市民ファンドで商店街を復旧
岩手・陸前高田
中小企業・個人が出資
20店の仮設店舗設置
(日経新聞2011年9月15日14版経済2面)
【記事抜粋】
東日本大震災で津波被害を受けた岩手県陸前高田市の中小5社が株式会社を設立し、11月にも市内で20点の仮設商店街を開く。
開設に必要な約2億円の資金は、1口5万〜10万円の市民ファンドを設けて全国から募る。
被災地の課題解決に向け、異業種企業と市民が協力しながら収益事業に取り組むのは珍しい。
他の被災地でも復興の手法として広がりそうだ。
(以下略)
【コメント】
記事によれば、一般社団法人「ソーシャルビジネス・ネットワーク」のコーディネートで、新会社「なつかしい未来創造株式会社」を設立して活動するとのことです。
ここで注目したのが、「ソーシャルビジネス」と「市民ファンド」という視点です。
一般的に社会的に意義のある公益性の高い事業がソーシャルビジネスと理解されています。
今回の東日本大震災は、まさに1000年に1度経験するかどうかという日本人の考え方さえも大きく変えるほどの災害です。
すべてのインフラが津波によって流し去られ、文字どおり「ゼロからのスタート」が求められます。
地域だけでは言うまでもなく、県を超え、日本全体が協力しなければ再建はおぼつかない、それほどの規模で「日本を作り直す」覚悟が必要とされています。
ここで人々が改めて気づいた、「他人を思いやる心」や「お互いに支え合う姿勢」を少しでも行動につなげていく道筋を描く企画が「ソーシャルビジネス」と考えられます。
また、その企画、構想を具体的な行動に移すために必要な資金を手当てする手法のひとつとして、今回は市民ファンドが活用されます。
不特定多数の人々が、小口の出資によって、それぞれが無理のない程度に参画できるのがファンドの特長です。
株式会社という形態で出資をすれば、その見返りとして「配当」という現金が還元されます。
一方、匿名組合や事業組合など、組織の形態を柔軟に選択できるファンドであれば、必ずしも現金による還元にこだわる必要はありません。
今回のような地域商店街の復興であれば、商店街共通の商品券とか、テナント各店がおすすめする商品群などといった「現物配当」も設計できます。
むしろ、このような地域の特色や地域とのつながりの強い還元ツールの方が、出資者と実業者とのつながりをさらに深める効果が高いかもしれません。
そして、この「陸前高田モデル」は、被災地に限らず、全国に点在する過疎地域や中心市街地商店街の活性化にも応用することが想定できます。
ファンドの形式を応用すれば、たとえば市街地に就職した若い世代が、田舎への恩返しという気持ちを込めて出資に参加することもできるでしょう。
また、資金のバックアップがあれば、商店街に出店しようとUターンしてくる人々や、チャレンジしてみようとIターンする人々など、地域の活性化も期待できます。
【今日のポイント】
地域を限定せずに人々をつなげるソーシャルビジネスの視点と、地域の資源を活用するコミュニティービジネスの視点とを融合させれば、一見活気を失った地域にも再発掘できるビジネスチャンスが見つかるはず!