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第10章 安らぎのカトマンズ
シャツとズボンを着替えても色粉で真っ赤な顔をした私は、みんなに笑顔で声をかけられます。「ホーリー?」「イエス、ホーリー!」飛行機の中でも、カトマンズへ着いてからも。
しかし、さすがにネパールは寒い。雨も降っている。ここでは初めてバスタブつきの部屋を選びました。もちろん赤鬼から日本人に戻るために。部屋に着くとさっそく湯船に湯を貯めつつシャワーを浴びます。「んっ。湯温が下がってきたかな?」HOTのハンドルをいっぱいに回します。湯は容赦なく水に変わっていきます。頭はシャンプーで泡だらけ。しばらくはスチームの暖房機の前で震えていた私でした。
カトマンズは、なにかしら安らぎます。インドから来たせいでしょうか。インドで疲れたらネパールに入るという話もたびたび聞きました。ヒンドゥーと仏教の違い?人が少ないから?土産物屋の客引きでさえ強引さに欠けています。私も、「みやげものでも買ってみるか。」などと思いました。といっても旅の記念に買う程度で、たいしたものを買うわけではありません。にぎやかな通りを歩いているとあちこちから声がかかります。一人の呼び込みについていくと店の2階に通されました。ヤクの敷物でいっぱいです。腰をおろして、チャイを飲みながらの会話は、ホーリーの話、日本の話、旅の行程などを交えながらも、値段交渉に終始します。都合のよいことに、片言英語ではセールストークは理解できません。敷物など買ってもしょうがないと思っている私は、圧倒的に有利な立場で交渉できます。腰を上げ、帰るそぶりを見せる私に、「ちょっと待て!」この金額ではどうだ。この繰り返しです。チャイをご馳走になり、交渉を充分に楽しんだ私は、小さな玄関マットを1/2にまでねぎって店を後にしました。(本当はもっといけるはず)
カトマンズは小さな町です。観光地も立派な寺院の他にはたいしたものはありません。小さな町では、同じような旅をしている者たちが自然と集まります。ヨーロッパや北米、もちろん日本等のバックパッカーが、2、3軒の食堂でたむろしています。雨が多いため余計にたむろするのです。それが嵩じてかどうか、日本食レストランをやっている元バックパッカーなどもこの町にはいます。落ち着く反面、どうも馴染めません。何かしら負い目を持ってしまいます。やはり本物のバックパッカー達と比べると、私の旅は観光の域を脱してはいないのですから。
本物とは何?背中に荷物をしょえばバックパッカーには違いありません。フレームパックを背中に担ぐだけでバックパッカーになれるのでしょうか。じゃ、ショルダーバッグだと?私の考えをひとつ。「期間を定めているかどうか。」
何かに納得するまで旅を続けようとする人達がいます。いつ納得できるかなどわかりません。目的地に目的があるとは限らないのですから。それには一生かかるかもしれません。所持金にはいつか限界がきます。必然的に金を倹約し、旅の技術も向上していきます。
一方、私の旅には期間がありました。決まっていた職を投げ出せば、期間をなくすこともできましたが、私には出来ませんでした。所持金を期間で割ればもっとよいホテルに宿泊もできるはずです。私がそうしなかったのは、「旅は最低か最高のどちらかが一番面白い。」このことをひたすら信じていました。面白さを求める旅で何かに納得することはありません。続ける限り面白いことはあるでしょうから。旅を終えるのは期間が終わるか、金がなくなるか。
さて、上記のどちらがバックパッカーなのでしょう。正解はどちらもバックパッカーだと思います。20年後の今わかりました。旅は人それぞれってことが。
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