七五三 少しぜいたく
高額祝い着・写真館に人気
(日経新聞2011年9月13日12版消費面)
【記事抜粋】
11月の七五三を前に祝い着など関連商戦が早くもピークを迎えている。例年より少しぜいたくな祝い着を買ったり、写真館で写真撮影をしたりと出費を惜しまない家庭が目立つ。東日本大震災以降、家族の行事を大切にする風潮が強まったといわれるが、少子化のなかで祖父母も積極的に費用を援助することの多い七五三は、この傾向が一段と強まっているようだ。
(以下略)
【コメント】
震災前からの消費傾向に大きな影響を与えていたのは「少子化」です。
1世帯当たりで育てる子の数が少なくなれば、親、特に母親が育児に振り向ける時間も少なくなります。
育児の時間が少なくなれば、何か別のことをするのに使える余剰時間が生まれます。
そして多くの家庭で余剰時間が「仕事」に振り向けられ、いわゆる「共働き家庭」が増加します。
共働きによって可処分所得が増える一方、子の数が少ないことによって子育て関連の支出額がそれほど増えません。
その結果、家庭の金融資産はそれほど減らない、あるいは余裕が生まれることもあります。
さらに、子育ても終わり、住宅ローンも完済し、保険の保障額もそれほど大きくしなくてもよくなった、つまり「人生の3大支出」から解放された祖父母世代の存在があります。
親は子に対して「親権」という名の責任を負っています。
しかし、祖父母は孫に対して親ほどの責任は負っていません。
わが身の負担にならない程度にかわいがっていても、何の問題もないのです。
誤解を恐れず表現すれば、「趣味=孫の相手をすること」程度の接し方が許されます。
とはいえ、親にとっても祖父母の存在は「経済的バックアップ」として頼れる存在です。
前述の3大支出(教育費、住居費、保険料)で可処分所得に余裕がない分、おじいちゃんやおばあちゃんの援助は非常に助けとなります。
つまり子どもから見ればお金を払ってくれる財布を持っているのは両親(2)+それぞれの両親(2×2)=6人となるわけで、これがいわゆる「シックスポケット」ということになります。
伝統的な2世代で世帯消費を調査すれば、各世帯当たりの消費額は減少傾向にあると見られます。
しかし、世帯を3世代とくくりなおしてみると、可処分所得総額はむしろ増加します。
その一方、消費者は支出に対する選別の目をますます厳しくしています。
デフレ当初は「とにかく価格が安いもの」が支持を得ていました。
その後徐々に安くても悪いもの、不用のものは市場から排除され、低価格高品質の商品やサービスが消費者から指示されるためのカギ(キーファクター)となりました。
しかし、人間も我慢や節制に限度があります。
どこかで意識的に反動的なアクションを起こしたくなります。
たとえば、特別な記念や自分へのごほうびとして非常に高額な商品を衝動的に購入するなどの経験はありませんか?
これも視点を変えれば「消費のメリハリ」と評価することができます。
メリハリの突出した支出につながりやすい要因は、それぞれの消費者にとって意味のある「ハレの日」です。
たとえば誕生日や結婚記念日など特定の日に集中するわけではないが、それぞれの人に毎年訪れる記念日であったり、記事にあるような七五三や成人式など、特定の日や特定の年齢層に集中する記念日などが、ハレの日の典型的な例です。
このようなハレの日は財布のヒモも緩みやすく、というよりも、緩めやすい大義名分を立てやすいものです。
これは事業者にとって大きなビジネスチャンスといえます。
そして、これらのライフイベントに関連づけたビジネスは、各顧客のパーソナルデータ(生年月日や結婚記念日など)とカレンダーの組み合わせによって、販売促進の全体スケジュールを上手に設定することができます。
また、それぞれの人にとって「大切な日」へのアプローチは、それを受け取った人にとっても「自分(あるいは自分の家族)の大切な日を覚えていてくれる」と好印象を持ってもらえるチャンスにもつながります。
【今日のポイント】
それぞれの人に存在する「大切な日」のデータを大切にしよう。
その日を記念するために「誰に」「いつ」「何を」提案するかプランを立ててみよう。