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第7章 楽器屋の主人との会食
とにかくシタール4台と笛に太鼓を手に入れて喜んでいた私を、主人は夕食に誘ってくれました。彼は、日本の友人が紹介してくれた大事な客である私を接待してくれようとしたのです。そんなこともすぐには理解できない私は、再び不安になりました。「晩飯おごる金なんて持ってねえぞ。それでなくても楽器買いすぎたと思ってんのに。」内心そう思っていました。
一方で、彼らと一緒に食卓につける。彼らの生活をかいま間見ることができる。興味ありました。私のたびでは、観光地を巡った記憶はほとんどありません。インドの人たちを見るのがもっとも興味深く、面白いと感じていたのですから。こんな機会はめったにないので、承知するのに時間はかかりません。しかもレストランで食事とのこと。私はそれまで、まともなレストランで食事したことはありませんでした。常にチャイ屋。階級が下の労働者と安旅行者が行く店です。当然、タンドリーチキンなど見たこともありませんでした。
彼と一緒にバイクで出掛けました。途中彼の友人を一人誘いました。バイクなのに3人?申し訳ありません。交通機関の記憶があやふやで。でも、ここはインド。3人乗りバイクに違和感はありません。レストランに着きました。駐車場があり、前庭のような部分はテラスのような感じだったと思います。彼は生垣の方へ歩いていきます。「ここのテラスで食うのか?暑そうだな。」などと思っているうちに、彼と友人は垣根越しに隣の人と何かしゃべっています。まもなくその向こうからビールが出てきました。禁酒のレストランであるため、さきに飲んでから入るのだそうです。禁酒が定められている州なのかもしれません。「わざわざそんなことしなくても、垣根を回って隣の酒屋で立ち飲みすればいいじゃないか。現に垣根の向こう側に人がいるのだし。」そんなこと言えません。彼らなりのステータスの表現でもあるのですから。当然私も一本ゴチになりました。インドで、はじめてのビールです。ちなみに私、酒はすきです。後ろ髪を引かれながら、レストランの中へ入りました。
中へ入ると彼の友人たち8人位は居たでしょうか。紹介されても言葉はまるっきり通じません。もちろん英語で話し掛けてくれているのですが、私のつたない英語では理解できないのです。彼らは今で言うヤングエグゼクティブなのでしょう。今までの旅で出会った人たちとは、明らかに違う人種でした。もちろん上流ではなくて中くらいの人たちなのですが。
テーブルにずらりと並んだ料理も、高級で旨かったと思います。話も弾んでいます。英会話の出来ない私は、辛いものを食べて「ホット」を連発し、ただ笑ってすごした数時間でした。ここで、少しだけ感じた違和感はなんだったのでしょう。会話が出来ないという訳ばかりではないように思います。私の旅のスタイルと、彼らとの立場に逆転現象が生じていたのではないでしょうか。見た目は、単なる安旅行者。それでも私は彼の上客です。楽器屋の主人を除く人たちから見れば、私はどんな存在だったのでしょう。とても気になります。
私がこれほどまでに英会話のできなかった訳をお話します。なんてことはない理由です。中学から、理科系ではあっても大学の教養課程まで、英語は8年間学びました。その間外国人と英会話をしたことは、ただの一度もなかったのですから。なんと偏った英語教育だったのでしょうか。
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