sorry,Japanese only

『 「自閉」を超えて (上) 』 ISBN4−7614−9307−0 

『 「自閉」を超えて (下) 』 ISBN4−7614−9308−9

石井 聖:著 学苑社 各 定価:2427円 + 税 C3037 P2500E


自閉症療育においては、賛否両論、いろいろ物議をかもすことも多いコロロ・メソッドの集大成本です。

コロロ・メソッドについては毎月ダイナミックリズムの会に参加したり、コロロを毎日実践してついに療育手帳を返上するまで認知能力を高めた・・という、スゴいお父さんの講演会を企画したり・・・そんなに抵抗感はありませんでした。

岡山の田舎に住んで、自分たちだけで療育を模索していたとき、頼りになるのは書籍や講演会、ビデオなどなど・・その中から親がいいと思ったものを、親の自己責任で取捨選択してきました。

我が家がとりいれてきたもの、TEACCHプログラムの手法、河島先生の子どもと向き合う姿勢、応用行動分析の手法による課題分析のやり方、かくたつ流の子どもとの楽しみ方・・そんな中にコロロでの耐性トレーニングもありました。
(ちなみに取り入れなかったもの・・・完全受容法、遊戯療法、抱っこ法、精神分析療法、ビタミン療法、FCなどなど)

育てる会で山登りを始めたころに、みんなに配った「療育的山登り入門 べからず集12ヶ条」もコロロ講演会で聞いた石井先生の話を参考にして作ったものです。

本書は上巻では、耐性トレーニングや感応現象を活用したパターン作りなどの意味と目的などについて述べられ、下巻ではそのための実際のやり方、教え方について具体的なマニュアルとして書かれています。
コロロに取り組んでみようとおもわれている方には絶好の参考書だと思います。

ただ、私の個人的な意見を言わしていただければ・・
TEACCHはたとえ中途半端であっても(親が書籍や講演会だけを頼りに)、子どもにはそれなりの効果、安定がみられるのに対し、中途半端なコロロには危険性があると思えます。それは本書の中で石井先生も書かれています。

「奇声を発したり、やたら手叩き行動が多いのは、うるさいだけで実害がないからかまわないと思いますが、人を叩いたり噛んだりするので困っています。この他傷行為を阻止しようとすると、パニックをおこされるのでほとほと手を焼いています。他傷行為だけはなんとかやめてもらいたいのですが?」という質問を受けた。
  ・・・・・・・・・・・
日頃からできることをこまめにさせていくのが、しつけの基本であり、それは自明のはずである。それなのに、そのしつけを全くしないでおいて、超難しい問題行動についてのみ何か名案はまいかと言われても、しょせん無理な話である。そんな人が、認知障害児のガンコな固執をこわそうたってできるわけがない。無理にやってかえって固執やパニックを強めてしまうのがオチである。

そういう人間にかぎって、今度は、自分の技量のおそまつさを棚に上げて「耐性トレーニングはやらない方がよい」などと言いだすのである。下手な「耐性トレーニング」(悪い結果を出したパターンこわし)は、やらない方がいいに決まっている。それは当りまえのことなのだ。

そうなんです。下手な技量によるコロロメソッドはかえって、固執やパニックを強めるおそれがあると思います。
名人による「叩きタイミング法」は一発で問題行動を消去させるかもしれませんが、下手な指導者や親によるそれは暴力、児童迫害となってしまいます。
その意味で、本気でコロロをやろうとされる方は、良い指導者について全身全霊で取り組もうという覚悟が必要となってくるのでしょう。

そこまでは踏み込めない私たちは、危険性のないところで、ちゃっかりとエッセンスだけいただいて

1.途切れさせない。立ち止まらせない。
2.歩きながら跳ばせない。スキップさせない。
3.走らせない。走りだす前に止める。
4.スピニング(グルグル廻り)させない。余計な動作をさせない。
5.先走りさせない。横で手をつなぐか、後ろから大人の背に手を当てさせる。

