(2000. 9. 8 毎日新聞ニュース速報より)

<特報・自民参院議員>「業界丸抱え」鮮明に 大口献金

 自民党の主要支持団体の推薦を受け、参院比例代表で当選した同党参院議員が政治活動費の多くを支持団体からの大口献金に頼っている実態が、8日付で公表された1999年分の政治資金収支報告書で分かった。支持団体からの献金の一部は、議員が所属する派閥に流れ、議員が業界と派閥をつなぐ「トンネル」役を担って議員側が後援会の運営を業界団体に事実上一任し、金の動きを全く把握していないケースもあった。参院比例代表選をめぐっては、辞任した自民党の久世公尭・前金融再生委員長が名簿登載順位を上げるため、大量に集めた党員・党友について支持団体から党費の肩代わりを受けたと説明しているが、選挙以外の政治活動も「業界丸抱え」である構図が浮かび上がった。

 自民党の主な支持政治団体は日本医師連盟(日本医師会)▽日本歯科医師政治連盟(日本歯科医師会)▽日本薬剤師連盟(日本薬剤師会)▽建友会(全国建築業協会など)▽日本看護連盟(日本看護協会)▽MOAインターナショナル(世界救世教)など。自民党総裁選があった99年は、団体支援を受ける比例代表選出の参院議員を通じ、派閥への献金も活発に行われていた。

 95年参院選で3度目の当選を果たした自民党の石井道子元環境庁長官の場合、支援団体の日本薬剤師連盟から「石井道子中央後援会」に対し、4回に分けて計5000万円の大口献金があった。同後援会は昨年8月10日に3回目の献金を受け、その2日後、石井氏が所属する加藤派会長、加藤紘一元幹事長の資金管理団体「社会計画研究会」に1000万円を献金。併せて、総裁選の行われた9月には、加藤派の政治団体「新財政研究会」に1000万円を献金していた。

 日本薬剤師連盟は石井氏の資金管理団体である「薬事制度問題研究会」にも、計222万円を献金しており、石井氏の総収入の「業界団体依存度」は7割を超える。これに対し、石井事務所では「(大口献金のあった)中央後援会は日本薬剤師連盟が管理する団体で、金の流れには全くタッチしていない」と説明、議員の名前をつけた後援会でありながら、実質的に業界団体が勝手に運営している実態が浮き彫りになった。

 また、日本看護連盟は南野知恵子、清水嘉与子両参院議員の資金管理団体に毎月献金を行い、各900万円を計上。連盟の各都道府県支部からも献金が相次ぎ、資金管理団体の業界団体依存度は南野氏が9割、清水氏も5割強となった。南野氏は連盟から献金のあった3月16日、所属する森派(会長、森喜朗幹事長=当時)の政策集団「清和政策研究会」に220万円を回し、清水氏も3月19日、同研究会に250万円を寄付している。

 このほか、MOAインターナショナルの政治団体である「明社会21」は、阿南一成(現橋本派)、成瀬森重(森派)の両参院議員に対し、それぞれ2000万円と1500万円を献金。全国建設業協会などの支援を受ける岩井国臣参院議員(現橋本派)が都道府県の建設政治連盟などから325万円、脇雅史参院議員(同)も285万円の献金を受けた。脇氏は橋本派の政治団体「平成研究会」に80万円を献金している。

 【中村 篤志】


to home      マスコミのページへ戻る