北大西洋航路客船  ノルマンディー
   
        
 フレンチ ・ライン (フランス)  
   
  就航 1935 年
           
83,423 総トン
(竣工時 79,280 総トン)

          
全長 313.3 m
            
全幅 35.9 m
           
エンジン 
 蒸気タービン電気
(蒸気タービンで発
電して,電気モータ
ーでスクリューを駆
動)
 160,000 馬力
           
推進器 
 スクリュー4軸
             
速力 29 ノット
           
乗客定員 1972名
 1等    848
 ツーリスト  670
 3等    454
     

 

 ノルマンディー号の建造のためにフランス政府が支給した助成金は,1,500万ポンドという驚くべき額であった。このノルマンディー号は計画のスタート時点から,大西洋で最も大きく,最も速く,最も豪華な船とすることを目指していた。実際この船は,その3つすべてを満たしたものとなった。そして,そのタービン電気(ターボ・エレクトリック)推進装置は強力で特異な存在だった。


 この船の総トン数は約 80,000トンに達し,当時世界最大となった。設計速力29ノットは,これも最速であった。そして1935年の処女横断航海,西航 29.94ノット,東航 30.35ノットの平均速力で,ブルーリボンを手にしたのである。3年間に渡るキュナード社のクイーン・メリー号との競争の中で,1937年にさらに高い速力,西航 30.58ノット,東航 31.2ノットを達成したが,最終的には「クイーン」に抜き返された。


 このような速力を得るためには巨大な出力が不可欠で,それができるのはタービンだけだった。タービン発電装置は,実質的に小型の発電所のようなものであり,そこで作り出された電気を使って,大型モーターがスクリューを駆動するのである。これらのモーターは高さ 6.4m,幅 5.8m,長さ 7.9mの大きさをしており,出力の面でもサイズの面でも強く印象に残るしろものである。電気推進は目新しいものではなかったが,最大 160,000軸馬力という出力のものは,それまで試みられたことがなかった。


 主蒸気を供給したのはペノエ3胴水管ボイラー29基で,その煙路はファーターラント号のときのように右舷と左舷に分かれていた。船内中央に大きな公室を確保するためである。


 キュナード社のクイーン・メリー号が大西洋の記録を手にしたとき,フレンチ・ラインでは速力をさらに上げるよう取り組むことを決断した。そして1936年から37年にかけての冬場に,スクリュー交換に加え,主発電設備とモーターを完全にオーバーホールし,タービンのノズルを追加して開け,蒸気流量を増やす措置も取られた。1937年に達成された東航および西航の新記録は,この改造とスクリュー交換によるものと考えられる。しかし,もうほとんど限界に達していた。それに対して,キュナード社のライバル船はまだいくらか余力を見せた。


 戦争が邪魔に入らなかったなら,フランス人の自尊心はノルマンディー号の機関からさらに力を引き出そうとしたかもしれないが,今となっては推測してみるばかりである。

    

(「豪華客船スピード競争の物語」 ノルマンディー号の部分より抜粋)

 

        

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