森林生産システム研究会の概要

幹 事:京都大学森林利用研究室

参加者:95名 素材生産業者、機械メーカー、行政・試験研究機関など

◎平成11年1月22日

13:00 勝山町「木材ふれあい会館」に集合

14:00 現地研修(真庭郡落合町大字上山地内)

現地研修

・現地の概要  官行造林地 ヒノキ 約60年生 約9ha

・(有)植田産業の作業システムの見学

チェーンソー(伐倒)

スーパーロングフロント仕様のグラップル(集材)

プロセッサ(造材)

グラッブル(積み込み)

クローラキャリア(運搬)

 

 このようなシステムで1日45〜50m3の生産性を確保している。(一日一人あたり10m3程度は確保している)

 今回はスーパーロングフロント仕様のフェラーで伐倒と集材を一度に行う予定であったが、フェラーの故障によりグラップルとして使用した。その他にスィングヤーダを架設して上記の作業と比較できるように現場設定されていた。

15:00 質疑応答

・スーパーロングフロント仕様のフェラーはいくらか。

約2500万円である。

・スーパーロングフロント仕様のフェラーは安定感が悪そうだが。 乗っていてそれほど恐くない。20tクラスなのでそれなりの安定感はある。作業道を開設する場合は、道の谷側を多少高くしておく必要がある。なぜなら重量で沈下する場合があるから。

・フェラーの重量は

 350〜400Kg程度である。

・スィングヤーダの搬器は自作か。

自作である。非常にコンパクトで軽量である。スナッチブロックを二つ組合わせている。

・プロセッサの処理したヒノキの枝を束ねているのは何に使用するのか。

1束あたり2000円で福井県の業者へ出荷している。
一本の長さが80cm程度で1束あたり25本程度である。枯節の穴埋めに使用するそうである。直径が最低2.5cmなければならない。一日25束程度、生産している
 ある程度の林齢の木をプロセッサで処理したものでないと、規格と採算性が取れない。山の斜面を歩いて取っていたのでは採算にあわない。

・この山の落札価格は

約2,200万円である

 

16:10 現地研修終了

 

◎平成11年1月23日

シンポジウム

場所:勝山町町民センター大会議室

1来賓挨拶

・浅野勝山町長
県内や近県から多くの方々がこの勝山町にお集まりくださり誠にありがとうございます。
林業・木材産業の厳しいおりに、このようなシステム研究会が開かれることはたいへん有意義であります。先日も大阪の大橋慶三郎先生をお迎えして作業道の開設方法について勉強会を開いたところであります。どうか活発な意見交換を行って、実りある会となりますようお祈りしています。

・河本真庭地区木材組合副理事長
 木材産業は、世界の市場の中で競争している。さらに、国産材の供給率は20%を割ろうとしている。たいへん厳しい時代である。世界の中で外国との競争するためには、よい品質で安い単価で木材を供給できる体力が日本の林業や木材産業には必要である。そのためには木材をいかに安く搬出するかが大事であります。


2 基調講演

・中島県木連会長

国産材の供給体制は、林業先進地の外国に比べて整備が遅れている。

なぜ外国に負けてしまったのか。その一つは価格である。今の価格を半値にしないと外国との競争に勝てない。そのためには、皆様のような木材を搬出に関わっている方々の努力によってコスト削減を押し進めなければならない。木材産業では、さらなるコストダウンを目指してやっているのに、肝心の素材生産業者の方々がコストダウンをしなければ森林所有者へのお金を払えないことになる。これでは、林業・木材産業は廃れてしまう。

また、何をするにしても補助金を当てにする人がいるが、これは大きな間違いである。私も貰っていないわけではないが、基本は自分の責任でやることである。もう一つは、品質の問題である。日本の木は太陽の当たる方向が偏っているため、必ずあてができてしまう。これは大きな欠点である。この欠点を克服しなければ日本の木材の未来はない。一軒の家に確かに木材は使用されているが、同時にプラスチック等の非木質系の素材も使用されている。このプラスチックは偏りがなく品質も安定している。国産材が良いと頭からいっても、品質が悪ければ住宅メーカーは使ってくれない。特にプレカットには、 平均した品質のものが要求される。

現在のところ、スギでは葉枯らし乾燥が品質を高める唯一の方法である。

出来上りの色合いも違い、軽くなるために運賃が安くなる。将来、ヒノキもこの考え方は取り入れられるかもしれない。

とにかく、今回お集まりのみなさんはこれからの林業を担う先兵であり、リーダーである。活発な議論をお願いします。

 

3 岡山県の林業と機械化の概要 (林業試験場  旦  良則)

内容省略

 

4 シンポジウム

パネラーとして植田産業の社長 植田卓二

司会進行役は元京都大学教授の神崎先生

パネラーの植田卓二氏に対して質問をしていく形式で進められた。

 

・職員の雇用体制は?

月給制あるいは日々雇用の者がいる。社会保険制度はきちんと整備してい      る。残業はほとんどない

・他社とのオペレーターの交流はやっているのか。育成方法は?

