A 審判判断

 親(父母)の命名権は原則として自由に行使できる。

 しかし例外として、親権(命名権)の濫用に当たるような場合や、社会通念上明らかに名として不適当と見られるとき、一般の常識から著しく逸脱しているとき、または、名のもつ本来の機能を著しく損なうような場合には、戸籍事務管掌者(当該市町村長)においてその審査権を発動し、名前の受理を拒否することが許される。

 本件「悪魔」という名は、いじめの対象となり、ひいては社会的不適応を引き起こす可能性も十分ありえ、本件出生子の立場から見れば、命名権の濫用に当たる。

 Y市長としては、本件のような場合、命名を不適当として受理を拒絶できた事案であったと判示。

 その上で、本件はY市長がXの出生届を受理していることが明らかであり、このような場合、Y市長としては、届出人に戸籍訂正の申請を促し、追完の催告をすべく、届出人がこれに応じないときは、戸籍にそのまま記載するしかない。よって、以上のような方法を取らずに、本件名の戸籍を抹消したY市長の処分は違法、無効であるとして、「悪魔」の名の記載を復活させるのが相当として、Xの申立てを認容した。

 

○「悪魔」ちゃん命名事件のその後

2月1日、父親は家裁審判を取り下げ、改名に同意。

審判取り下げの理由

・最終判決が出るまで子供が戸籍上無名のままであること

・家族の精神的疲労も限界に近づいていること

・これだけの騒動になり自分たちの言い分が分かってもらえたこと

その後、「阿久魔」という名で市側に打診するも、「悪魔を連想させる」と再考を促される。

2月30日 家族、友人が「あく」と呼んでいることから「亜駆」と命名、市はこれを受理した。


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