sorry,Japanese only

  『 高機能広汎性発達障害  アスペルガー症候群と高機能自閉症

杉山 登志郎 ・ 辻井 正次 :編著        
ブレーン出版:定価 2,800円 + 税        
ISBN4−89242−635−0  C3011  ¥2800E


いまでは、すっかり全国的にも有名になった「アスペの会」、すでに普通名詞に近いですね。その「アスペの会」が生まれたのは、この本に書かれているように、杉山先生の研究室に集った親の方たちから自然発生的に生まれた会だったのですね。

その意味でこの本には2つの意義があると思います。
一つは、当時はまだ耳慣れなかった「高機能広汎性発達障害」という障害について、その診断基準や早期治療教育から、個別プログラムを作成しての生涯にわたる援助方法の解説などの、専門家からの指導書です。いままで、高機能な自閉症やアスペルガーの方の問題だけに絞った解説書はあまりみかけなかったようにも思います。日頃の指導などの助け(具体的にも精神的にも)になる本だと思います。

もう一つの意義は、「第4章 両親の抱える問題」などで触れられているように、「アスペの会」の歩みのように、親の願いや思いを共にし、実際の現場で、机上の学問だけでなく実践を通して、子どもや家族の抱える問題の解決をはかっていくという姿勢にあると思います。
「高機能広汎性発達障害」とは、たしかに知的水準などからみれば、医学的には「軽度発達障害」にあたるのかもしれません。しかし彼らの抱えている社会生活上の問題は、決して「軽度」どころではなく、ことに就労などに際しては知的に重度の子と同じくらい、ある意味ではそれ以上に配慮を必要としています。
医学的分野だけでなく、彼らと家族にとってどんな援助が必要で、ボランティアさんなどを組織して、どんな風に援助を続けていけばいいのか・・そんなところまでも踏みこんで書いていただいています。

それぞれの地方で、それぞれの子ども達のために、この「アスペの会」のような組織が必要となってきますね。
岡山でも、育てる会の中に「OHA (kayama igh functioning autism and spergeer)の会」ができたり、「岡山県高機能広汎性発達障害児・者の親の会」の集りができたりして、それぞれ活動をはじめています。
そのお手本、道しるべとなるような本です。感謝です。

(2002.02)


  目次

はじめに

第1章 歴史的展望

第2章 診断

1節 精神医学的診断
2節 早期診断を巡る問題
3節 心理的位置付け

第3章 ライフサイクルと発達援助

1節 乳幼児期
2節 学童期の問題 ― 学校教育の問題
3節 青年期・成人期の問題 ― 社会参加の問題

第4章 両親の抱える問題

1節 総論
2節 親として何ができるか

第5章 治療教育

1節 診断から治療教育
2節 治療教育への導入とプログラムの作成
3節 個別の治療教育例
4節 個別の治療教育 ― 危機介入的治療教育について
5節 小グループでの治療教育
6節 複合的大グループでの治療例
7節 個人精神療法の利用
8節 学校への治療教育的対応と連携
9節 生涯にわたる発達援助システム

おわりに


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