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  『 こうすれば伸びる 自閉症児の指導法 』

上岡 一世:著 明治図書 定価: 1,400円 + 税
ISBN4−18−014915−X  C3337  ¥1400E

 


 「自閉症児は指導法さえ間違えなければ、必ず伸びます。伸びないのは子どもに原因があるのではありません。
教師や親や自閉症児を取り巻く周りの人たちにこそ問題があるのは明らかです。
この事実をわれわれ自身がもっと謙虚に受け止め、本気で取り組んでいかなければ、自閉症児の将来はないといっても過言ではありません。

                                             〜「はじめに」 より〜

その指導法がわかりやすく、具体的に書かれています。いますぐ使える指導法です。
そしてその思いのさまは、II章の題名にもあるように 「社会的自立という目標は絶対に放棄しない」 という言葉にこめめられていると思います。
ここに書かれているのは、○○療法というのではなく、今目の前にいる子を自立させて就労させるためには、今何をどのように指導していけばいいのか・・という、ただそれだけです。それがこの子たちにとってどれだけ大切なことか、自閉症児を愛する筆者の思いが込められています。

自閉症児が実社会に出る割合はわずか10%程度だと言われており、現実はなかなかきびしいものがありますが、精神薄弱児の50〜60%に肩を並べるぐらいに、いやそれ以上になることも、取り組み次第では決して不可能なことではありません。
私達もそれを信じて、一般就労を目標として指導して「いきたいと思います。

 本の内容は、まず自閉症の基本障害の特性や指導の基本について触れたあと、具体的指導法にはいっていきます。

 まずは「身辺自立のための指導」として、「衣服の着脱」から始まり、またその内容も「衣服の着脱そのものができない場合」、「着替えに時間がかかりすぎる場合」、「整理・整頓ができない場合」と具体的に続きます。

 ついで「排泄」の項目では「パンツを汚す」、「どこででも排泄する」、「便器外に漏らす」、「時間に関係なく行く」・・と細かく現実の問題を前にして、そのための指導法を提案しています。
 身辺自立については、「手洗い・洗面」「食事」「清潔」などと続き、次いで
「教科指導」「生活の自立のための指導」場面に入ります。特に生活自立については「掃除の指導」「洗濯の指導」「食事作りの指導」「買物指導」「通学指導」「働くことの指導」など、子ども達に身につけさせておきたいスキルが並んでいます。

 その後、一般的な生活の場における「異常行動の軽減法」として、パニック・自分勝手な行動・自己刺激行動・多動・徘徊・他人への危害、などへの対処法・指導法が書かれています。すぐに役に立つ本だと思います。

最後に、「おわりに」からの筆者のことば
自閉症児は指導法により、教師や親の姿勢により、よくもなり、悪くもなる、どちらにでも変容する特性を持っています。それだけきびしい、真剣な指導が要求されるわけですが、そのことを認識した上で、常に自分の指導を振り返り、しっかり子どもを見据えて指導にあたらなければならないと思います。
自閉症児は、つきあえばつきあうほど、素直で、謙虚で、すばらしい子ども達です。
自閉症のよさを見いだして、何よりもこの子ども達を好きになって欲しいと思います。
温かい本です。

「会報 44号」(2002.01)


   目次

はじめに

I 章 自閉症の基本障害

1 自閉症の障害の特徴

3つの症状
一人ひとり障害は異なる
社会参加を困難にしている要因は何か

2 自閉症の原因

自閉は基本障害ではない
知恵遅れの教育と何ら変わらない
自閉症児の指導はなぜ難しいと言われるのか
一人の人間として見ることが大切

II 章 指導の基本

1 家庭指導を重視する

母親をりっぱな指導者にする
共同指導者にならねばいけない

2 社会的自立という目標は絶対に放棄しない

将来を見通した指導を行う
働く活動を重視する
子どもの能力を引き出す

3 社会的スキルを身につける

基本生活に必要なスキル
基本的相互交渉のスキル
職業・地域生活でのスキル
認知的対人行動のスキル
技術・技能よりも態度が重要である

III章 具体的指導法

1 身辺自立のための指導

  (1)衣服の着脱

衣服の着脱そのものができない場合
着替えに時間がかかりすぎる場合
整理・整頓ができない場合

 (2)排泄

パンツを汚す
どこででも排泄する
便器外に漏らす
時間に関係なく行く

(3)手洗い・洗面

手がきれいに洗えない
洗面がきれいにできない

    (4)食事

偏食
マナー

    (5)清潔

手洗い
歯磨き
口をゆすぐ
身だしなみ
入浴

2 教科指導

   (1)算数の指導

   (2)国語の指導

3 生活の自立のための指導

   (1)掃除の指導

   (2)洗濯の指導

   (3)食事作りの指導

大事な学習課題がある
自信が生まれる
指導事例
食事作りが子どものすべてを変える

   (4)買物指導

現場での訓練を重視する
指導プログラム
買物学習ノート

   (5)通学指導

徒歩通学の指導プログラム
バス通学の指導プログラム
自転車通学の指導プログラム

   (6)働くことの指導

作業学習
現場実習

W章 異常行動の軽減法

1 パニック

なぜパニックが起こるのか その原因を探る
パニックに負けない
子どもとの人間関係を深める
ほめること

2 自分勝手な行動

3 自己刺激行動

4 多動・徘徊

5 他人への危害

環境を整備する
子どもとの関係を密にする
一番好きな行動を禁止する

参考文献

おわりに


 

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