やっていない。我が社では、重機を扱ったことのない新人を採用する場合まず土場などでグラップルの積み込み作業を練習させる。ある程度の技量になると現場に連れていく。そうしないと作業システムの中で1行程だけの能率が悪いとたいへん生産効率が落ちてしまう。

・道の開設にどのような考え方をもっていますか?

入札地がほとんどであるので、山案内の時におおよその検討を行う。haあたり50m程度の密度で開設を行っている。排水は、横断溝によって処理する。幅員は最低3.0mがスーパーロングフロント仕様のフェラーを使用するには必要である。

また、搬出作業後に道が大きく崩れたという災害は起こっていない。道はその後の造林や保育に使用できるので、99%の森林所有者が原形復旧を望んでいない。保安林の関係で少し行った程度である。

・現場(事業量)の確保の方法は?

入札の場合もあれば、森林所有者から土地ごと買ってほしいとの依頼が結      構ある。仕事量には困っていない。ただ、土地ごと買うのは、あまり乗り気ではない。最近、林業公社も造林をやらないので少々困っているが、そのまま放置して天然林に返すのも一つの手ではないか考えている。場所にもよるが。

・さらなるシステムの効率化を考えいるか。

クローラキャリアの無人化を考えている。現在の技術では可能ではないか 横にダンプするものでボタン一つで設定された道を進んでいく物がほしいこれで一人の人員を削減でき、コストダウンが図れる。

(これに対する参加者からの関連意見)

小型の物は既に開発されている。しかし、山の中の道は凹凸や傾斜があるため、開発には時間がかかるかもしれない。しかし、技術的には可能である。

無人化も良いが、運転資格を持ったパートの女性を雇用したらどうであろうか。クローラキャリアの運転は、それほど難しいものではない。

さらに効率を上げるために、20tクラス用のプロセッサの導入を考えて      いる。ヒノキの造材はスギと比較して1.5倍程度の時間がかかる。もう少し力のある機械がほしい。

・間伐の搬出に関する理想的なシステムは?

向井林業のような0.25クラスのマシンでは、とても余裕がない。やはり余裕のある機械が必要である。システムとしては列状伐採、タワーヤーダで集材、プロセッサで造材する方法である。ここでも、0.45クラスのベースマシンが必要である。しかし、プロセッサは本来、皆伐用の機械であり、間伐に使用する場合では効率が悪い。

(これに対する参加者からの関連意見)

 本年度、岡山県林業試験場では列状間伐の試験地を設けて、調査を行っている。リョウシンのタワーヤーダで集材し、向井林業を頼んで造材を行った。面積は約0.5haである。対象区として隣接地に定性間伐で林内作業車による搬出を行った。列状間伐では、機械性能の差もあるが、植田産業さんの60%程度の生産効率と思われる。デー        タの整理が出来ていないので詳細は報告できない。(林業試験場)

林業用の機械はシンプルで大型のものがよい。とかく日本人は、小型で高性能・多機能化を求める。やはり故障の少ないものがよい。中島会長)

・メンテナンスについては?

ほとんどの修理は自前でやっている。油圧ホースなども常時完備している。 また、フレームの亀裂修理や加工については、プラズマ溶接機を持っているので、ほとんどのことをやってしまう。オペレーターで仕事をやっていく上でメンテナンスの知識や技術は必要不可欠である。メーカーやディラーに修理を依頼していたのでは、最悪4日もシステムが稼働しなくなる可能性がある。これはおおきな損害である。

・植田さんからの質問

各メーカーさんで、新製品などの開発情報はありませんか。?

特になし

 奈良県の林業地で吉野などは、岡山県と全く違った山の仕立て方を行って      いるが、今回の台風被害についてどのように考えておられますか。

(回答者 奈良県林業試験場)

 吉野はhaあたり6000本程度の高密度仕立てで、細く通直に仕立て       ために間伐をあまり行わず、強度の枝打ちを行っている。今回の台風被害が起こっても、森林所有者の考え方は変わっていない。なぜなら、これが歴史ある吉野林業の考え方であるからである。行政指導を行っても考え方を変えることは出来ないと思われる。

(これに対する参加者からの関連意見)

 確かに枝打ちも大切であるが、今回の台風による倒木被害は、木の根がしっかりと発達していないからである。枝をあまりにも落としてしまうと同化作用による根の発達が阻害されてしまう。先人の人が、力枝だけは枝打ちするなという考え方をしていたのは理屈に合っていた。(中島会長)

今回の資料の内容で、市場までの搬出経費が1m3あたり4000円程度というのは、条件が良い場合であり、いつもこれぐらいの経費だと思っては困ります。現場条件によって変わってきます。

・植田寿幸氏(植田産業のオペレータ)の意見

タワーヤーダシステムの場合は、プロセッサに乗っていてかなり作業に余裕があったが、スーパーロングフロント仕様のフェラーが導入されてからは、ほとんど余裕がない。そのため、視神経が弱ったり難聴といった問題が出るかもしれない。フル稼働させるとこのような弊害が発生した。

12:10 シンポジウム終了

以上、質疑応答形式でシンポジウムは行われ、意見や質問が途絶えることがなく、活発なものとなった。