  ・・・・・・・・・・・・
などと べからず12ヶ条を手にして 楽しく(・・(^_^;)・・)「療育的山登り」を始めたわけです。

改めて言いますが、この本はいろいろ参考になりますが、この本だけをもとにして自己流でコロロに取り組もうとするのは危ないと思います。しっかり指導していただける先生につくか、あるいは私たちのように「いいとこどり」で、危険性のない上澄みだけを取り入れるか・・・にすることをお薦めしたいと思います m(__)m

(2003.4)


  「自閉」を超えて (上)

  目次

書き初め

1章 不思議な国の認知障害児

1 不思議な反応格差

軌道行動 × 変更 = パニック
変容は3ヶ月の指導成果か?
一瞬にして3ヶ月前へタイムスリップ

2 水の流れのように

散々伍々
ここでも軌道行動
川の流れのように
パターン行動
パターンの卒業
正常な大人の場合でも

3 なぜパターン行動が生じるのか?

パターン行動とは?
原始的行動リズム
パターンが形成されるわけ

2章 コロロ・メソッドとは?

1 家では何も食べない元君

幼稚園での特訓
養護学校でまた逆戻り
原因は直前にある
耐性トレーニングが必要なわけ
事実とリクツは違う
場面によって格差が生じるのが認知障害

2 パニックの正体

パニックとは?
パターンをくずされると猛抵抗するのはなぜ

3 コロロ・メソッドの見取図

4つのステージ
ステージ1:マイペースを許容する全面受容
ステージ2:感応現象を活用したユアペース
ステージ3:パターン行動を卒業したユアペース
ステージ4:内言語の獲得
ステージ 1〜4のまとめ

3章 パニック撃退の究極のテクニック

1 パターン認識が犯人

パニックの再発
時計の針と新太郎君
パターン認識とは

2 全面受容

やわらかアタマで
特定場面が鍵
自分と他者が未分化な世界
さてどう対応すればよいのであろうか

3 発作に近いパニック

周囲の状況と無関係に起こるパニック
発作が起きてしまったら

4 流れを切り替える

高盛君のマイペース
盟友・片倉先生からの手紙
老獪な戦法

5 叩きタイミング法

巌君のある日の出来事
大太鼓をドドドドドーん
プロの腕前
直前をとらえる
消去パターンを作れ
難度はウルトラC

6 抱き押え

4章 耐えて忍んでジャンプする ― 耐性トレーニング ―

1 耐性トレーニングとは

講演会の質問から
概念学習の前にすべきこと

2 耐性トレーニングの4つの段階

百花繚乱期
過渡期
積極的訓練期
安定期

3 耐性トレーニングの本質と限界

訓練によって子どもの運命が変わる
安定期に入っても油断は禁物
円周上をめぐる

5章 今日からオリコウさんになる法教えます ― 感応現象を活用したパターン作り ―

1 パターンを活かす

速効性ナンバー・ワン
強化の結果
消去パターンが生じるのは
刺激場面という教材
バージンほどよい

2 感応現象とは

ある施設の現場で
正座ができたのは

3 感応現象によるパターン作りの活用例

一点穴埋め法
集団療法
整然とした集団を作るには

4 原始的行動リズムの活用

見えにくい原始的行動リズム
バスの車窓とテレビのCM
発想を逆転させてみよう!
迷子の家出
リーダーの演技のスピードと間あい

5 原始的行動リズムの活用例

幼児の集団
学習場面
作業場面
山登り
工夫さえすれば

6 感応現象を活用したパターン作りを妨げるもの

感応現象は伝染病である
教師という壁

6章 生体エネルギーが脳幹に突きささる ― おとなの抑制系 ―

1 顔がいのち

人相見のごとく
三者三様
クールな表情
ビンタをお見舞いしたら
昔の先生の顔

2 言霊の呪力

沈むような低い声
あなたの近くにいるC夫先生を探せ!

3 おとなの抑制系の正体に迫る!

