sorry,Japanese only
『 そだちの科学 創刊1号 』
         特集;自閉症とともに生きる
滝川 一廣・小林 隆児・杉山 登志郎・青木 省三:編集人 日本評論社
定価:1333円 + 税 
ISBN4-535-90701-3 C9411 ¥1333E

「こころの科学」を発行している日本評論社より新しい雑誌、それも発達をテーマとし、創刊号は自閉症が特集される・・というので大いに期待していました。
発売日を待ちわびて、期待して開いたのですが・・正直、創刊号に対しては ん〜〜ん、という感じでした。

自閉症を関係性の障害ととらえて、母子関係の改善が最も重要と考えられる鯨岡先生や小林先生に私淑されておられる方には、まさに期待通りの創刊号だったと思います。
その関係障害臨床の立場にそって集められ、編集された論文が大半を占めているような印象を受けました。

一応、佐々木先生の「TEACCHプログラムから」や.太田先生の「認知発達プログラムから」などの文も入っていますが、それも「自閉症特集」としての体裁を整えるための “さわり”の紹介に終わってしまっている・・・そんな感じを受けてそまいました・

もちろん、小林先生をはじめとして編集者の意図が入るのは当然で、そのこと自体は編集方針としてもっともだとは思えるのですが、できれば母子関係論以外にも最新の研究・論文など紹介してほしかった、というのが親としての正直な感想でした。
第2巻以降で自閉症が特集される時には、もう少し幅広い分野の研究成果が発表されるよう期待したいと思います。

ただ、「最新の」ということにこだわらなければ、「自閉症児の育ちに付き合う」の章は読み応えがありました。半世紀も前から自閉症の子どもたちに付き合ってこられた諸先生方の観察、改めて勉強になることが多かったです。
また海津敦子さんの、連載 「こんなとき、どうする ― 障害児を育てる親たちへ ― (1) 『就学相談』 」 も参考にさせられることが多く、これからも楽しみにさせられるコーナーでした。

論文の片よりを差し引くと、コストパフォーマンス的には私にはスレスレの(・・関係障害臨床の立場の方からは大いに満足できる)一冊だと思います。
ただし、TEACCHや応用行動分析を実践されている方には、残念ばがらあまりお薦めできるとは思えない創刊号でした。

(2003.11)


  目次

創刊特集によせて

I 発達をどう考えるか

「精神発達」とはなにか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 滝川 一廣
子どもの発達を「個」からみること、「関係」からみること ・・・・・ 鯨岡 峻

II 自閉症をどう捉えるか

自閉症の治療・療育研究最前線
   ― 最近のアメリカにおける自閉症療育の動向 ・・・・・・・ 十一 元三
乳幼児期の自閉症療育の基本 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 高橋 脩
関係発達臨床からみた自閉症とことば ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 小林 隆児
高機能広汎性発達障害にみられる行為障害と犯罪 ・・・・・・・ 杉山 登志郎

III 自閉症児の療育

心理臨床の立場から ― 統合的アプローチ ・・・・・・・・・・・・ 村瀬 嘉代子
TEACCHプログラムから ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 佐々木 正美
認知発達プログラムから ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 太田 昌孝
行動療法の立場から ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 高田 博行
母子関係発達支援の立場から ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 財部 盛久
自閉症の入院治療 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 黒川 新二

IV 自閉症の人々とともに育つ

保育(児童通園施設)の立場から ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 岩崎 隆彦
NPOの立場から ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 辻井 正次
福祉現場の立場から ― 時間のかかる大切な基盤づくり ・・ 斉藤 理歩
学童期 ― 子どもと母親の育ち合い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 井上 理枝
成人期 ― 大人になって変わってきたこと変わらないこと ・・ 深見 憲

 自閉症児の育ちに付き合う

自閉症概念の変化を見つめて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 石井 高明
自閉症は「自閉」症ではないこと ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中根 晃
自閉症児に育てられる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 村田 豊久
40年の臨床から ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 若林 慎一郎
自閉症児の内的世界にどこまで近づけるか ・・・・・・・・・・・・・ 山崎 晃資

ブックガイド ・ 自閉症を読む

『ぼくはレース場の持主だ!』 パトリシア・ライトソン ・・・・・・・ 滝川 一廣
『ひろしくんの本』 深見 憲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 小林 隆児
『自閉症だったわたしへ』 ドナ・ウィリアムズ ・・・・・・・・・・・・・ 杉山 登志郎
『我、自閉症に生まれて』 テンプル・グランディン ほか ・・・・・ 青木 省三

連載     親と子がともに育つということ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 大日向 雅美
             子育て支援は「親育ち支援」

    こんな男に誰がした ― 育てられのカガク ・・・・・・・・ 山登 敬之
           優しいママとダメ息子

    相談窓口から「そだち」をみる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 高野 久美子
           心理援助の定点」

    こんなとき、どうする ― 障害児を育てる親たちへ ・・ 海津 敦子
           就学相談

編集ノート


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