ベネッセ

大学教育支援を拡大

高校の内容 復習教材を開発

(日経新聞20119813版企業1面)

【記事抜粋】

ベネッセホールディングスは大学生向けの教育支援サービスを拡大する。大学に入学する前に高校レベルの学習内容を復習できる教材を開発したほか、大学の教員に対しては授業の補助教材を売り込む。大学全入時代や「ゆとり教育」の影響で基礎学力が不足したとみられる大学生が目立つことから、一定の需要があると判断した。

(以下略)

 

【コメント】

実は私も大学の非常勤講師を拝命しています。

 

今年で7年以上勤めていますが、一部に

「学力難あり」

という指摘には賛同せざるを得ません。

 

「経済トピックス」

というカリキュラムで

日経新聞の読み方

を基本にしながら、さまざまな周辺知識や最新情報を織り込んで提供しています。当然大学の授業ですから、定期試験が課せられます。

私からの課題は毎年2つで、

 

1.経済のしくみを説明せよ

2.今後の景気見通し

 

についてデータに基づき意見を述べよというものです。

課題そのものは難解そうですが、私の講義に欠席せず、話をきちんと聞いていれば100点満点が取れる課題です。

その定期試験で提出される答案から受ける印象は、確かに「学力不足」を断ぜざるを得ない状態です。

 

まず、記述式答案=自由解答の形式としているため、圧倒的に記述字数が少ないことが気になります。

90分で2つ課題ですから、私の想定では1題につき最低でも500字は記述しないと答案として成立しないはずなのですが、100字程度で行き詰まった答案も少なくありません。

さらに、誤字・脱字が目立つものや、逆に誤字を恐れて(私ならば小学校6年生までで記述できた漢字さえも)平仮名で記述するものが目立っています。

このような記事を目にすると、

「人間は常に進化する」

という言に疑いの目を向けてしまうのもむべなるかな、という印象を持ってしまいます。

つまり、

「ひょっとして人間はバカになっているのでは?」

という疑問を持ってしまい、その対句として

「退化しているのは日本人だけで、グローバル化の中では外国に置いてけぼりを受けるのではないか」

という不安をかき立てられてしまう心理状況に置かれるのではないでしょうか。

 

残念ながら、日本人がそれほど賢くなっていないことは否定できません。

 

さりとて、外国人も日本人を引き離すほど賢くなっているとも思えないことは、経済に関する過去のニュース情報から受け止められます。

2000年初頭のITバブルから特に学習することもなく2008年のリーマンショックを迎えたG7諸国が賢明とは思えませんし、後進国からなりふり構わぬ「キャッチアップ」で経済力を拡大させることにどれほどの「バッシング」が浴びせられるかということを日本の

「いつか来た道」

から何も学習しない中国はじめBRICSも特に賢明とは感じられません。

つまり、国籍、人種、年齢、性別を問わず、

「人間って、それほどたいしたことないんだよ」

ということの象徴として、今回の記事が示すように、大学生には高校授業の復習プログラムが必要ということになるのでしょう。

 

 現在はスマートフォンはじめ情報技術や先端技術が次から次へと人々に提供されています。

 日々便利になっている、

ローコストが実現している、

付加価値が高まっている、

昨日できなかったことが今日からできる。

さて、これらは意外にサプライサイド=供給者・開発者の論理=自己満足に陥っているのではないでしょうか?

mixi、twitter、facebookなど誰もが見聞きするSNS(交流サイトサービス)ですが、リアルタイムにコメントや返事を返そうとすれば、必ず本来の「仕事」や「学習」をするために確保すべき時間さえも犠牲にせざるを得ない状況に追い込まれるでしょう。

むしろ、多くの人々にとって必要な知識や情報とは、最先端の情報通信技術などではなく、むしろ「周回遅れ」にも思われるような「基本的なこと」かもしれません。

たとえば最近のトピックスとして、企業の退職金債務を軽減することを目的とすることもあって、確定拠出年金を導入する会社が増えているというニュースが流れました。

ここから派生する情報としては、最新の国際金融情報や運用商品情報がキャッチーでしょう。

でも、確定拠出年金の加入者であるサラリーマンは、そもそもアグレッシブな金融資産運用などと無縁の生活を送ってきました。

確定拠出年金制度導入後に最も人気を集める選択肢が「定期預金」「定額型個人年金保険」であることが大きな証拠といえます。

この場合、最新情報は現実離れした「ファンタジー」に過ぎません。

ユーザー=加入者が求める最重要情報とは、意外にも伝統的な

「リスクとは」「リターンとは」「複利効果」「だまされないために」

という平凡なテーマなのです。

そして、確定拠出年金を導入するレベルの企業であれば、毎年継続的に外部からの人材採用を行っているはずです。

つまり、確定拠出年金への切り替えをした初年度こそ印象的に導入教育が実施されますが、その後採用された「目立たない新入り」に対しては導入教育が実施されないものです。

これこそ現在日本が抱える確定拠出年金制度に関する大きな課題です。

このような例をはじめ、現在の日本国内で求められるニーズとは必ずしもすべてが「最先端」であるとは限らず、「昔からある技術や情報」を提供するだけでも、十分に意義のある環境があるかもしれません。

 

【今日のポイント】

最先端ではなくても、たくさんの人が必要としている情報や技術、ノウハウや商品がまだまだ存在する。我が社の中にある「普通の人が普通に必要としているモノ」があるかどうかを探してみよう!

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