おとなの抑制系に対する2つの誤解
お地蔵さん反応
おとなの抑制系とは?
驚異の逆クレーン現象

4 おとなの抑制系を身につけるには

抑制系を身につけるための4つのポイント
抑制系は後天的に身につく

上巻を終えて


  「自閉」を超えて (下)

  目次

7章 “認知障害の戦い” 序説

1 認知障害の戦いへいざ出撃!

まずは正座から
机の上を画面に見たてる

2 どこまで続く平行線

一松君とアト子先生
「重度」という烙印

3 方法は星の数ほど

目線や表情も課題刺激
マニュアルはないがプログラムは存在する
パターン化の弊害

8章 自閉症状が消える日

  T カード魔法で書字動作が花開く 【概念学習の第一段階】

1 絵カードのマッチング ― 第一の関門

“良いパターン行動”を作る
絵カードを選択する
行動の組み替え
教材にバラエティをもたせる
コロロ・メソッドの下限
共通項を抽出する

2 模写 ― 第二の関門

動作模写
定位模写

3 絵カードを見て文字を書く ― 第三の関門

文字の記憶力
おとなのアタマは通用しない
子どもにとって書きやすい文字とは

  U 原野に線路を敷きコトバという列車を走らせる 【概念学習の第二段階 (1)】

1 表相言語と内発音

表相言語
内発音の発見

2 発音トレーニング

内発音の獲得がポイント
発音トレーニングの要領
一つの音は二回まで
音声を加えた教材の組み合わせ
学習課題を組み合わせるときの順序

3 聴覚言語の段階

発声だけがない不思議な段階
概念化の深まり

4 発語の段階

受動的発語の段階
能動的発語の段階
発音トレーニングのまとめ

5 属性と動作文

物の属性
動作文

  V 数という名の特急列車が走る 【概念学習の第二段階(2)】

1 なぜ数を学ぶか?

買物をするために算数」を学ぶのではない
意識の集中と持続

2 数える

マルを数える
マルを書く

3 たし算とひき算

たし算
ひき算

4 文章題へ

多い
少ない
ぜんぶでいくつ? のこりはいくつ?
文章題の応用

  W 対人関係の壁を貫くコトバのキャッチボール 【概念学習の第三段階(1)】

1 イエス・ノーの判断

文章題から判断学習へ
記述式表現による例題
二者択一の質問

2 道徳的な判断

げんこつほしいですか?
問題行動は残るが格段の進歩

3 言語のキャッチボール

魅力的でしなやかな会話
―華ちゃん
雅人君
雪雄君

4 コミュニケーティブな会話

モノローグから自問自答へ
まだある高い壁
オーム返しにならないように

5 内言語の獲得に向けて

共通項の抽出
悲しき認知障害
内言語を獲得すると
内言語域に到達したかどうかの尺度

  X 越えよ、最後の関門! 【概念学習の第四段階】

1 “認知の世界”へようこそ

生涯学習が不可欠
第四段階の子を直接受け持てないわけ
共同治療者の奮起に期待

2 自閉症が治った例

ある父親からの手紙
先人の足跡をたよりに

9章 証言編:わが子はこうして認知障害を克服した

1 ドン底のあの頃が今は夢のよう (臼井 靖子)
2 重度障害児の教育ママとして (大竹 節子)
3 自閉症版:父の魂 (山本 勇)
4 本当のノマライゼーションとは (岡野 美子)

10章 遊びの冒険

りえちゃんヌード (概念学習の初期)
ロープウェイ (脳幹トレーニング(1))
空中遊泳 (脳幹トレーニング(2))
信頼関係 (脳幹トレーニング(3))
男の子と洋式便器 (概念学習の初期)
膝に履く靴 (概念学習の初期)
発音矯正絵?カード (概念学習の第二段階)
鈴木君はさかなです (概念学習の第三段階)
手の平揺すりの組み替え法 (耐性トレーニングの過渡期)
男の先生遊び
お父さん猿の悲哀

後書き

〈 解説 〉 応用行動分析学からみたコロロ・メソッド (金子 尚弘)

〈 付録 2 〉 概念学習のプログラム

〈 付録 1 〉 コロロ・メソッドの模式図


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