(2000. 9. 8 朝日新聞ニュース速報より)

日医と健保連、医療保険改革めぐり献金攻勢 政治資金

 日本医師会と健康保険組合連合会。昨年、医療保険制度改革をめぐって、開業医らの立場と医療費を支払う立場とで激しく対立した両者の政治団体が、政治家への献金も競い合うように伸ばしたことが、8日付で公表された政治資金収支報告書でわかった。
 日本医師会の政治団体「日本医師連盟」は、資金量では国内最大の政治団体の一つだ。1999年に自治省届け出の政治団体にした献金の総額は、7億4115万円。前年より3400万円増えた。政党本体への献金は計3700万円減らした半面、国会議員や自民党の派閥への献金を7100万円増やした。
 献金を受けた議員は70人余り。議員によって金額が異なり、最高は父親がかつて日本医師会長だった武見敬三参院議員で、2500万円だった。厚相経験者を重視する傾向も目立ち、3年間分をさかのぼると、津島雄二厚相、小泉純一郎元厚相(いずれも自民党)、渡部恒三衆院副議長(無所属)らへの献金額が増えている。99年には献金先として、小渕恵三前首相のブレーンとして知られた大原一三元農水相や自民党小渕派会長だった綿貫民輔衆院議長ら約10人が加わった。
 日医連は「医療制度などをめぐって議員と協議するなかで、育ってほしいと思う人に献金している。そういう人が若い人を中心に増えたため、総額も増えた」と説明している。
 一方、健保連の政治団体「健康保険政治連盟」は、献金総額では7950万円と、日医連の10分の1だが、配った先は約60人とほぼ肩を並べる。自民党の加藤紘一元幹事長、古賀誠国会対策委員長、民主党の菅直人政調会長らの資金管理団体や政党支部に、300万円ずつを献金した。
 総額は98年と比べると100万円増にとどまったが、97年との比較では2400万円増えた。主に政治家のパーティーの会費などに充てた渉外費も、99年は前年比300万円増の1200万円になっている。
 健保政治連盟は「医師会の横暴を抑えるために、健保連の主張に理解のある議員に献金している。昨年は、医療保険改革をぜひ実現しようと陳情を繰り返したので、結果的に献金も増えた」と話している。
 また、両方の団体から献金を受けた議員は29人にのぼった。
 昨年は医療保険改革論議が盛り上がった年で、医師会は衆院小選挙区ごとに選挙担当責任者を置いて自民党への働きかけを強め、健保連は改革が進まないことに抗議して老人医療費の拠出金を延納したりした。結局、医師会側と健保連などの意見が対立したままで、改革は2002年に先送りされた。

 ◇日本医師連盟と健保政治連盟が献金した主な政治家と献金額

日本医師連盟の献金額。(万円) 健保政治連盟の献金額(万円)
武見敬三(自) 2500(元日本医師会長の三男)
中山太郎(自) 2100(医師)
渡部恒三(無) 2000(衆院副議長、元厚相) 200
森 喜朗(自) 1500(首相)
羽田 孜(民) 1300(元首相)
武藤嘉文(自) 1025(党税調会長)
加藤紘一(自) 1000(元党幹事長) 300
小泉純一郎(自) 1000(元厚相) 200
河野洋平(自) 1000(外相)
村上正邦(自) 1000(党参院議員会長)
自見庄三郎(自) 1000(医師)
衛藤晟一(自)  800(前党政調副会長) 200

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