −

自閉症児をよくしたい一心
会議の決定のまやかし
私自身のにがーい思い出

2 プロフェッショナルの条件

実践の力は土俵の上で
自閉症児を指導する者の資質条件
才媛先生登場
職員集団の渦巻きの中で
ダメ教師の活用法

3 おとなの抑制系とは?

抑制系とはなにか?
抑制系と「がまん」とは違うもの
自閉症児をとりまく誤解の渦
脳幹へストレートに働きかける
体験告白 *私はこうして抑制系を身につけた
存在刺激
形式に内在するもの

第5章 認知障害の戦い

1 非言語的コミュニケーション

イントネーションの魔術
目線パワー
自閉症児の側から見た刺激(S)

2 言語的コミュニケーションの基本は 「学習」

学習の意義
学習指導上の一般的な留意点
国語の学習
算数の学習

3 マッチング

マッチング学習のコツ
カードのつくり方・遊び方

4 一華ちゃんのこだわり学習

第一段階
第二段階
第三段階
まとめ(学習の効用)

第6章 生活指導のコツ

1 偏食の本当の原因は − 食事指導のコツ −

2 環境が変わるとおもらしするのは − 排泄指導のコツ −

3 着替えに30分もかかるのは − 着脱指導のコツ −

4 まとめにかえて

第7章 指導の基本形

1 基本的な体位

体面位
椅子に坐る
暗室の効用
正坐ができる − 正坐学習へ

2 対応法のコツ (タイミング法 パートII)

「よくわかる指導」のまとめ
ある特殊学級の授業風景 − 金六先生と大門君 −
どのようにしたら、大門君によくわかるだろうか
こうしたら自閉症児によくわかる − 雪先生の対応 −
まちがいをわからせるタイミング

第8章 個々を活かす集団指導

1 集団のもつ力

ある幼稚園の風景
ある特殊学級の風景
ある普通学級の風景
集団のかたち

2 全体把握

集団を活かす秘訣
集団をめぐる様々な風景
全体把握のテクニック
個々を活かす集団指導とは

3 おとなは風になって

黒子先生の役割
人間教材
行動のリズム
ダイナミック・リズム

第9章 摩訶不思議現象を解明する − 理論編 −

1 行動の組み替え(レプログラミング)とは

新生児の原始的スマイリング
モロー反射 − 生後3ヶ月ぐらい −

2 母子関係の理論から

刻印(インプリンティング)
感応現象(鏡映反応)
アイデンティフィケーション

3 幸せへの道 − 汎化へ向けて −

反応格差はなぜ生じるか
貯金(汎化)のために
自閉症児指導のゴール

あとがき


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