トウモロコシが騰勢

シカゴ先物価格6月末比2割高

生産回復 厳しく

(日経新聞20119612版商品面)

【記事抜粋】

トウモロコシの国際価格が騰勢を強めている。シカゴ市場の先物(中心限月の12月物)は2日終値が1ブッシェル7.6ドルと、6月末と比べ2割高い。米国の産地が7月に熱波に見舞われた影響で、生産量が見通しを下回るとの見方から供給不安が強まっているためだ。在庫は16年ぶりの低水準にある。今後も受給逼迫が続き、高値は長期化する可能性が高い。

(以下略)

 

【コメント】

行政書士やファイナンシャルプランナーの仕事を通じて、セミナーの依頼というものがあります。

その中で、少なからずテーマとしてリクエストされるのが

「悪質商法や詐欺について」

というものです。

そのときに、どうしても触れざるを得ない部分として

「商品先物取引」

というものがあります。

そもそも「先物取引」とは、我々消費者がスーパーのショーケースや八百屋さんの棚で実際に商品を見定めて、その日の価格分をその場で支払う

「現物取引」

とは違って、天候によって将来の作柄が不安定であるために収穫期の価格が乱高下する農作物の価格の変動をある程度緩和させようという

「保険機能」

を持たせた人間の知恵といえるシステムです。

ラッキーが重なれば4割大儲けできるけれど、すべてが裏目に出れば4割大損するという現実の相場に備えて、マックスでも2割程度の儲けに制限されるけれど、損失も2割程度までで許してもらえるという、

「平準化」

こそが本来の「先物システム」です。

 

劇的なハイリスク・ハイリターンは心臓に悪い

・・・いかにも日本的ではないですか?

 

そのとおり!

世界最初の商品先物システムは日本で誕生しました。

具体的には江戸時代の大坂・堂島にあった「米会所(こめかいしょ)」こそ世界初の先物市場でした。

それから時代は下り、現在の世界最大の商品先物取引所は、アメリカのシカゴ・マーカンタイル市場となっています。

 

さて、今回の記事は

「トウモロコシの先物価格が高くなっている」

というものです。

トウモロコシを含めた「粗粒穀物」の

1ブッシェル

だいたい25キログラム程度

です。

ほんの2年ほど前は、1ブッシェル3.8ドルとほぼ半値でした。

2年で2倍の高値となった要因として挙げられるのが

 

(1)原油高

(2)中国はじめ新興国の成長

 

です。

 

(1)の要因と密接に関連づけられるのが

「バイオエタノール」

です。

 

原油が高い

→ガソリンが高い

→デンプンからも燃やせるアルコールが作れる

→高い原油から作ったガソリン+安いトウモロコシから作ったエタノール(エチルアルコール)

=100%ガソリンより割安な自動車燃料

 

というのが基本的なバイオエタノールの方程式です。

 

一方、

(2)の要因は結局のところ

「経済的に豊かになれば肉の消費が増える」

ということに尽きます。

 

人間がトウモロコシをそのまま食するとしても、その量にはおのずと限界があります。

食用トウモロコシで圧倒的な比率を占めるのが

「飼料」

つまり牛、豚、鶏のエサです。

 

この中で、食肉100グラム生産に必要な飼料の重量は、成体の個体重量に比例します。

分かりやすく表現すれば、家畜を育てるのに必要なエサの量は、家畜の体重1キログラム当たりで比べると

 

ニワトリ=少なくて済む

ブタ=それなりに必要

ウシ=かなりたくさん必要

 

ということになります。

そして、経済的に豊かな水準となった中国の富裕層は、

「魚ならマグロのトロ、肉ならビーフ」

という嗜好になっています。

しかも、富裕層は自家用車も乗り回します。

さらに、現在のハリウッド映画のセレブリティーのような

「エコ=ステイタス」

という概念に乏しく、

「ビッグ、ハイパワーこそステイタス」

とばかり、フェラーリや(ハイブリッドではない)ベンツを好みます。

要するに、60年前のアメリカ、40年前の日本という「最も輝かしい消費社会」を謳歌しているのが現在の中国であり、新興国のトップ層と考えていいでしょう。

いわゆる「BRICS」では「大量消費こそ善」というモノサシになっていると認識すれば、世界経済の最も「川上」に位置する原油や穀物といった「国際商品」の相場がジリジリと右肩上がりであることも自然な流れと考えられます。

 

「バカだねえ! いつか地獄を見るよ」

と、先に経験した強みから傍観することもできますが、これからたどるはずの道をある程度の正確性で見通せる日本だからこそ、少しでもビジネスチャンスに活用してみませんか?

 

【今日のポイント】

新興国=以前は生産国

が経済成長によってドンドン消費国になっていく。

ということは、高品質の一次産品(ブランド農産物)を効率的に生産するシステムも、日本が「農業輸出国」となるヒントになるかもしれない!

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