sorry,Jamanese only

  『 自閉症のトータルケア 』

         〜 TEACCHプログラムの最前線 〜

                          佐々木 正美:監修  ぶどう社  定価: 本体1,650 +税
                          
ISBN4−89240−115-3  C0036  P1700E


 今、自閉症児の療育に関わっているみなさん、親にしても、学校の先生にしても、専門家の先生はもちろん・・TEACCHのすばらしさは、ほとんどの方が認めておられるのではないでしょうか? 療育方法が違っている方でも、その有効性はある程度認められていると思います。

 ただやはり、自閉症自体はマイナーな障害なのかもしれませんが、これまで自閉症のことは知らなかった方はもちろん、ある程度「自閉症」について聞いたことがあるという方でも・・「TEACCH」という言葉を知っていた方はいないのではないでしょうか? 少なくとも私の友人・知人にはいませんでした。
もっとも、私の友人にして、ほとんどの方が 「なんで (自閉症に)なったん?」 と聞いてくる状態ですから、「TEACCH」も「佐々木正美先生」も知らないのも当然といえば当然ですね。

でも、ということは、告知を受けたばかりの方は、自閉症児の療育にとって何がいいのか、どこからとりかかればいいのか、まったく白紙というか五里霧中の状態かもしれませんね。ここにTEACCHという子どもにとって確実に助けとなる方法があるのに、間違って遠回りの迷路に迷い込んでしまうかもしれません。
そんな思いで「私のお勧め本」に入れました。

「最前線」という形容詞からは少し時間がたってしまいましたが(1994年初版)、とてもわかりやすくTEACCHの理念というか、目指すところを分かりやすく説明し、その後のなすべきところも具体的に書かれています。写真や図も多く、特に構造化に関しては実際の教室などの平面図・配置図などもいっぱいですぐに役立つと思います。やはり今でも「最前線」の情報といえるでしょう。

執筆されている方々は、実際のノースカロライナで実践されているTEACCHを学んできた方ばかりです。
まさに現場で息づいているTEACCH、今日からの療育の実践が詰まっている本だと思います。

巻末の「Autism Primer 自閉症の手引 〜20の質問と答え〜」は、以前、神奈川自閉症親の会で訳され、同名の冊子で発行されたもの(「私のお薦め本」にも入れています)と同じ内容です。ノースカロライナ自閉症協会で発行された冊子が原典です。またこれはWeb版の「あたらしい自閉症の手引」でも「自閉症 Q&A」として訳され、広く公開されています。なにか1冊で2冊分買ったような、お得な気分にさせてくれる本です。

これから、TEACCHを取り入れていこうとするご家庭の方にはぜひお薦めの一冊です。その元になる理念というか、目指す方向性というか、哲学というか・・とりあえず、とてもよみやすい本なので、すでにTEACCHについてご存知の方もぜひ1度目を通しておいていただきたいと思います。
きっと新しい発見・ヒントがえられると思います。

(2002.01)


   目 次

序章 生涯にわたる総合的な援助システムへ 
                               〜 佐々木 正美 〜

ノースカロライナから世界へ
今、北欧が熱心に学んでいる
TEACCHプログラムの哲学と原理
学校教育が重要 〜 10余年の歳月を大切に
コミュニケーション 〜 意味を共有しあい意志を交換しあう
構造化 〜 われわれの文化を伝えるために
管理・運営の機構 〜 スタッフと親の会と行政で
TEACCH20周年 〜 わが国との交流10周年の年に
生き生き実践できる喜び

第1章 家族との協力と援助 ― 親を 「共同治療者」として
                              〜 青山 均 ・ 武市 ひさ子 〜

1.ペアレント・トレーニング
2.親の療育への参加がもたらすもの
3.ペアレントスタイルを大切にしながら
4.親たちも自らのライフスタイルを豊かに
5.親の方からのプレゼンテーション
6.レスパイト・ケア
7.最高の擁護者としての親
8.将来のケア・プランを立てる

* 親と専門家の協力関係は      〜 大野 真裕 〜

第2章 診断と評価 ― TEACCHプログラムの第一ステップ
                            〜 内山 登紀夫 〜

1.自閉症とは
2.TEACCHの目的
3.評価と診断
4.診断と評価の実際
5.共同治療者モデル
6.ジェネラリストモデル
7..子どもの指導の実際

* 生き生きと魅力的なスタッフ    〜 大場 規子 〜

第3章 幼児期の治療教育 ― 自立を育てる「構造化」の工夫
                           〜 吉野 邦夫 ・ 入江 ゆみ子 〜

1.教室の物理的構造化
2.グループ・スケジュールと個別スケジュール
3.1日の活動
4.評価と課題の設定
5.個別のワークシステム
6.遊び・社会性・コミュニケーション

* 現場でどう取り入れられるか   〜 豊留 かく子 〜

第4章 学校教育 ― 一人ひとりに合わせた個別教育プログラム
                          〜 幸田 栄 ・ 秋場 典子 〜

1.卒業後の生活を見通した教育カリキュラム
2.小学校の様子
3.中学校の様子
4.個別教育プログラム( IEP)
5.教室へのコンサルテーション

* IEPは日本で可能か       〜 石母田 明 〜

第5章 職業プログラム ― サポーティッド・エンプロイメントの発展
                         〜 古屋 照雄 ・ 山下 美晴 〜

1.幼児期から成人期まで一貫した援助を
2.サポーティッド・エンプロイメント
3.ジョブコーチモデル
4.エンクレープモデル
5.モービルクルーモデル
6.シェルタード・ワークショップ
7.生活をエンジョイする「ソーシャルクラブ」

* 日本でのプログラムの創造を 〜 小池 章弘 〜

第6章 居住プログラム ― グループホームとデイプログラム
                        〜 大場 公孝 ・ 金沢 太為ニ ・ 村川 哲郎 〜

1.子どものグループホーム
2.青年・成人のグループホーム
3.デイサービスプログラム
4.シェルタード・ワークショップ
5.機能レベルの高い人たちのグループホーム

* 豊かなライフスタイルへ  〜 渡貫 一芳 〜

第7章 CLLC ― 居住と就労の包括的なプログラム
                      〜 藤岡 宏 ・ 井深 允子 〜

1.自主性を支え育てる 「構造化」
2.居住空間での「構造化」の工夫
3.日常生活を援助するためのアイディア
4.農作業を援助するためのアイデア

* 学んだことを活かしたい 〜 寺尾 孝士 〜

* ノースカロライナ州 自閉症協会の総会に参加して
                 〜 瀧澤 韶一 〜

付録 自閉症の手引 Autism Primer ― 20の質問と答え


    

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