A 名前の変更

戸籍法107条の2

「正当な事由によって名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得てその旨を届け出ねばならない。」

○[正当な事由]=氏の変更に比べて緩やかな制限

・氏の変更ほど、及ぼす影響が大きくない

○家庭裁判所の許可を要求する理由

・ むやみな変更は選挙、徴税などの行政事務上また取引上に支障を及ぼす

・ 戸籍制度の円滑な運用を害する

・ 税金や債務を免れる、前科や犯罪を隠すなど悪用される恐れ

→名の変更を認めない社会利益と、認めることによる個人と社会の利益を公平に比較して決定

→審判に当たっては、必要度と債務免れ前科・犯罪隠し目的でないか注意

○名前につける文字の制限(子の命名においての理論だが改名の場合も同じ)

当用漢字表に掲げる漢字、人名漢字別表に掲げる漢字及び片かな又は平がなに限定

←社会的不経済、社会生活の能率の防止公共の福祉

○変更の許可例と不可例

1.襲名…多くは営業上の目的

2.珍奇(女性 カメ、トラ、デコ、サン子、フケグサ、シャウドル、五三十(イミト)、オワリ、谷ツルなど)

(男性 田舎、牛吉、|(ススム)、△□一(ミヨイチ)、と志ゆき、一尺六寸、無名男、岡茂樹 (…名前だけで氏名のように見える) 、権八郎 (…現代風でない) など)

X 熊蔵 ←動物的であるが珍奇ではない

X トラ ←名から女性的感覚が生じ難いが、トラの名が非民主的であるとは到底解し難い。また、命名の際かよわい女性のために強い名を取り、干支にちなんでつけることは多い事でありトラの名が女性の名として必ずしも不適当であると認められない。トラそのものの名称に蔑視、罵言の意味を含むとは認め難く、侮辱を感じるべきでない。

3.難解、難読

(多聞行、舜何人、子(シゲル)、淑卿(トシアキ)、山氏(タカシ)、勝男子(カツヒコ)など)

(カ子、万澄女子(マスミ)、金光(カネコ)、希有子など)

4.神官、僧侶になる逆に還俗する

5.同姓同名(養母と、夫の母と、同居の兄の妻と、勤務先に、近隣に、詠みが似ているなど)

X 同級生にいる  X 近隣にいるが年齢差がある

X 実兄にいるが別戸籍かつ別居している

X 似ているが同じではない(岸本光太郎と岸本繁太郎、姉弟で久雄と操)

6.混同…男女性別の混同と外国人との混同

(男で貞江、早苗、静、孝子女で隆、清麿、利三、武茂、ツトム、陸雄、誠など)

(フランク、ジャン、王元、セイホーレ、玉石、宝連、バアメラジンなど)

X 男で克巳、博美、一栄女で正美

7.通称…個人的、社会的に見て利益があると考えられる場合に許容

←長年使用の事実だけでは戸籍制度を乱す恐れがある

=不純理由・目的による乱用(前科隠し・債務免れ等 姓名判断、タロット占いなど)

8.出生の誤…出生届に誤りがあることが明らかで、それが不都合な場合(誤字、発音間違い)

(降三→隆三、与手→与平、たこ→たくよ、しづ子→しつ子など)

9.その他・名づけの折には人名漢字表がなかったが、今日ではできたから(哲矢→哲也)

・アメリカ人の養子になったから(善信→ジェームス・リチャード)

・有名人と同名(サラリーマンなのに高橋是清、明仁(皇太子と同名)、田中角栄 …ロッキード事件後、からかわれたから)


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