南向きでなくても・・・

太陽熱パネル 東向き実験

東京ガス、東京都市大と組む

(日経新聞20119512版企業2面)

【記事抜粋】

東京ガスは東京都市大学と組み、太陽熱給湯システムの集熱パネルを東に向けた実証実験を9月半ばに始める。集熱パネルは真南に向けるのが一般的。東に向けることで集熱効率が落ちるが、給湯の「予熱」への活用方法を探る。新システムにどの程度の省エネ効果があるかを確かめ、東向き屋根への導入促進に役立てる。

(以下略)

 

【コメント】

東京ガスでは「ソラモ」という商品名で太陽熱を利用したガス温水システムを販売しています。

同社のホームページでは

・太陽光発電よりもエネルギー変換効率が高い

 (太陽光発電約10% vs 太陽熱システム約40%)

・太陽光発電よりも設置費用が安い

という点をアピールしています。

エネルギー変換効率については、NEDO技術開発機構の「よくわかる!技術解説」にも同様の記述があります。

 

また、ソーラーシステム振興協会の調べによれば、太陽熱温水器3平方メートルの年間集熱量は156万キロカロリーと推計されています。

気象庁によれば年間日照時間の全国平均は約1800時間とされているので、太陽熱システム1平方メートルの毎時熱量は、

156万キロカロリー÷3平方メートル÷1800時間=約289キロカロリー

と試算されます。

 

ちなみに1キロワット/時は約860キロカロリーなので、実用ベース(太陽熱4平方メートル vs 太陽光3キロワット/時)で試算すると、

太陽熱=289キロカロリー×4平方メートル=約1150キロカロリー

太陽光=860キロカロリー×3キロワット=約2580キロカロリー

ということになります。

 

一方、設置費用については3キロワット/時タイプの太陽光発電システムが平均180万円程度であるのに対し、集熱ユニット4平方メートルのソラモは100万円弱となっています。

つまり、熱量は太陽光が2倍多いが、設置費用も2倍高いということで、どちらか一方だけが圧倒的に有利とは言い切れないことに注目しておきましょう。

 

さて、「熱」も「光」も真昼である南向きが最も効率的であることに変わりません。

裏を返せば「東向きや西向きには売れない」ということになります。

今回の記事にあるように「東向き」での実験によって正味の「歩留まり」がわかれば、ベスト(南向き)ではなくてもベター(東向き)なケースに対するセールスの手法やツールが生まれることになります。

朝より昼の方が気温が高い、というのは常識ですから、南向きのソーラーシステムより東向きの方が効率が悪い、というのも常識です。

でも、効率が「悪い=数値が低い」ということと効率が「ない=ゼロ」との間には大きな差があります。

「最大限ではないが一定水準の効果がある」ということをデータで示すことができれば、「ある程度効果があります」というトークだけよりも説得力が高まります。

もちろん今回の実験結果によって「トータルではやはりメリットが小さくて意義がない」という結論につながることも考えられますが、データは実験を実行することによって初めて得られるものでもあります。

 

【今日のポイント】

過去の経験や業界の常識だけで「ムリ」「できない」「やってもムダ」と決めつけず、「ホントにやってもムダ?」と疑って、実際にやってみることも大切な経験につながる!

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