U−3 「悪魔ちゃん」命名事件について


@ 事件概略 / A 審判判断 と 事件のその後B 命名権の本質

ここでの参考文献

『判例時報』 1486号

『姓名と日本人 「悪魔ちゃん」の問いかけ』 板垣英憲 著 DHC


@ 事件概略

 父親X平成5年8月11日、Y市役所に「悪魔」と命名した妻Aとの間の長男の出生届を提出したところ、戸籍課係員は、名前について特に疑義を示したり、再考を促すことなくそのまま受け付け受理した。

 翌日、戸籍課職員との間で「悪魔」の名の受理につき疑問が出され、戸籍課より上級官庁に当たるZ法務局H支部へ受理の認否につき問い合わせたところ、同支部は一旦は問題なしと解答したものの、翌13日、Z法務局H支部は事項欄文末の市長印を押捺しないようにとの指示を出し、Y市は受理手続の完成を留保。

 正式な処理伺いに対し、9月28日、Z法務局はY市長に、この名を「悪魔」としたまま処理することは妥当ではなく、届出人に新たに出生子の名を追完させ、追完に応じるまでの間、名未定の出生届として取り扱うようにと指示した。

 そこで、Y市長は@本件長男の戸籍につき、記載されている出生事項に「名未定」の文字を加入し、また「名欄」に記載された「悪魔」の文字については誤記を原因として朱線を施し抹消の各手続を施すとともに、A10月4日、Xに対し、出生子(長男)の名の追完を求める催告書を送付した

 Xは、「悪魔」という名は、戸籍法50条に規定する制限内の文字からなっており、子に対して明らかに良い影響を与え、一度用いたら二度と忘れることのない最高の概念を含むものである。

・誰からも興味を持たれ、普通以上に多くの人々と接してもらえることが子の利益になる

・物おじしない野心家になって欲しい

 したがって、本件受理手続を完成させて、本件名の戸籍面への記載がされてしかるべきであり、Y市長がこれを拒否したのは違法である。また、一度受理された戸籍に記載された名前を法定手続を経ずに抹消することは許されないなどと主張し、

 @「悪魔」の名を長男の戸籍に記載し、A長男の身分事項欄の「名未定」との記載を抹消し、もって、長男の名の受理手続を完成する事を求めた。

 これに対し、Y市長は、本件名は命名権を濫用しており受理できないものであるところ、出生届は受理済みであるが、本件名については違法として未受理状態にしているものであり、Xの申立てには理由がなく、失当として却下されるべきであるとしてこれを争った。


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